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名前を覚えてもらえない作曲家の音楽会

投稿日:2023年09月30日 10:30

 曲は聴いたことがあるけれど、だれが作曲したかといわれると名前が出てこない。今週はそんな名前を覚えてもらえない作曲家たちにスポットを当ててみました。
 組曲「展覧会の絵」の「プロムナード」の作曲者はムソルグスキー。50人の街頭インタビューで曲を聴いてもらったところ、ムソルグスキーの名前を答えられたのは7人。でも、7名というのは意外と健闘しているようにも感じます。実は原曲はピアノ曲。フランスの作曲家ラヴェルがオーケストラ用に編曲したことから、一躍人気曲になりました。
 歌劇「アイーダ」の「凱旋行進曲」はスポーツ・シーンでよく耳にする曲です。サッカーの日本代表の応援歌としてもおなじみ。作曲者ヴェルディの名を答えられたのは、50人中4名。こちらは思ったよりも少なかったかも? ヴェルディはイタリア・オペラ最大の作曲家で、「アイーダ」以外にも「椿姫」「オテロ」「リゴレット」「マクベス」などヒット作がいくつもあります。
 オッフェンバックのオペレッタ「天国と地獄」に登場するギャロップは、通称「フレンチカンカン」の名で親しまれています。だれもが耳にしたことがあるはずの曲ですが、オッフェンバックの名前はなかなか出てこないでしょうね。50人中3名の正解でした。
 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」の冒頭部分は、映画「2001年宇宙の旅」で広く知られています。作曲者はリヒャルト・シュトラウス。シュトラウスといっても、ワルツで有名なヨハン・シュトラウス2世とは血縁関係がありません。どのシュトラウスかはっきりさせるために、フルネームでリヒャルト・シュトラウスと呼んでいます。正解は50人中2名。難問でした。
 最後に登場したのは超有名曲「乙女の祈り」。作曲者バダジェフスカはポーランドの女性作曲家で、この曲のみで歴史に名を残しました。正解者は50人中1名。1名だけでも正解してくれる方がいてよかった!

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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オーケストラと夢をかなえる音楽会〜夢響2023 後編

投稿日:2023年09月23日 10:30

 今週は先週に引き続き、オーケストラと共演する夢をかなえる「夢響」の後編をお届けしました。4名の参加者の方々が三ツ橋敬子さん指揮東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と共演。コンサートホールの舞台に立つだけでも相当緊張しそうなものですが、みなさん本当に堂々たるステージ姿で、とてもオーケストラとの共演が初めてとは思えません。感服しました。
 最初に登場した金子暖さんは小学5年生。将来の夢はショパン・コンクールのファイナリストだといいますから、頼もしいかぎりです。曲はグレツキの「若きショパン風協奏曲第2番」の第3楽章より。ショパンを模したスタイルで書かれた作品だけあって、まさに雰囲気はショパン・コンクールのファイナル。コンクールさながらの華やかさと高揚感がありましたね。
 ウインドシンセサイザーという意外な楽器で応募してくださったのは日下志友彦さん。ずっとひとりで練習してきたので、人と合わせるのは初めてだといいますが、まさか初共演の相手がプロのオーケストラになるとは。曲はおなじみの「宝島」。カッコよかったですよね。本人が心から楽しんでいる様子が伝わってきて、聴く人に元気を与えてくれる演奏だったと思います。
 益田彩乃さんは今回唯一のボーカルでの共演。「リトル・マーメイド」の主題歌「パート・オブ・ユア・ワールド」を歌ってくれました。のびやかで透明感のある声とオーケストラのサウンドがぴったりとマッチしていて本当に素敵でした。「スペシャル・ドリーマー賞」は納得でしょう。
 高校1年生の紺野あすかさんはアルトサクソフォンで、トマジ作曲の「バラード」に挑戦。本格派の選曲でしたが、実に見事な演奏で聴き惚れてしまいました。今回は抜粋でしたが、ぜひ全曲を聴いてみたくなります。大きな可能性を感じます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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オーケストラと夢をかなえる音楽会〜夢響2023 前編

