• mixiチェック

衣装で演奏は変わるのか?の音楽会

投稿日:2023年10月28日 10:30

 10月31日はハロウィーン。いつの間にか日本でもすっかり定着しましたね。この日は仮装した子どもたちや若者の姿をよく見かけます。今週のテーマは「衣装で演奏は変わるのか」。いつもはステージ上でドレスや燕尾服を着ている音楽家たちのみなさんに、さまざまな衣装をまとってもらい、演奏にどんな影響があるのかを探ってみました。
 ヴァイオリニストの廣津留すみれさんは、アニメーション映画「魔女の宅急便」から「やさしさに包まれたなら」を、主人公キキの衣装で演奏してくれました。とてものびのびと弾いている様子がよくわかります。廣津留さんは衣装のおかげで、踊りながら弾いてしまったと語っていましたが、そんな浮き立つような気分が演奏にもあらわれていたのではないでしょうか。
 ピアニストの金子三勇士さんはリストの「死の舞踏」を「死神」の衣装で演奏。グレゴリオ聖歌の「怒りの日」の主題がなんども奏でられ、不吉な予感を漂わせます。ハンガリーと日本にルーツを持つ金子さんにとって、ハンガリー生まれの作曲家リストは得意のレパートリー。いつもは端正な金子さんですが、衣装のおかげでぐっとワイルドに。力強い打鍵から底知れぬパワーが伝わってきます。すごい迫力でした。
 フルートの多久潤一朗さんとコントラバスの地代所悠さんは、ディズニー映画「シンデレラ」より「ビビディ・バビディ・ブー」を演奏してくれました。衣装はねずみで始まって、魔法で変身。多久さんはフルート怪人に、地代所さんはコントラバスヒーローになり切って、音楽バトルをくりひろげます。コントラバスヒーローは地代所さんが生み出したオリジナルキャラクター。Youtubeでも話題を呼んでいます。ふだんは縁の下の力持ちと思われがちなコントラバスが、ヒーローになって活躍。鮮やかな妙技で怪人を倒してくれました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

名曲が映える!吹奏楽アレンジの音楽会

投稿日:2023年10月21日 10:30

 今週は映画等でおなじみの名曲を吹奏楽アレンジでお楽しみいただきました。演奏は田中祐子さん指揮のシエナ・ウインド・オーケストラ。吹奏楽の魅力が最大限に発揮されたアレンジでお届けしました。
 1曲目は映画「スター・ウォーズ」より「スター・ウォーズのテーマ」。ジョン・ウィリアムズが作曲した映画音楽の金字塔とでもいうべき名曲です。第1作の公開は1978年にまで遡りますので、もはや映画が生んだ「クラシック」と言ってもよいでしょう。原曲はオーケストラによる壮大な響きが特徴的ですが、今回の吹奏楽版で聴いても、やはりゴージャスでしたね。ホルン、トランペット、ユーフォニアム、テューバといった厚みのある金管楽器セクションは吹奏楽ならでは。田中祐子さんが吹奏楽の特徴として「音の立ち上がり」を挙げていたように、弦楽器中心のオーケストラとはまた違ったキレがあります。くっきりと鮮やかで、輝かしい「スター・ウォーズ」でした。
 2曲目は映画「ニュー・シネマ・パラダイス」より「ニュー・シネマ・パラダイス〜愛のテーマ〜初恋」。モリコーネ親子による名曲です。この曲で主役になるのはサクソフォン。木管楽器と金管楽器の長所をあわせ持った万能楽器です。サクソフォンは標準的なオーケストラの編成には含まれていませんが、吹奏楽では重要な役割を果たします。ソロでもアンサンブルでも活躍してくれました。柔らかくまろやかな音色に魅了されます。
 3曲目はドラマ「スパイ大作戦」より「スパイ大作戦のテーマ」。ラロ・シフリンの代表作のひとつで、「5拍子で書かれた名曲」としても知られています。今回のアレンジで活躍するのは低音楽器群。ファゴット、バスクラリネット、バリトンサックス、テューバ、コントラバスといった低音楽器が一角に集まって配置されていました。この低音楽器群が曲調に応じてさまざまな表情を生み出します。フルートやアルトサックスのソロも加わって、一段とスケールの大きな「スパイ大作戦」が鳴り響きました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

