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本気でプロを目指す!題名プロ塾~葉加瀬太郎編 後編

投稿日:2020年04月25日 10:30

今週は葉加瀬太郎さんによる「題名プロ塾」の後編をお届けいたしました。前回、一次審査を通過した武田さん、林さん、出垣さんの3名が最終審査で日本のトップレベルのプロ・ミュージシャンたちと共演。アドリブ付きの「情熱大陸」に三者三様の個性が発揮されていました。
 最初の武田さんは、流麗な演奏スタイルによる「情熱大陸」。アドリブ部分にも優美さが感じられました。最初に葉加瀬さんから「リズムがこけている」という指摘がありましたが、もう一度やり直すとぐっと引きしまった演奏になりました。
 2番目の林さんはアドリブでの奇策がぶっ飛んでました。楽器を置いたときにはなにが始まるのかと思いましたが、まさか風船を引っ張り出すとは! 風船から出る空気で音程を作ってくれた場面には思わず爆笑。あっけにとられる葉加瀬さんの表情がよかったですね。ユニークなアイディアでしたが、オーボエの最上さんからは厳しい指摘も。でも、メロディ部分は切れ味鋭く、勢いがありました。
 出垣さんの持ち味は全身の動きを生かした魅せるスタイル。演奏も思い切りがよく、伸びやか。アドリブにも工夫が感じられて、とてもすばらしかったと思います。なにより演奏姿のにこやかさがいいですよね。聴いている人がハッピーになれるヴァイオリンと言えばいいでしょうか。バンドのメンバーを引き込む力もあって、得難い資質を感じさせます。
 そして注目の結果発表で選ばれたのは林さん! アドリブが物議を醸すものだっただけにどうなることかと思いましたが、結果的には演奏力の高さが評価されることになりました。ぜひ本番の舞台でキレッキレのヴァイオリンを披露してほしいものです。出垣さんも高評価でしたが、ご本人がおっしゃていたように「ここからがスタート」。きっと別の形でまたお名前を目にする機会があると期待しています。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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本気でプロを目指す!題名プロ塾~葉加瀬太郎編 前編

投稿日:2020年04月18日 10:30

今回は新企画「題名プロ塾」として、葉加瀬太郎さんが音楽家志望者の方々にプロの極意を伝授してくれました。しかも、教えるのみならず、これは葉加瀬さんのコンサートで実際にステージに立つためのオーディションも兼ねています。
 ヴァイオリンの場合はどうしてもクラシック音楽をベースとした教育を受けることがほとんど。葉加瀬さんが教えるポップスを弾くための実践的なノウハウは、塾生のみなさんにとって新鮮だったのではないでしょうか。第一次レッスンに参加してくれた塾生は、池永さん、林さん、永田さん、出垣さん、武田さんの5名。みなさんしっかりした演奏技術をお持ちの方ばかりで、個性豊かな「情熱大陸」を披露してくれました。そして、葉加瀬さんのアドバイスで演奏がこんなにも変わるのかという驚きがありました。
 池永さんとのレッスンで葉加瀬さんは「ビートを感じているか、感じていないか。行間にビートがある」とおっしゃていました。これはポップスならでは。クラシックでは常にソリストが主役で、伴奏はソリストに付いていくもの。ソリストは一定のビートを刻むのではなく、微妙なテンポの揺れによって音楽に自然な呼吸感を与えます。でも、ポップスの原則はビートありき。同じヴァイオリンの演奏でもずいぶん違うんですね。
 林さんの勢いのある「情熱大陸」はインパクト抜群。ここで葉加瀬さんが求めたのは「インテンポ」(一定のテンポ)の演奏。クラシックであれば、曲想に応じて部分的にテンポが走っても、スリリングな演奏として歓迎されることも多いのですが、ここでもジャンルの違いがあらわれていました。
 永田さんの「情熱大陸」は、葉加瀬さんとはまったく異なり、エレガントでノーブルなスタイル。葉加瀬さんは永田さんに自分の解釈を押し付けるのではなく、グラッペリを例に出して、永田さんのパーソナリティを尊重していたのが印象的でした。葉加瀬さんの名教師ぶりが伝わるシーンだったと思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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和楽器女子たちの休日

