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冬を感じる音楽会

投稿日:2023年01月28日 10:30

寒い日が続いていますね。今週は、こんなときこそじっくりと味わいたい冬の名曲をお届けしました。
 一曲目は「石焼きいも」。この歌、だれが作った曲なのかはわかりませんが、だれもがどこかで耳にしている曲だと思います。今回は上野耕平さんのソプラノサクソフォンと堀内優里ストリングスによる演奏で、かつてない詩情豊かな「石焼きいも」を聴くことができました。ノスタルジーを刺激されます。
 ヴァイオリニストの荒井里桜さんが選んだ冬の曲は、ヴィヴァルディの協奏曲集「四季」より「冬」。この曲集は各曲にソネットが添えられており、詩の情景がそのまま音楽で描写されているという珍しい作品です。春夏秋冬、すべての曲が名作だと思いますが、とりわけ「冬」の季節感は際立っています。寒さに震えたり、歯がガチガチしたり……。そんな「寒い」というネガティブな感覚を、これだけ豊かで生気に富んだ音楽で伝えてしまうところがヴィヴァルディの並外れたところでしょう。
 サクソフォンの上野耕平さんが選んだのは、松任谷由実の「BLIZZARD」。映画「私をスキーに連れてって」挿入歌に用いられ、スキー場へ行く列車のCMでも使われていました。上野さんのアルトサクソフォンのまろやかな音色がたまりません。特殊奏法を用いたイントロの「吹雪」も効果的でしたね。
 ピアニストの福間洸太朗さんが選んだのはドビュッシーの組曲「子供の領分」より第4曲「雪は踊っている」。この組曲はドビュッシーの幼い娘シュシュに捧げられています。ドビュッシーは43歳でエンマ・バルダックとの間に初めての子、シュシュを授かり、娘を溺愛したといいます。「雪は踊っている」で描かれるのはひらひらと雪が舞う幻想的な情景で、聴く人にさまざまなイメージを喚起します。まるで父親が娘に絵本を読み聞かせているような楽曲だと思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ロン=ティボー国際コンクール第1位 ピアニスト・亀井聖矢の音楽会

投稿日:2023年01月21日 10:30

今週は昨年11月にパリで開催されたロン=ティボー国際コンクールで第1位に輝いた亀井聖矢さんをお招きしました。2019年に日本音楽コンクールで第1位を受賞するなど、かねてより将来を嘱望されていた亀井さんですが、著名な国際コンクールで第1位を獲得したことで、これからますます活躍の場が広がってゆくことでしょう。
 ロン=ティボー国際コンクールは1943年から続く歴史のあるコンクールです。名ピアニストのマルグリット・ロンと名ヴァイオリニストのジャック・ティボーが共同で創設したことから、ふたりの名前を合わせて「ロン=ティボー国際コンクール」と名乗っています。ですので、ピアノ部門とヴァイオリン部門があります(一時期のみ声楽部門がありました)。ピアノ部門の過去の優勝者には、伝説的な名奏者サンソン・フランソワをはじめ、アルド・チッコリーニやパスカル・ロジェらの名前が並んでいます。
 亀井さんのお話にコンクールでの順位の発表がフランス語だけでわかりづらかったとありましたが、この結果発表のセレモニーがショーアップされているのも印象的でしたね。順位に先立って聴衆賞やオーケストラ・ミュージシャン賞など、特別賞の発表があり、その際にそれぞれの受賞者が演奏するという趣向になっていて、ずいぶんと長時間のセレモニーだったようです。
 本日、最後に亀井さんが演奏してくれたのはバラキレフの「イスラメイ」。バラキレフはロシア五人組で主導的な役割を果たした作曲家です。コーカサス地方への旅をきっかけに、民俗舞曲を用いた「イスラメイ」を作曲しました。副題は東洋的幻想曲。初演以来、難曲中の難曲として知られています。しかし亀井さんの演奏で聴くと、あまりに音楽の流れが自然で、難曲であることをまったく感じません。切れ味の鋭さと端然としたエレガンスを兼ね備えた名演だったと思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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反田恭平 恩返しの音楽会

