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くるみ割り人形の音楽会

投稿日:2016年12月25日 09:30

「くるみ割り人形」の「花のワルツ」って、本当にすばらしい名曲ですよね。これほど高揚感にあふれたワルツはほかにありません。
 チャイコフスキーはこのバレエのために、惜しみなく名曲を注ぎこみました。一作のなかに信じられないほどの密度で名曲が詰め込まれているという点で、バレエの「くるみ割り人形」はオペラの「カルメン」と双璧をなしているのではないでしょうか。
 この「くるみ割り人形」、曲が有名な割には、意外とストーリーは知られていないような気がします。りりしい王子様に姿を変えたくるみ割り人形が、少女クララをお菓子の国へと招きます。お菓子の精たちに歓待されるクララ。で、この話はどう終わるのでしょうか?
 結末はあいまいです。バレエにはセリフがありませんので、振付によっていろいろな解釈が可能です。クララが夢から覚めるという「夢オチ」がひとつの基本形となっているでしょうか。素敵な王子様もお菓子の国もみんな少女の夢だった。夢から覚めたら、ベッドのそばにいたのは元通りのくるみ割り人形……。
 「くるみ割り人形」の物語の元となっているのはE.T.A.ホフマンのメルヘン「くるみ割り人形とねずみの王様」です。原作の結末は単なる「夢オチ」では終わりません。主人公(バレエではクララですが、原作ではマリーといいます)が目を覚まして、お菓子の国から現実に戻るのですが、そこからまだ話が続くのです。ドロッセルマイヤーさんが甥の青年を連れてきます。この青年は主人公とふたりきりになると、自分が助けてもらったくるみ割り人形だと告げて、少女を花嫁にして旅立っていくのです。
 この原作でもやはり結末はあいまいです。少女が本当に結婚したとも解せますし、夢の続きを見ていたとも読めます。いずれにせよ解釈のひとつとして、「少女が育ってやがて親元を離れていく」という含意を読み取ることは可能でしょう。なかなか味わい深い物語だと思います。

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バッハの時代の楽器で聴く音楽会

投稿日:2016年12月18日 09:30

今週は「バッハの時代の楽器で聴く音楽会」。バッハが生きていた頃の楽器と奏法を用いた演奏はいかがでしたか。バッハの作品は本当はこんな響きで演奏されていたんですね。
 こういった作曲当時の演奏スタイルを現代によみがえらせようというアプローチは、決して特殊なものでも珍しいものでもありません。1980年代から90年代頃にかけてぐっと注目度が高まり、さまざまな演奏団体が結成されたり、活発なレコーディングが行なわれるようになりました。
 そんな古楽の演奏団体で日本を代表するのがバッハ・コレギウム・ジャパン。鈴木雅明さん(本日出演した鈴木優人さんのお父さんです)によって設立され、スウェーデンのレーベルから何十枚ものCDをリリースして多くの賞を受賞するなど、国際的に高い評価を獲得しています。海外公演も盛んに行っています。日本の演奏団体がバッハの演奏でヨーロッパで評判を呼ぶなんて、本当にすごいことですよね。
 楽器の違いについてさまざまな説明がありましたが、現代の楽器といちばん違うのはチェンバロでしょうか。よく「ピアノの前身」と説明されるのですが、その音色はピアノとは似ても似つきません。なにしろ発音原理からして違います。弦をハンマーで叩いて発音するピアノに対し、チェンバロは弦をはじく撥弦鍵盤楽器。「ゴルトベルク変奏曲」や「インヴェンションとシンフォニア」「イタリア協奏曲」等々、バッハの名曲は現在ピアノで広く演奏されていますが、モダンピアノのサウンドはバッハが抱いていた音のイメージとはずいぶん違っていることになります。
 バロック時代に盛んに用いられたチェンバロは、18世紀末にピアノに取って代わられ、いったん歴史の表舞台からは消え去ります。しかしチェンバロにはチェンバロだけが持つ美質があります。20世紀後半からチェンバロの復興が始まり、古楽演奏に欠かせない楽器となりました。その意味では、チェンバロは古くて新しい楽器ともいえるでしょう。