投稿日:2020年04月11日 10:30

今回は「和楽器女子たちの休日」。「ハーモニカ女子たちの休日」「低音楽器女子の休日」に続く「女子たちの休日」シリーズ第3弾をお届けしました。登場したのは箏の吉永真奈さん、尺八の辻本好美さん、鼓の安倍真結さん。本来、自国の文化ではあるのですが、こうしてお話をうかがうと、知らないことばかりで新鮮な感動がありました。西洋楽器との共通点もあれば、まったく違うところもあって興味が尽きません。
 箏の裏側に穴があるなんて、ご存じでしたか。楽器の内部は空洞になっていて、そこで響いた音が穴から出てきます。だからマイクが穴のそばに置いてあったんですね。柱(じ)を動かして音程を変えるあたりも含めて、ついギターを連想してしまいます。エレガントな印象のある箏ですが、実は腕の筋力が必要だというお話にも驚きました。
 尺八の指穴は表に4つ、裏に1つという説明がありました。これだけであんなにいろいろな音が出せるとは。形状だけを見れば学校の音楽の授業で習ったリコーダーと似ています。しかし、リコーダーのような歌口が付いていませんので、音を出すのはとても難しそう。石丸さん、一瞬、きれいな音が出ていました!
 鼓でおもしろかったのは、音程について。大鼓が高い音、小鼓が低い音を出すというのが意外でした。西洋楽器では弦楽器でも管楽器でも小さな楽器ほど高い音、大きな楽器ほど低い音を出すものだと思いますが、鼓はちがうんですね。大鼓は熱で乾燥させて甲高い音を出すのに対し、小鼓は適度に湿らせなければならないといいますから、ずいぶんと湿度に対してデリケートな楽器だと感じます。
 また、鼓は代々継承するものであって、値段が付けられないという点は、オールド・ヴァイオリンの名器を思わせます。あの「カン!」という突き抜けるような音色が気持ちよかったですね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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Jポップ さくら協奏曲の音楽会

投稿日:2020年04月04日 10:30

もしもクラシックの大作曲家たちが「さくらソング」を作ったら……。今週の「Jポップ さくら協奏曲の音楽会」はそんな発想で定番の「さくらソング」を協奏曲に仕立ててみました。協奏曲は「急-緩-急」からなる全3楽章が基本の形。これに従いながら、楽章ごとにソリストが変わる豪華仕様の協奏曲が誕生しました。
 第1楽章はヴィヴァルディ風「チェリーブラッサム」。ヴィヴァルディは生涯に500曲以上もの協奏曲を書いたイタリア・バロック期を代表する作曲家です。代表作「四季」の中でもっとも有名な「春」がオーケストラで奏でられると、小林美樹さんの独奏ヴァイオリンが「チェリーブラッサム」で応えます。時空を超えて、イタリアの春と日本の春がいっしょに到来したかのような晴れやかさです。
 第2楽章はメンデルスゾーン風の森山直太朗「さくら」。協奏曲では第2楽章にしっとりとした抒情的な曲想が置かれるのが一般的です。メンデルスゾーンの有名な無言歌「春の歌」に箏が加わって、和洋が融合した響きから次第に「さくら」が聞こえてきました。オーケストラと箏の響きが意外にもマッチしているのにびっくり。オーボエの愁いを帯びた音色も印象的でしたね。「春の歌」と「さくら」が同時進行した後、最後はフルートからメンデルスゾーンの歌曲「歌の翼に」が飛び出して思わずニヤリ。
 第3楽章はヨハン・シュトラウス2世風のコブクロ「桜」。協奏曲の第3楽章では、活発で躍動感あふれる曲想が用いられます。もしもヨハン・シュトラウス2世が、コブクロ「桜」を書いていたら。高木綾子さんの軽やかで澄んだフルートの音色は春にぴったり。ワルツ「春の声」と「桜」が同時進行して、途中から「美しく青きドナウ」まで乱入する春祭りへ。春爛漫の様子を連想させる華やかなフィナーレでした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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