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○○新世紀の音楽会

投稿日:2016年01月31日 09:30

「○○新世紀の音楽会」。いったいなにが新世紀なのかと思えば、答えは「ジャズ」。今の時代のジャズとして、スガダイローさんと黒田卓也さんのおふたりのアーティストが登場しました。
 でもジャズって、どこまでがジャズなんでしょうね。スウィングとかモダン・ジャズとか、ジャズの歴史を振り返るときに出てくる言葉には漠然としたイメージがわいてきますが、じゃあ、今のジャズはどこからどこまでがジャズなのかと問われると、よくわかりません。きっと定義などはだれにもできないのでしょう。歴史の発展とともにボーダーレス化するというのは、20世紀のクラシック音楽から現代音楽への変遷とどこか似ています。
 黒田卓也さんは日本人として初めてブルーノート・レーベルと契約したという話がありましたが、日本人が本場で認められるといった一種のグローバル化も、クラシック音楽界と共通しているように感じました。
 スガダイローさんの「時計遊戯」は、ジャンルの枠などすっかり飛び越えたユニークな曲でしたよね。「時計遊戯」という曲名を英語に直すと「ゲームウォッチ」。たぶん、若い方はご存じないかと思いますが、ゲームウォッチとは1980年に発売されて一世を風靡した任天堂の携帯型液晶ゲーム機のこと。小さなモノクロ液晶画面を搭載した、ひとつのハードでひとつのゲームしか遊べないというタイプのゲームで、当時の子どもたちは(いや、大人も?)夢中になって遊びました。指先の反射神経と集中力の限界に挑むタイプのアクションゲームでしたので、スタート直後は簡単でも、ゲームが進むにつれて難度が増し、しまいには「キーーーッ!」となってゲーム機を放り出したくなるほど難しくなります。
 昔のゲームですから、出てくる音もふたつだけ。まさかそんなシンプルな効果音が「ジャズ新世紀」につながろうとは。でもあのゲームのクセになるような感じが、楽曲からも伝わってきたのではないでしょうか。中毒性があって、ついもう一度聴いてみたくなります。

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五嶋龍の音楽会

投稿日:2016年01月24日 09:30

今回は「五嶋龍の音楽会」。ヴァイオリニスト五嶋龍さんを改めて知っていただくために、「現代音楽」「同世代」「ゲーム音楽」「練習」「ユンディ・リ」「アップデート」というキーワードに即して、6曲がとりあげられました。これまでに番組を通じて龍さんが出会った音楽家たちや楽曲について、龍さんがどんなふうに考えているのか、とてもよく伝わってきたのではないかと思います。
久石譲さんの作曲と指揮、龍さんのヴァイオリンによる番組オープニング・テーマ Untitled Musicを、久しぶりにフルバージョンで聴くことができましたが、やっぱりいい曲ですよね。フレッシュで、勢いがあって、心が浮き立つような音楽です。龍さんのイメージにぴったりではないでしょうか。
龍さんと同世代の音楽家との共演を聴けるのも、この番組ならではの楽しみ。龍さんは「普段の生活では同世代の音楽家たちと接しあう機会はまったくない」のだとか。若くして国際的に活躍する音楽家にとっては、共演者はずっと年上ということがほとんど。日本の同世代を代表する気鋭の演奏家たちとの共演は、大きな刺激を与えてくれるにちがいありません。
ハーバード大学卒、空手三段、幼少時から脚光を浴びるヴァイオリニスト。そんな龍さんのプロフィールからすると、実はゲーム好きだというのが意外ですよね。ゲームを語るときの龍さんの熱さは本物です。「ハマるゲームは製作者が心を込めて作ったゲーム。そういったゲームはすばらしい作品であり、アートでもある」というのが龍さんの持論です。
本日の最後に登場したのはイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番。龍さんが司会となってこの番組で最初に演奏した楽曲で、選曲にも照明効果にも龍さんのアイディアが反映されています。古典の引用からはじまりながら、独自の音楽世界を作り出すこのイザイの作品ほど、龍さんの「音楽に対する視野・視点をアップデートする」という姿勢を体現した曲もないでしょう。ただ新奇さを追い求めるのではなく、見慣れた光景が違ったものに見えてくるような視点の転換を迫る。これはまさに過去の大作曲家が行ってきたことでもあり、その積み重ねがクラシック音楽の歴史になっているともいえます。その意味では、龍さんのおっしゃることは音楽家の本道そのものだな、と感じました。

