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世界一要求が多い?エリザベート王妃国際音楽コンクールを知る音楽会

投稿日:2021年08月28日 10:30

今週は今年5月に開催されたエリザベート王妃国際音楽コンクールのピアノ部門で見事、第3位に入賞した務川慧悟さんをお招きしました。以前、同コンクールのヴァイオリン部門第2位に入賞した成田達輝さんとともに、このコンクール独特の仕組みについてお話を伺いました。
 いつ頃からか、エリザベート王妃国際音楽コンクールはショパン国際ピアノ・コンクール、チャイコフスキー国際コンクールとともに「世界三大コンクール」と呼ばれるようになりました。世界中に音楽コンクールはたくさんありますが、有力コンクールで上位入賞を果たすことは音楽家にとって大きな意味があります。プロフィールに有力コンクールの受賞歴があれば、世界のどこに行っても実力者であると認めてもらえます。コンクールの目的は若い才能を発掘し、世に知らしめること。世界中の音楽関係者の注目が集まります。
 コンクールそのものに目に見える格付けがあるわけではありませんが、過去にどれだけすぐれたアーティストを輩出しているかは、そのコンクールのランクの目安となります。エリザベート王妃国際音楽コンクールでは、前身であるウジェーヌ・イザイ・コンクール時代にヴァイオリンのオイストラフ、ピアノのギレリスといったレジェンドたちが1位を獲得していますし、現在の名前になってからもヴァイオリンのコーガン、ピアノのフライシャーらが1位に輝いています。1972年にはソ連のアファナシエフが1位を受賞し、ベルギーで演奏旅行を行った際にそのまま政治亡命をするというドラマもありました。以前、当番組に出演してくれたヴァイオリニストのレーピンも、このコンクールの優勝者です。
 現在から見れば巨匠と思えるこれらのアーティストたちも、コンクールで受賞した時点ではだれもが若者だったのです。務川慧悟さんがこれからどんなアーティストへと育ってゆくのか、楽しみでなりません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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海の協奏曲の音楽会

投稿日:2021年08月21日 10:30

もしもクラシックの大作曲家が人気Jポップをアレンジしたら……? そんな遊び心からスタートした好評企画第6弾、今回は「海の協奏曲の音楽会」をお届けしました。
 それぞれの楽章の最大の聴きどころはカデンツァ。協奏曲にはソリストが単独でソロを弾く見せ場が用意されています。ソリストはヴァイオリンの辻彩奈さん、チェロの伊藤悠貴さん、ピアノの髙木竜馬さん。いずれも国際コンクール優勝の経歴を誇る実力者たちです。第一線で活躍する若く優秀なソリストたちが気持ちのこもったソロを披露してくれるのですから、贅沢というほかありません。
 第1楽章は、もしもロッシーニが松田聖子「青い珊瑚礁」をアレンジしたら? 「ウィリアム・テル」序曲のギャロップに「青い珊瑚礁」が組み合わされる意外性がおもしろかったですよね。途中から「セビリアの理髪師」序曲も加わって、一気にオペラ風の雰囲気に。ロッシーニの得意技、反復的なクレッシェンドも飛び出して、大いに盛り上がりました。
 第2楽章は、もしもドビュッシーがピンク・レディー「渚のシンドバッド」をアレンジしたら? これも意外な組み合わせでしたが、ドビュッシーの代表作といえばなんといっても交響詩「海」。繊細な響きの移ろいのなかに、淡く夢幻的な「渚のシンドバッド」が溶け込んでいました。
 第3楽章は、もしもグリーグが「およげ!たいやきくん」をアレンジしたら? ノルウェーの作曲家グリーグのピアノ協奏曲は、ティンパニのトレモロで始まるドラマティックな冒頭で有名です。まるでフィヨルドに注ぐ滝のよう。そんな雄大な光景で、すいすいと泳いでいるのがたいやきくん。途中からは同じくグリーグの「アニトラの踊り」も加わってエキゾチックなムードを醸し出し、最後は大迫力の「山の魔王の宮殿にて」でフィナーレを迎えました。頭から尻尾まであんこがたっぷり詰まったたいやきのような濃密な音楽でした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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夢をかなえる!ディズニープリンセスの音楽会 後編

