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高校吹奏楽部がプロに教わる音楽会

投稿日:2020年02月29日 10:30

今週は吹奏楽部の高校生たちが日本を代表するスター奏者たちから直接指導を受けるという夢の企画。全日本吹奏楽コンクールで2年連続金賞を受賞した東海大学菅生高等学校吹奏楽部のみなさんが、モーション・ブルー・ヨコハマに来てくれました。「小曽根真 featuring No Name Horses」のサウンドを間近で聴く高校生たち。うらやましい光景です。
 「小曽根真 featuring No Name Horses」は総勢15名からなるビッグバンド。エリック・ミヤシロさんのトランペットの抜けるようなハイトーンはなんど聴いても快感です。小曽根さんも最高に音楽を楽しんでいる様子が伝わってきました。
 高校生たちから寄せられた質問はどれも具体的。「トロンボーンで小さな音をきれいに出すには?」「トランペットの高音がキツい音になってしまう」。そして、質問に対するプロの教え方は、細かな奏法を手取り足取り教えるのではなく、音のイメージを共有するような教え方だったのが興味深いと思いました。高校生たちがアドバイスを即座に吸収して、自分の音に反映させていたのには驚くばかり。こんなにうまくいくものなのかなと思ってしまうほどで、おそらく教える側も何度となく同様の質問に向き合ってきたのでしょう。演奏もすごいけれども、教え方もすごい!
 「パプリカ」で高校生がプロと共演する場面もおもしろかったですよね。おなじみの「パプリカ」がジャズに生まれ変わっている新鮮さもさることながら、神のような人たちと共演して力を出し切った高校生には心からの拍手を送るほかありません。そして、小曽根さんのアドバイスが秀逸です。「怖がっていると絶対に音楽にのまれてしまう。思い切り演奏する」。これはジャズに限らず、ほかの音楽でも、あるいはスポーツなどの世界でも通用する言葉かもしれませんね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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グラミー賞で注目される作曲家!挾間美帆に迫る休日

投稿日:2020年02月22日 10:30

今週は先頃グラミー賞にノミネートされて話題を呼んだジャズ作曲家、挾間美帆さんをスタジオにお招きしました。グラミー賞といえばアメリカの音楽産業でもっとも栄誉ある賞。そんなグラミー賞に日本人がジャズの分野でノミネートされたのですから、見事というほかありません。
 挾間さんがノミネートされたのは「ラージ・ジャズ・アンサンブル」部門。本日の演奏でも挾間さんがアンサンブルを指揮していましたが、弦楽器にピアノ、トランペット、ホルン、ドラムが加わった編成で、とても音色のバリエーションが豊富だったのが印象的でした。一曲目の「RUN」のようにヴァイオリンのソロが活躍する場面があるなど、ジャズバンドでありながらもオーケストラ的な性格を多分に備えているのがおもしろいところ。作曲家が自らアンサンブルを指揮して自作を演奏するのも、モーツァルトやベートーヴェンらクラシックの作曲家がしていたことと変わりありません。その意味でも「ジャズ作曲家」という言葉はしっくりきます。
 グラミー賞はポップ、ロック、ジャズ、クラシック、ミュージカル等々、あらゆる音楽のジャンルを対象とした賞です。受賞者を選ぶのはレコーディング・アカデミー。録音された音楽が対象となります。「グラミー」とはなんのことか、ご存じでしょうか。グラミー賞のロゴマークには蓄音機のイラストが使われていますが、グラミーとはグラモフォン(蓄音機)からできた言葉で、元来はグラモフォン賞だったわけです。イギリスのクラシック音楽雑誌にも「グラモフォン賞」がありますが、言葉の由来としては同じなんですね。
 恩師山下洋輔さんが語ってくれた挾間さんのエピソードは痛快でした。山下さんをして「鬼バンマス」と呼ばれる挾間さん。自分の音楽を貫き通す姿勢が伝わってきます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ウィーンの頂点の音楽会 2週連続スペシャル 後編