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二十歳で創った音楽会

投稿日:2016年01月17日 09:30

 自分が二十歳のころになにをしていたか……と思い返してみれば、その未熟さに赤面したくなるという方が大半なのではないでしょうか。法律上で「成人になった」ことと、社会のなかで一人前の大人として認められることの間には大きな隔たりがあります。

 しかし、音楽家の世界では若くして頭角を現し、舞台で注目を浴びるような才能の持ち主が大勢います。今回、出演してくださったピアニストの小林愛実さん、ヴァイオリニストの周防亮介さんはともに二十歳にして、すでに華々しいキャリアを築きつつあります。まだ二十歳ですから現在も音楽大学や音楽院で研鑽を積んでいるのですが、それと並行してプロフェッショナルとしての演奏活動も続けています。

 「二十歳にしてすでに一流」という点では、過去の大作曲家たちは現代の演奏家をさらに凌いでいるかもしれません。今回取りあげたショパンのピアノ協奏曲第1番、ヴィエニャフスキの「スケルツォ・タランテッラ」、モーツァルトのセレナード第7番「ハフナー」の3曲は、いずれも作曲者が二十歳頃に書いた作品。これらは決して若書きの習作などではありません。すでにその作曲家の特徴や個性がはっきりと作品に刻印されており、しかも作曲者の死後もずっと演奏され続けている名曲です。この若さで将来の「古典」を書きあげてしまうのですから、本当にすごいですよね。

 そして若年期の名曲には、その時期だからこそ表現できる魅力があると思います。モーツァルトの「ハフナー」セレナードから伝わってくる溌溂とした生命力や屈託のない明るさは、限りない可能性を秘めた若者ならではのものではないでしょうか。ヴィエニャフスキの技巧的な「スケルツォ・タランテッラ」からは、当時すでに名ヴァイオリニストとして脚光を浴びていた作曲者の誇らしげな表情が伝わってくるようです。

 ショパンのピアノ協奏曲第1番は、作曲者が故郷ポーランドを離れて異国へと旅立つ告別演奏会で初演された作品です。祖国への思いを込めた旅立ちの曲。これも二十歳ならではの名曲です。「若いから未熟」という考え方は、才能ある音楽家に対しては当てはまらないのでしょうね。

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クラシック新世紀の音楽会

投稿日:2016年01月10日 09:30

 今回のゲストはヴァイオリニストの葉加瀬太郎さん。舞台に登場した葉加瀬さんと龍さんがヒシッと抱擁する姿を見て驚いた方も多いのでは? なんと、おふたりは旧知の間柄。龍さんがまだ幼かった頃からのお知り合いなんだそうです。ジャンルの枠にとらわれない活動を展開する葉加瀬さんと、世界の名門オーケストラと共演するなどクラシックの王道を歩む五嶋龍さん。活動のフィールドを異にするおふたりですが、こんなに親しい関係だったんですね。葉加瀬さんを「先輩!」と呼ぶ龍さんの表情が生き生きとしていたのが印象的でした。

 葉加瀬さんは自作のメドレーで「弾き振り」を披露してくれました。楽器を演奏しながら、指揮も同時に行うのが「弾き振り」。しかも自作を演奏していましたので、ここでの葉加瀬さんは作曲家であり、演奏家であり、指揮者であるという一人三役をこなしていたことになります。

 実はクラシック音楽の歴史において、作曲家が演奏家や指揮者を兼ねることはまったく珍しいことではありませんでした。むしろかつてはそれが普通の音楽家のあり方だったのです。ところが時代が進むにつれて分業化が進み、指揮は専門の指揮者が担い、演奏家は演奏に専念して作曲をしなくなり、作曲家も作曲のみを行いステージに立たない人が増えてきました。それだけ各々が高度化してきたことはたしかなのでしょうが、自分の曲を自分で演奏するのが音楽の原点ではないかという思いはどこかに残ります。

 その意味では、現在の葉加瀬さんの音楽活動は、18世紀にモーツァルトが行なっていたことと変わりありません。

 最後の「情熱大陸」では、葉加瀬さんと龍さんの共演が実現しました。思い切りはじける龍さんと、温かい眼差しを注ぐ葉加瀬さん。迫力がありましたよね。東京オペラシティコンサートホールの客席がわきあがりました。

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