投稿日:2023年09月16日 10:30

 コロナ禍により2019年以来開催が見送られていた人気企画「夢響」がついに復活しました。プロの音楽家であっても決して容易ではない「オーケストラと共演する」という夢を叶えるのが「夢響」。多数の応募者から8名の出場者が選ばれ、今週は4名の出場者が三ツ橋敬子指揮東京シティ・フィルと共演を果たしました。
 トップバッターの村上亮さんは学校の音楽の先生。曲はショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番の第3楽章より。村上さんは勤務時間前に指のトレーニングのために有名な教則本「ハノン」を練習しているとおっしゃっていましたが、この曲には「ハノン」の引用が出てきます。というのも、これはショスタコーヴィチがピアニストの息子のために書いた作品。お父さんから息子への「しっかり練習しておけよ」というエールが「ハノン」の引用に込められているのでしょう。臆することなくオーケストラと共演を果たした村上さん。めちゃくちゃカッコよかったです。
 高校生の西村大地さんはトランペットでサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」に挑戦。原曲はヴァイオリンのための名曲ですが、トランペットの輝かしい音色で聴いても効果抜群ですね。ゆっくりしたメランコリックな部分と、速いテンポの活発な部分との対比が鮮やか。オーケストラとの共演という幼少時からの夢を、見事な演奏でかなえてくれました。
 安達心春さんは小学2年生。楽器に「りぼんちゃん」と名前を付けているのがかわいいですよね。曲はヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲ト長調から第1楽章。ヴィヴァルディならではのはつらつとした躍動感と生命力が伝わってきました。演奏後、「続きの2楽章と3楽章も演奏したかったです」と話してくれましたが、気持ちはこちらも同じ。ぜひ続きも聴きたかった!
 「音楽人生の集大成をオーケストラとの共演で示したい」とおっしゃるのが、テナーサックス原野敏さん。サックス歴はなんと56年! なんともいえない味わい深い「ダニー・ボーイ」でした。やっぱりオーケストラといっしょに演奏すると映えますね。ダンディでした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ベトナム公演・後編〜 豪華共演!ベトナムと日本のトップピアニストの音楽会

投稿日:2023年09月09日 10:30

 今週は先週に続いて、日本と外交関係樹立50周年を迎えたベトナムよりお届けしました。今回は両国のトップピアニスト、ベトナムのグエン・ヴィエット・チュンさん、日本の反田恭平さんのおふたりに演奏していただきました。
 まず反田さんがソロで演奏したのは、ショパンのワルツ第5番作品42。数あるショパンのワルツのなかでも、この曲がとくに好きだという方も少なくないのでは。優雅できらびやか、それでいて陰影豊か。洗練された味わいがあります。
 ベトナムのピアニストといって、まっさきに思い出されるのは、1980年にアジア人で初めてショパン国際ピアノコンクールで優勝したダン・タイ・ソンさんでしょう。グエン・ヴィエット・チュンさんは、2021年、そのダン・タイ・ソンさん以来、41年ぶりとなるショパン国際ピアノ・コンクールの本選出場を果たしました。今年5月には東京初のリサイタルも開いています。
 反田さんとチュンさんが2台ピアノで共演したのは、20世紀ポーランドを代表する作曲家ルトスワフスキの「パガニーニの主題による変奏曲」。この「パガニーニの主題」とは、パガニーニが独奏ヴァイオリンのために書いた「24の奇想曲」第24番の主題を指しています。この主題はこれまでに数々の作曲家たちによって、変奏曲に仕立てられてきました。有名なのはリストのピアノ曲「パガニーニによる大練習曲」第6番でしょう。ブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲」やラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」もよく演奏されます。ルトスワフスキも変奏曲の伝統にのっとって、パガニーニの主題を用いたわけです。モダンな響きも加わって、斬新な変奏曲になっていました。
 最後にふたりが連弾で弾いたのは、ブラームスのハンガリー舞曲第5番。よくオーケストラのアンコール曲として演奏される人気曲ですが、もともとはピアノ連弾用に書かれた作品です。反田さんとチュンさんの軽快な演奏は、まさに踊りそのものでしたね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ベトナム公演・前編〜ベトナムと日本の伝統音楽を聴く音楽会

投稿日:2023年09月02日 10:30

 今年、日本とベトナムは外交関係樹立50周年を迎えました。今回は「題名のない音楽会」ベトナム公演といたしまして、ベトナムの首都ハノイのオペラハウスよりお届けしました。このハノイオペラハウスは100年以上の歴史を誇る劇場で、パリのオペラ座がモデルになっています。フランス統治時代に建造されたとあって、内装もヨーロッパの劇場にそっくり。小ぶりな劇場ですが、とても装飾的でゴージャスです。
 最初に演奏されたのはホー・ホアイ・アン作曲の「古都フエの女王」。ベトナムの伝統楽器で編成されたスック ソン モイ伝統オーケストラから、新鮮な音色が聞こえてきました。テルミンのような音色の竹素材の伝統楽器はダン・バウ。もともとはアコースティックな楽器で非常に音量の小さな楽器だったそうですが、現在ではエレキギター同様のピックアップを用いて、音を電気的に増幅しているのだとか。音色になんとも言えない味わい深さがあります。
 同じく竹製の伝統楽器、ダン・トゥルンの音色も印象的でした。木琴のような乾いた軽快な音がするのですが、音に丸みがあって温かみを感じます。チン・コン・ソン作曲の「美しい昔」では、LEOさんの箏にダン・トゥルンや、奏者の口を共鳴器として用いるク・ニ、竹笛のサオ・チュックが加わって、まったく聴いたことのない響きが生み出されていました。箏以外の楽器にはなじみがないにもかかわらず、なぜかノスタルジーが喚起されます。
 おしまいは坂本龍一作曲の「Merry Christmas Mr. Lawrence」。ベトナムの楽器と日本の箏で演奏しても、やっぱりこの曲は名曲ですね。原曲には東洋的なメロディをシンセサイザーで演奏することで、異文化の出会いというテーマが込められていると思います。ベトナムの伝統楽器と日本の伝統楽器の共演にふさわしい楽曲だったのではないでしょうか。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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