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女性指揮者の音楽会

投稿日:2016年12月11日 09:30

三ツ橋敬子さんの指揮ぶり、すてきでしたよね。オーケストラの指揮者といえば、かつては男性だけの職業のように思われていたかもしれませんが、それも今や過去の話になりつつあります。三ツ橋さんをはじめ、オーケストラの指揮台に女性が立つことはそれほど珍しいことではなくなってきました。世界を見渡してみても、ベルリン・フィルにたびたび客演するエマニュエル・アイムをはじめ、スザンナ・マルッキ、シモーネ・ヤング、アロンドラ・デ・ラ・パーラなど、数多くの女性指揮者が活躍しています。
 歴史的にいえば、クラシック音楽の世界は長らく男性中心の社会でした。たとえば、教科書に載るような大作曲家は男性ばかり。女性作曲家はどこにいるのでしょう?
 その先駆けとしてしばしば名前が挙げられるのがクララ・シューマンです。大作曲家ロベルト・シューマンの奥さんですね。クララは少女時代より、天才ピアニストとしてヨーロッパで名声を獲得していました。ロベルトと交際している時点では、クララのほうがずっと有名人でしたので、父フリードリヒ・ヴィークはふたりの結婚に猛反対しました。「そんなどこの馬の骨ともわからん男に娘はやれん!」ということなんでしょう。激しい法廷闘争まで経た末に、ようやくクララとロベルトは結婚にたどり着きました。
 しかし、そんなクララも作曲家として大成することはできませんでした。作品を書いてはみたものの、まだまだ社会に女性作曲家を受け入れる土壌がなかったといえるでしょうか。
 クララ・シューマンのほかにも、本日ご紹介したリリ・ブーランジェなど、歴史に名を残した女性作曲家は少ないながらも存在します。今後、彼女たちの埋もれた作品に光が当たることもあるかも……。
 もちろん、現代では女性作曲家はまったく珍しくはありません。いまクララ・シューマンが生きていたら、思う存分、作曲の才を発揮していたことでしょう。

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フィギュアスケートの音楽会

投稿日:2016年12月04日 09:30

フィギュアスケートの美しい演技に欠かせないのが音楽。今週は「フィギュアスケートの音楽会」をお届けいたしました。
 本来、フィギュアスケートでは録音された音楽に合わせて選手たちが演技をするわけですが、番組内ではその逆、つまり選手たちの演技に合わせてライブで音楽家たちが曲を演奏しました。これは新鮮ですよね。音楽の持つ力が一段と伝わってきました。
 フィギュアスケートで人気のある作曲家といえば、ピアソラやファリャ、プッチーニ、ラフマニノフ、チャイコフスキー等々。リズミカルで躍動感のある曲や、ロマンティックで抒情的な曲、民族的な色彩の豊かな曲が好まれるようです。演技用に原曲をカットしたり、複数の曲をつなぎ合わせることもしばしば。ときどき、どうしてそこをつなぐんだろう?と不思議に感じることもあったのですが、荒川静香さんのお話を聞いて、競技者の視点から見た滑りやすい編集がありうるのだなと思い至りました。
 トリノ・オリンピックで「トゥーランドット」を用いた荒川静香さんの演技を見ると、あのときの感動がよみがえってきます。プッチーニ作曲のオペラ「トゥーランドット」の名アリア「だれも寝てはならぬ」は、荒川さんの金メダルをきっかけに、あっという間にだれもが知る名曲の仲間入りを果たしました。もともとこの曲は、ワールドカップの前夜祭で三大テノールが歌うなど、スポーツシーンで親しまれていた名曲なのですが、日本で爆発的に広まったのは荒川さんのおかげです。
 余談ですが、この「だれも寝てはならぬ」は、意外な後日譚があります。オリンピックで使用された録音でヴァイオリンを弾いてたのは、ヴァネッサ・メイというシンガポール生まれの女流奏者。ジャンルを超えた幅広い活動で一世を風靡しました。驚いたのは2014年のソチ・オリンピックのこと。なんと、ヴァネッサ・メイはアルペンスキーのタイ代表選手として大会に出場したのです! 世界的に名の知られたヴァイオリニストがオリンピック選手になるなんて、もう二度とないことでしょうね。

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