• mixiチェック

クラシックの名プロデューサーを知る休日

投稿日:2018年04月28日 10:30

今週はラ・フォル・ジュルネの生みの親であるルネ・マルタンさん一押しのアーティストたちにご登場いただきました。
 マルタンさんの慧眼ぶりは広く知られるところ。ラ・フォル・ジュルネで脚光を浴びた若手アーティストが、その後何年か経ってから一回り大きくなって檜舞台に立つという例は枚挙にいとまがありません。ヴァイオリンのネマニャ・ラドゥロヴィチ、指揮のファンホ・メナ、フランソワ=グザヴィエ・ロト、ピアノのベルトラン・シャマユ、ベアトリーチェ・ラナ、チェロのエドガー・モロー等々。以前、インタビューした際に、マルタンさんはこうして大きく育ったアーティストたちについて「みんなどんどん忙しくなって、ラ・フォル・ジュルネに出演できなくなる人も多い。でもそれは光栄なことなんだよ」と語ってくれました。
 その一方で、ラ・フォル・ジュルネにはビッグネームも出演しています。今週のバーバラ・ヘンドリックスもそうですし、先週放送したギドン・クレーメルや、音楽祭の常連ピアニスト、ボリス・ベレゾフスキーといった人たちです。これはアーティストとマルタンさんの強い信頼関係があってこそ。
 実はマルタンさんは「ラ・フォル・ジュルネ」を始めるずっと以前から、音楽プロデューサーとして名演奏家たちと個人的な絆を結んでいます。たとえば旧ソ連の大ピアニスト、リヒテル。若き日のマルタンさんはリヒテルのリサイタルに出かけ、ナントで演奏してほしいとリヒテル本人にお願いして、公演を実現させます。そしてリヒテルからはトゥレーヌのメレ農場で行われる音楽祭を任されるようになりました。
 マルタンさんが若いアーティストの才能を見抜くように、リヒテルもまたマルタンさんのプロデュースの才能を見抜いたのかもしれませんね。

  • mixiチェック

世界最大級!クラシックの音楽祭を知る休日

投稿日:2018年04月21日 10:30

今週はフランスのナントからクラシックの音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」の模様をお届けいたしました。5月の連休中に日本でも開催される「ラ・フォル・ジュルネ」ですが、発祥の地はナント。この音楽祭は音楽プロデューサーのルネ・マルタンさんが創設したもので、従来のクラシックの音楽祭とはまったくスタイルが異なります。短時間で低料金の公演が、朝から深夜まで複数の会場で同時並行で開催されます。格式ばった音楽祭ではなく、だれもが気軽に足を運べるカジュアルな音楽祭なのです。
 「ラ・フォル・ジュルネ」という名前を日本語に訳せば「狂った一日」。これはモーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」の原作のタイトルに由来します。「フィガロの結婚」には貴族階級への批判が込められています。「一部のエリートのためではなく、みんなのためのクラシックの音楽祭」を目指したマルタンさんの狙いが、音楽祭の名称にも反映されているんですね。
 ナントのメイン会場はシテ・デ・コングレ。約2000人収容の大ホールのほか、大小の講義室や会議室がいくつもあります。東京・有楽町のラ・フォル・ジュルネに足を運んだことのある方は、番組を見て「あれ、なんだか東京国際フォーラムと雰囲気が似ているな」と感じたかもしれません。実際に行ってみると、本当によく似ています。おなじみの八角形の赤いステージもあって、一瞬、有楽町にいるのかと錯覚しそうになるほど。
 「ラ・フォル・ジュルネ」は万人向けのフレンドリーな音楽祭ですが、中身はあくまで本格派。わかりやすい曲だけを並べるなどといったことは決してしません。有名曲と並んで知られざる作品も多数あります。ギドン・クレーメルが演奏したカンチェリの作品もそのひとつ。挑戦的なプログラムを平気で組むのですが、こんなプログラムでも客席はほぼ満席。むしろ、未知の音楽との出会いが歓迎されているような雰囲気がありました。