元気が出る吹奏楽の音楽会

投稿日:2023年10月14日 10:30

 今週は日本屈指の吹奏楽団、シエナ・ウインド・オーケストラをお迎えして元気いっぱいの吹奏楽曲をお届けしました。吹奏楽ファンならずとも、耳なじみのある曲ばかりだったのではないでしょうか。
 指揮は田中祐子さん。オーケストラの指揮者として活躍する田中さんが、吹奏楽の特徴として挙げていたのが、打楽器と管楽器を主とする編成、そして華やかさと瞬発力。オーケストラでは指揮者の前に大人数の弦楽器が並び、その後方に管楽器や打楽器が加わりますが、吹奏楽では管楽器と打楽器が中心となります。弦楽器は例外的にコントラバスが入るのみ。響きの質感はオーケストラとはずいぶん異なります。
 一曲目に演奏されたのは「アフリカン・シンフォニー」。もともとはヴァン・マッコイによるソウル・ミュージックですが、高校野球の応援曲に使われることも多く、おもに吹奏楽を通じて人々に親しまれている楽曲だと思います。岩井直溥による編曲は、輝かしくエネルギッシュ。ホルンの雄叫びが熱いですよね。
 2曲目の「エル・クンバンチェロ」も岩井直溥による編曲で、こちらも高校野球で人気の高い曲です。冒頭の「エル・クンバンチェロ」の発声が印象的です。原曲はプエルトリコのラファエル・エルナンデスがカーニバルのために書いた曲なのだとか。人々がお祭りで浮かれ騒ぐ様子を描いただけあって、とことん楽しくパワフルな曲です。ピッコロやフルートのソロもカッコよかったですよね。
 最後に演奏されたのは東海林修作曲の「ディスコ・キッド」。こちらはアレンジではなく、吹奏楽のために書かれたオリジナル曲です。ディスコブームを反映して、1977年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲として作曲されました。コンクールからこれだけの人気曲が誕生したことに、あらためて驚かずにはいられません。「ディスコ!」のかけ声も入り、客席も大いに盛り上がりました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

葉加瀬太郎“超絶デュオ”の音楽会

投稿日:2023年10月07日 10:30

 今週は葉加瀬太郎さんがヴァイオリニストの小野明子さんと結成した新ユニット、「超絶デュオ」の演奏をお楽しみいただきました。小野さんは2000年メニューイン国際ヴァイオリン・コンクールで優勝するなど、多くの入賞歴を誇り、現在はロンドンを拠点に国際的に活動するヴァイオリニスト。イギリスのメニューイン音楽院やギルドホール音楽院で教授も務めています。
 葉加瀬さんが小野さんを「ヴィルトゥオーゾ」と呼んでいましたが、これは卓越した技術を持った名演奏家を指す言葉。あえて日本語にすれば「名人」とか「達人」といったところでしょうか。特にヴァイオリンの世界には、華麗な超絶技巧を駆使する「ヴィルトゥオーゾ」たちの伝統があり、そんな名手たちの技巧を生かすための作品が数多く書かれています。
 今回演奏された曲はいずれも葉加瀬太郎さんの楽曲。啼鵬さんの編曲により、2台ヴァイオリンならではの華やかさが楽曲にもたらされていました。おなじみの「情熱大陸」もおふたりの共演によって、一段とスケールアップ。小野さんの重音奏法を活用したバッハ風カデンツァ、葉加瀬さんのブラームスのヴァイオリン協奏曲風のカデンツァが挿入されていて、とても新鮮でした。カッコよかったですよね。
 2曲目の「One pint of Love」では、葉加瀬さんが奏でるアイルランドのフィドルの世界に、小野さんの小気味よい超絶技巧が加わるという楽しい趣向。絶妙なコンビネーションでした。
 3曲目の「冷静と情熱のあいだ」は、小野さんのバッハ「シャコンヌ」風のソロではじまり、そこに葉加瀬さんのヴァイオリンが加わって、親密な音の対話がくりひろげられます。途中で入る小野さんのフラジオレットが爽やか。
 それにしても、おふたりのヴァイオリンの音色が本当に美しい! 2台のヴァイオリンから生まれる潤い豊かな音色にすっかりぜいたくな気分になりました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

フォトギャラリー

フォトギャラリーを詳しく見る≫