投稿日:2023年01月14日 10:30

今週は反田恭平さん設立のジャパン・ナショナル・オーケストラが本拠を置く奈良よりお届けしました。会場は奈良県文化会館国際ホール。こうしてお客さんの入った会場での公開収録は久しぶりでしたが、やはり熱気があっていいものですね。
 反田さんが音楽家を目指すきっかけとなったのが、当番組の指揮者体験企画「振ってみまSHOW!」。当時12歳の反田さんがベートーヴェンの交響曲第7番を指揮している映像がありましたが、まさに現在の反田さんの姿を予告するかのようで、感慨深いものがあります。今回はそんな名物企画が一日限りの復活。9歳の柚木心琴さん、13歳の永原聖恵さんがブラームスのハンガリー舞曲第5番の指揮に挑戦してくれました。おふたりとも堂々たる指揮ぶりでオーケストラをリード。指揮を終えた心琴さんの「楽しかったです」の一言がめちゃくちゃかわいかったですよね。
 最後に反田さんが指揮をしたのは、モーツァルトの交響曲第38番「プラハ」より第3楽章。精鋭ぞろいのジャパン・ナショナル・オーケストラだけに、とてもみずみずしく豊麗なサウンドが生み出されていました。チェロ以外はみんな立って演奏するスタイルで、視覚的にもいっそうの躍動感が伝わってきます。
 この「プラハ」交響曲は反田さんが「元気をもらえる作品」と話していたように、モーツァルトの交響曲のなかでもとりわけ高揚感にあふれた特別な傑作だと思います。作曲当時、プラハの街ではモーツァルト旋風が巻き起こっていました。オペラ「フィガロの結婚」がプラハでセンセーショナルな成功を収め、モーツァルトはこの地で大歓迎を受けます。その際に開かれたコンサートで初演されたのが「プラハ」交響曲。輝かしく幸福感にあふれた曲想は、絶頂期のモーツァルトの意気揚々とした姿を思い起こさせます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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音楽の街・古都奈良をピアニスト反田恭平と巡る休日

投稿日:2023年01月07日 10:30

あけましておめでとうございます。今週は新年早々にご結婚を発表されたばかりの反田恭平さんと一緒に古都奈良を巡りました。反田さんが設立したオーケストラ、ジャパン・ナショナル・オーケストラの拠点は奈良。反田さんはこのオーケストラを地域社会に親しまれる楽団に育て、いずれはアカデミー(音楽院)へと発展させたいとたびたび話しています。
 意外なところで音楽と結びつきのある奈良でしたが、なかでも歴史を感じさせたのが春日大社の神楽鈴(かぐらすず)と鼉太鼓(だだいこ)。神楽鈴は約900年続く春日若宮おん祭で用いられ、鼉太鼓は約800年にわたって使われ続けたといいます。クラシック音楽では古い時代の作曲家であるバッハですら300年前の人ですから、800年、900年といった時間のスケールがいかに大きいか、感嘆せずにはいられません。
 鹿寄せに使われていたホルンにもびっくり。現代のホルンとは異なり、バルブのないナチュラルホルンが用いられていました。今でもピリオド・オーケストラ(古い時代の作品を当時の楽器や奏法を用いて演奏する楽団)の演奏会で、ときどきナチュラルホルンを目にすることはありますが、まさか奈良の鹿寄せでナチュラルホルンの音色を聞けるとは。ヨーロッパの昔の楽器が奈良の風物詩として定着しているのがおもしろいですよね。
 奈良ホテルのアップライトピアノは、相対性理論で有名なアインシュタイン博士がかつて来日した際に弾いたピアノなのだとか。アインシュタインといえば、いつも旅先にヴァイオリンを携行するほどのヴァイオリン愛好家として知られていますが、実はピアノも好んで弾いていました。
 最後に演奏されたモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は、鈴木郁子さん製作の吉野杉製弦楽器を使ったカルテットによる演奏で。明るく爽快な音色が印象的でした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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