  • mixiチェック

クラシック界が注目する若き才能の音楽会

投稿日:2018年04月14日 10:30

今週は気鋭の若手奏者、ピアニストの藤田真央さん、ヴァイオリニストの木嶋真優さんに協奏曲を演奏していただきました。
 藤田真央さんは1998年生まれ。まだ在学中なんですね。東京音楽大学1年生で第27回クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝を果たしました。すでにCDもリリースされています。若き才能がひしめく日本の音楽界ですが、ここまで若くして脚光を浴びる人はめったにいません。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の第3楽章を鮮やかに弾ききってくれました。切れ味のあるテクニックと作品にふさわしい豊かなパッションと推進力。加えて抒情的な表現も巧みで、大変に聴きごたえがありました。最後のカデンツァからの怒涛の終結部は迫力がありましたよね。
 ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第32番を例に、作曲時の年齢をイメージした演奏を披露してくれましたが、19歳でありながら仮想51歳となって弾くという発想法はかなりユニーク。
 木嶋真優さんは「練習が大嫌い」というお話が意外でした。しかしお話を聞くと、練習嫌いであるがゆえに、少しでも練習の効率を高めるべく、一回一回、自分の感覚を確かめながら考えて弾くというのですから、練習に対する集中力を大切にされているのでしょう。この世界、すごい練習をしてきた人が練習嫌いを自認することはままあること。
 木嶋さんが演奏したのはショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番。ショスタコーヴィチが活躍していた頃のソ連では、芸術家は自由な創作を許されていませんでした。当局の意図に合致する、わかりやすくて、体制を賛美するような作品が求められたのです。ショスタコーヴィチはヴァイオリン協奏曲第1番を1948年に完成しましたが、このような野心的な作品を発表するのは危険だと考え、スターリンが亡くなって2年後の1955年まで発表を控えました。難曲にして大曲ですが、近年は演奏機会が増えているように感じます。今や20世紀を代表するヴァイオリン協奏曲のひとつになったといってもよいでしょう。

  • mixiチェック

新時代を切り開いた作曲家ドビュッシーの音楽会

投稿日:2018年04月07日 10:30

今週は没後100年を迎えたフランスの作曲家ドビュッシーの魅力に迫りました。まったく独自の形式、ハーモニー、色彩によって、20世紀音楽の礎を築いた作曲家ドビュッシー。その革新性は「後世の作曲家でドビュッシーの影響を受けていない者はほとんど見られない」(ニューグローヴ世界音楽大事典)と言われるほど。「亜麻色の髪の乙女」のような作品は、今やテレビCMなどでも使用されるほど広く親しまれる名曲になっていますが、その響きの性質や柔軟なリズムはそれまでの古典的な音楽とは一線を画しています。
 ドビュッシーの音楽にはさまざまな特徴がありますが、異国趣味もそのひとつ。本日お聴きいただいたピアノ曲集「版画」第1曲「パゴダ」(塔)からは、ガムラン風のアジア的なムードが漂ってきます。ちなみにこの曲集の第2曲は「グラナダの夕べ」で、スペイン趣味が反映されています。以前、番組で交響詩「海」を取りあげた際には、スコアの表紙に葛飾北斎の浮世絵が使用されているといった日本趣味についてご紹介しました。「子供の領分」の第6曲「ゴリウォーグのケークウォーク」はアメリカ風。ドビュッシーの視野はとても広いのですが、素材はあくまで素材にすぎず、そのすべてに彼ならではのオリジナリティが発揮されています。
 最後にお聴きいただいた「花火」は、前奏曲集第2巻からの一曲。ピアノ一台の曲なのに、色とりどりの花火が目に浮かぶような色彩感が伝わってきます。ドビュッシーの作品には、光や波、水、風など、不定形で時々刻々と変化する現象を題材にした曲が多いですよね。ちなみこの曲のおしまいの部分で、さりげなくフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の断片が登場するのに気づかれたでしょうか。この曲はフランス革命記念日の情景を描いたものと言われています。先週の「ワールドカップの音楽会」でご紹介した国歌の名作がこんなところにも。

  • mixiチェック

フォトギャラリー

フォトギャラリーを詳しく見る≫