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吹奏楽部を知る音楽会Ⅱ

投稿日:2016年04月24日 09:30

今週は「吹奏楽部を知る音楽会Ⅱ」。前回、吹奏楽部を取り上げたときは、吹奏楽コンクールがテーマになっていましたが、今回は吹奏楽部のもう一つの晴れ舞台、学園祭での人気曲を特集しました。こちらはコンクールとは違って、お客さんに楽しんでもらうためのステージ。吹奏楽経験者ならずとも、学校生活のなかでこれらの名曲に出会ったという方は多いのではないでしょうか。音楽への入り口としての吹奏楽の役割は決して侮れません。
 ゲストにお迎えした大阪府立淀川工科高等学校吹奏楽部顧問の丸谷明夫先生は、吹奏楽の世界ではだれもが知る名物先生。「カーペンターズ・フォーエヴァー」でシエナ・ウインド・オーケストラを指揮してくださいました。満面の笑みでの指揮姿から、音楽への愛情が伝わってきます。丸谷流の人を楽しませる極意は「自分で楽しんだとき、お客さんにも楽しさは伝わる」。これは至言ではないでしょうか。吹奏楽に限らず、通用する極意のように思います。
 それにしても驚いたのは、丸谷先生が子供時代の龍さんに会っていたこと。25年ぶりの再会だとか。龍さんのお姉さんで世界的ヴァイオリニスト、五嶋みどりさんにも学校に来てもらったりとお付き合いがあったそうです。この番組、出演する音楽家が五嶋家と旧知の間柄というパターンはこれまでにも何度かありましたが、まさか、吹奏楽の丸谷先生ともご縁があったとは! 五嶋家、恐るべし……。
 年代別人気曲メドレーでは、世代によってそれぞれにぐっと来る曲があったと思います。「宇宙戦艦ヤマト」、懐かしかったですねえ。アニメの主題歌を超えた名曲といいましょうか、吹奏楽アレンジが曲想にぴったりマッチしています。
 なお、「宝島」「カーペンターズ・フォーエヴァー」の編曲者であり、作曲家の真島俊夫さんが、4月21日に亡くなりました。67歳でした。吹奏楽界における多大な功績を偲び、謹んで哀悼の意を表します。

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天才モーツァルトの音楽会

投稿日:2016年04月17日 09:30

モーツァルトほど「天才」という言葉がふさわしい作曲家はいないのではないでしょうか。一見すると、とてもシンプルな音楽なのに、ほかの作曲家にはない独特の魅力が宿っています。革新的な音楽語法を発明したとか、新しいジャンルを開拓したとか、そういった新規性でモーツァルトのすごさを伝えようとしても、なかなかうまくいきません。特別なことをやっているようには見えないのに、出来上がったものは天衣無縫の音楽になっている。これぞ天才の証でしょう。
 今回はモーツァルトの作品のなかでも、短調で書かれている名曲に焦点を当てて、その天才性がどんなところにあるのか、指揮者の沼尻竜典さんにピアノ・ソナタ第8番イ短調をピアノで弾きながら、解説していただきました。「なるほど!」と思うようなポイントがいくつもありましたよね。
 モーツァルトについて、龍さんが「喜びと悲しみの境目がない」、反田恭平さんが「陽と陰を併せ持った天才」とおっしゃっていたのも印象的でした。モーツァルトはしばしば短調と長調の境目を自在に行き来します。光のなかに影があり、影のなかに光がある。そんな微妙な陰影が、情感の豊かさを生み出しているのでしょう。
 ピアノ協奏曲第20番ニ短調では、反田恭平さんが独奏を務めてくれました。この時代に書かれたピアノ協奏曲には「カデンツァ」という、独奏者がソロで自由な即興演奏を披露する聴かせどころが用意されています。ここは演奏者にお任せする部分ですので、モーツァルト本人はこの曲のカデンツァを書き残していません。幸いなことにベートーヴェンがこの曲のためのカデンツァを残していますので、多くのピアニストはベートーヴェン作のカデンツァを使用します。
 しかし、この日、反田さんが演奏したのは聴き慣れないカデンツァでした。第2楽章の主題が引用されるという一風変わったカデンツァは、イタリアの往年の大ピアニスト、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリが古い録音で弾いていた演奏に触発されたもの。この曲を聴き慣れた人にも、新鮮な感動があったのではないでしょうか。