投稿日:2020年02月15日 10:30

今週は先週に引き続き、ウィーン・リング・アンサンブルの演奏をお届けしました。これぞ本場ウィーンの香り。ウィーン・フィルの名奏者たちが楽しい演奏を披露してくれました。
 一曲目の「ラデツキー行進曲」は、元日のウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートで、アンコールの最後に演奏されるおなじみの名曲。指揮者が客席を向いて手拍子を促す演出がすっかり定着しています。ここ東京オペラシティ・コンサートホールでの収録でも、やはり客席がステージと一体となって手拍子を打ちました。手拍子を強く打つところ、そっと弱く打つところ、止めるところなど、その様子はウィーンでの公演とまったく同じ。こんなふうに手拍子の強弱まで細かく定まったのは、往年の名指揮者ロリン・マゼールがニューイヤーコンサートを指揮していた時代からだと思います。客席もいっしょに演奏しているような気分になれるのが楽しいんですよね。
 ウィーン・フィルは自分たちの伝統を大切にするオーケストラですので、楽員には親子二代にわたる奏者がたくさんいます。オーケストラの世界にもグローバル化の波が押し寄せる昨今、このようなオーケストラは稀有な存在です。ウィーン・フィルと双璧をなすベルリン・フィルなどは超多国籍集団で、ドイツ人楽員はほんのわずか。どこで生まれ、どこで学んだかはまったく関係ありません。それに比べると、ウィーン・フィルにはウィーンの流儀が生きていると感じます。
 キュッヒルさんは「ウィンナワルツはわたしたちの血の中に流れている」と言います。「美しく青きドナウ」はまさにそんなウィーンの音楽家にとって血肉化した名曲。こちらもウィーン・フィル・ニューイヤー・コンサートでは、必ずアンコールに演奏されます。小編成で演奏しても、情感豊かでロマンティックな味わいはオーケストラの演奏とまったく変わりません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ウィーンの頂点の音楽会 2週連続スペシャル

投稿日:2020年02月08日 10:30

今週と来週の2週にわたって、本場ウィーンの精鋭たちが集うウィーン・リング・アンサンブルの演奏をお届けします。毎年元旦にウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートが世界中に中継されますが、あのウィーン・フィルのメンバーたちが日本にやってきて、ウィンナワルツやポルカを演奏してくれました。この「本物感」は格別です。
 ウィーン・リング・アンサンブルを率いるのは名コンサートマスター、ライナー・キュッヒル。なにしろ45年にわたってウィーン・フィルのコンサートマスターを務めたくらいですから、カラヤン、バーンスタイン、クライバーなど、伝説的な名指揮者たちとの共演も多数。そしてキュッヒルはどんな大指揮者からも一目置かれる存在でした。ただ指揮者に追従するのではなく、どんなときでもオーケストラを支えて、ウィーンのスタイルを体現するのがキュッヒルだったと思います。
 キュッヒルはウィーン・フィルを定年退職後もウィーン・リング・アンサンブルとしての来日したり、NHK交響楽団のゲスト・コンサートマスターを務めるなど、たびたび日本の舞台に登場してくれています。その輝かしくパワフルなヴァイオリンの音色は健在。奥様は日本人とあって、日本語もお上手です。日本のクラシック音楽ファンには、彼に特別な親しみと尊敬の念を抱いている方が多いのではないでしょうか。
 ウィーン・リング・アンサンブルのメンバーの多くが音楽一家の出身であるように、ヨハン・シュトラウス2世もまた音楽一家に生まれました。父ヨハン・シュトラウス1世、弟ヨーゼフ・シュトラウスら、それぞれが名曲を残しています。ワルツ「酒、女、歌」は、ヨハン・シュトラウス2世の数あるワルツのなかでも屈指の名曲。優雅さと雄大さを兼ね備えたロマンティックな味わいは、この作曲家ならではですね。
 次週はウィンナワルツの最高傑作、「美しく青きドナウ」も演奏されます!

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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やのとあがつま 民謡を楽しむ音楽会

投稿日:2020年02月01日 10:30

今週は矢野顕子さんと上妻宏光さんのユニット「やのとあがつま」による、新しい姿に生まれ変わった民謡をお楽しみいただきました。矢野さんと上妻さんでユニットを組むと最初に聞いたときは「えっ?」と驚きましたが、なるほど、民謡にこんな可能性があったとは。矢野さんと上妻さんは、新しさと懐かしさを同時に感じさせてくれる絶妙の組合せなのだと納得しました。
 熊本県民謡「おてもやん」で驚いたのは2番の歌詞。矢野さんがいきなり英語で歌いだして、なにを歌っているのかと思えばオリジナルの歌詞でした。この発想がスゴいですよね。しかも、こんなにも自由に扱われ、音楽の外観が変わっていても、曲はやはり「おてもやん」らしさを残しているという不思議。民謡には根源的な柔軟さや強さがあって、いかなるアレンジにも耐えうるものなのかもしれません。
 富山県民謡「こきりこ節」では、シンセサイザーとピアノ、三味線、ボーカルが一体となって、響きの妙が生み出されていました。それにしても「即興がほとんど」というのにはびっくり。
 宮城県民謡「斎太郎節」も斬新な今の音楽でしたが、それでも潮の香りが伝わってくるのがおもしろいところ。やはりこれは民謡です。
 民謡はヨーロッパのクラシック音楽でも大きな存在感を放っています。ハイドンもベートーヴェンも、ストラヴィンスキーもバルトークも、多くの大作曲家たちは民謡を素材として、まったくオリジナルな音楽を生み出してきました。バルトークは東欧の農村を巡って民謡を採集し、そこから独自の語法を生み出しました。革新的作品として知られるストラヴィンスキーの「春の祭典」にもリトアニア民謡などが借用されています。民謡は洋の東西を問わず、音楽家たちのインスピレーションの源であり続けています。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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