投稿日:2021年08月14日 10:30

今週は先週に引き続き、ディズニー作品に登場するプリンセスたちの名曲を、日本の音楽界のプリンセス&プリンスたちによる演奏でお楽しみいただきました。曲ごとに異なる楽器編成でアレンジが施され、原曲からまた新たな魅力が引き出されていたと思います。
 「アナと雪の女王2」の「イントゥ・ジ・アンノウン ~心のままに」は弦楽五重奏による室内楽編成での演奏。一般的な弦楽四重奏にコントラバスが加わった編成です。エレガントで透明感があって、でもパワフルなアレンジは、エルサのキャラクターにぴったりだったのでは。弦楽器のピッツィカート(弦を指ではじく奏法)も、エルサの内面の焦燥感を表すようで効果的でした。
 「アナと雪の女王」の「レット・イット・ゴー 〜ありのままで〜」では高木綾子さんのフルートと長哲也さんのファゴットによるデュオにオーケストラが加わりました。澄み切ったフルートの音色と温かみのあるファゴットの音色の組合せで奏でられる「レット・イット・ゴー」はとてもドラマティック。風の音のようなフルートの特殊奏法もおもしろかったですよね。
 「シンデレラ」の「夢はひそかに」では、堀内優里さんのヴァイオリンと石丸幹二さんのサクソフォンが共演。ヴァイオリンとサクソフォンというかなり珍しい組合せでしたが、なるほどこれはプリンセスとプリンスです。優雅で繊細なプリンセスに、やさしいプリンスが寄り添うといった雰囲気がありました。
 おしまいの「美女と野獣」は「お姫様が集う舞踏会」というコンセプトだけあって華やか。角野隼斗さんのピアノ、新倉瞳さんのチェロも加わって6人のソリストと鈴木優人さん指揮の東京交響楽団が夢のような世界を描きます。イントロで白雪姫やエルサたちが帰ってきて、まるで交響曲のフィナーレを聴いているような気分になりました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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夢をかなえる!ディズニープリンセスの音楽会 前編

投稿日:2021年08月07日 10:30

今週はディズニー作品に登場するプリンセスたちの音楽がテーマ。傑作ぞろいのディズニー名曲を音楽界のプリンセスとプリンスたちによる演奏でお届けしました。一流のソリストたちとオーケストラによる演奏から、さわやかなエレガンスが漂ってきました。清水美依紗さんののびやかで温かみの感じられる声もすばらしかったですよね。
 今回は本当に豪華なアーティストたちが集まりました。フルートの高木綾子さんはNHK交響楽団をはじめ、国内トップオーケストラとの共演も多い名手。チェロの新倉瞳さんは早くから注目を集め、クラシックはもとよりクレズマー音楽など、幅広い分野で意欲的な活動を続けています。ファゴットの長哲也さんは東京都交響楽団の首席奏者。東京都交響楽団、通称「都響」の技術の高さと緻密なアンサンブルは折り紙付き。そして、指揮はおなじみの鈴木優人さん。この一年でもっとも活躍した指揮者のひとりといってもいいでしょう。今、日本の音楽界はコロナ禍による入国制限のため、外国人音楽家を容易には招けなくなっているのですが、そんななかで頼りにされているのが優人さん。各地のオーケストラから引っ張りだこの人気ぶりです。
 そして、新たな才能として脚光を浴びているプリンセスとプリンスが、清水美依紗さんと角野隼斗さん。清水美依紗さんはTikTokの歌唱動画がきっかけとなって、ディズニープリンセスの祭典 Ultimate Princess Celebration の日本版オリジナルテーマソング「Starting Now 〜新しい私へ」の歌唱アーティストに大抜擢されました。まさに現代のシンデレラストーリーですが、TikTokがきっかけというのが今の時代を反映していますよね。角野隼斗さんもまずYouTubeで人気を集めて、それから今年、ショパン国際ピアノコンクールの予備予選を通過して本大会へと進むことが決まっています。SNSのようなパーソナルなメディアと伝統あるメインストリームの檜舞台との間に、すっかり垣根がなくなったことを痛感せずにはいられません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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