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ヴェンゲーロフの音楽会

投稿日:2016年04月10日 09:30

この番組には世界的に活躍する演奏家が次々と登場していますが、真に世界最高峰の存在という意味でマキシム・ヴェンゲーロフは別格だと思います。
 ラヴェルの「ツィガーヌ」の演奏、すばらしかったですよね。バックにオーケストラがいるにもかかわらず、冒頭の約4分間はヴァイオリンのみの独奏で演奏するという特殊な作品でしたが、ヴェンゲーロフの最初の一音が鳴り響いた瞬間に、東京オペラシティ・コンサートホールの空気が変わったように感じました。これほど強靭で、なおかつ潤いのあるサウンドは、なかなか聴けるものではありません。技巧が技巧そのものをひけらかすためのものではなく、自在な感情表現と一体になっているのも名手ならでは。演奏が終わると客席から「ブラボー!」の声がかかっていました。
 若き日のヴェンゲーロフが五嶋家を訪れていたというエピソードにはびっくりしました。龍さんのお姉さん、五嶋みどりさんも世界的なヴァイオリニストとして知られています。それにしても当時2歳の龍さんが、ヴェンゲーロフの来訪を覚えているというのがすごいですよね。よほど強い印象が残っていたのでしょう。
 最後のショスタコーヴィチの「祝典序曲」は、ヴェンゲーロフの指揮でお聴きいただきました。近年のヴェンゲーロフは指揮活動も活発に行なっています。ヴァイオリニスト出身の指揮者は珍しくありませんが、ここまでヴァイオリンを極めた人が指揮をするとなれば、やはり注目せずにはいられません。ヴァイオリンを持って弾き振りもできますし、純粋に指揮だけをすることもできる。音楽家としての幅が広がっています。
 すでに風格が漂っていますが、実はまだ41歳のヴェンゲーロフ。これからどんな可能性が開けているのか、想像もつきません。

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吹奏楽によるファイナルファンタジーの音楽会

投稿日:2016年04月03日 09:30

大ヒットRPGシリーズ「ファイナルファンタジー」の第1作が発売されたのは1987年のこと。当時は任天堂のファミコン用のゲームでした。以来、最新作のファイナルファンタジーXIVに至るまで、数々の名曲がシリーズを彩ってきました。
 今回の「吹奏楽によるファイナルファンタジーの音楽会」では、「ファイナルファンタジー」の作曲家植松伸夫さんによる、特に思い入れのあるベスト5が選ばれました。実際にゲームをプレイされた方は、名場面を思い出して懐かしい気分に浸れたのではないかと思います。また、「ファイナルファンタジー」になじみが薄い方であっても、植松さんが作り出す楽想の多彩さを感じとれたのではないでしょうか。
 特におもしろいなと思ったのは、第4位に選ばれた「魔導士ケフカ」。植松さんは「悪役の音楽を書くうえで、登場人物の背景まで考える」とおっしゃっていました。キャラクター造形を音楽で伝えるというのは、まるでオペラの作曲家みたいですよね。ヴェルディやワーグナーもきっと登場人物の背景まで考えながら、曲作りをしていたのではないでしょうか。
 「ファイナルファンタジー」は長年にわたるシリーズですので、思い入れのある名曲も人それぞれかと思います。私がいちばんぐっと来たのは、番組の冒頭に演奏された「プレリュード」。この分散和音の連続を聴くと、なんともいえないワクワクするような、切ないような気分になります。ファミコンの電源を入れて最初にセーブデータを選択する場面で、この曲をなんどもくりかえし耳にしたのを懐かしく思い出しました。ゲームをはじめる前の期待感を思い起こさせる曲である一方で、全滅した後でセーブデータを選ぶときのやるせない気分をよみがえらせる曲でもあります。
 そんなこともあって、ワクワク感と切なさが一緒になって思い出されてしまうのでしょう。音の記憶というのは侮れません。

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