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有名作曲家のひねりすぎた曲名を楽しむ休日

投稿日:2020年09月19日 10:30

今週は古坂大魔王さんの「ひねりすぎ」シリーズ第4弾、「有名作曲家のひねりすぎた曲名を楽しむ休日」をお届けいたしました。大作曲家たちの意外な側面が垣間見えたのではないでしょうか。
 モーツァルトの「俺の尻をなめろ」は、おそらく仲間内でのおふざけとして書かれたのでしょう。そこに居合わせた6人の音楽家たちが酔っ払って口々に悪態をついたところ、じゃあ、どうせだったら悪態でカノンを書いてやろうとモーツァルトが思いついたのかもしれません。
 もちろん、こんな曲がモーツァルトの生前に出版されるはずがありません。死後に楽譜が出版される際も、偉大なモーツァルトにこんな下品な曲があってはならないと思われたのでしょう、「愉快にやろうね!」という上品な歌詞に差し替えられてしまいました。「俺の尻をなめろ」と「愉快にやろうね!」では大違いです。本来の歌詞が広く知られるようになったのは、20世紀後半になってから。モーツァルトが羽目を外していたのは、この曲に限りません。ガールフレンドに宛てた手紙では下ネタやダジャレを連発しています。
 一方、ロッシーニはいかにも愉快な曲を書きそうな作曲家です。ロッシーニはオペラで大ヒットを連発して、大儲けをしたあげく、早々に作曲から引退してグルメの道をまっしぐらに進んだというキャリアの持ち主。道楽をとことん突き詰めるタイプだったんですね。ですから、「2匹の猫の滑稽な二重唱」のような楽しい曲をロッシーニが書いていても不思議はありません。本当は他人の曲だったのですが、みんながロッシーニの作品として納得してしまったわけです。
 ベートーヴェンの「お願いです、変ホ長調の音階を書いてください」もおかしな曲でした。これも仲間内のジョークのような曲だと思いますが、きっとその場にいた人間だけにわかる笑いの要素があったのではないでしょうか。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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辻井伸行がベートーヴェンの「月光」完全版を弾く音楽会

投稿日:2020年09月12日 10:30

今週は先週に続いて辻井伸行さんにベートーヴェンの傑作ソナタを演奏していただきました。今回はピアノ・ソナタ第14番「月光」。実はこの曲、出版時にはピアノ・ソナタ第13番と2作セットで発表されました。その際、ベートーヴェンはこの2作に「幻想曲風ソナタ」と名付けました。
 言葉だけを見ると、幻想曲とはなんらかの空想を描いた曲のことかと思ってしまうかもしれませんが、そうではありません。ここでいう幻想曲とは、既存の様式や形式にこだわらずに、自由な創意にもとづいて書かれた曲のこと。カチッとした形式があるのではなく、即興風の曲だというようなニュアンスも持っています。ですから、本当ならベートーヴェンのピアノ・ソナタ第13番も第14番も両方とも「幻想曲風ソナタ」と呼ばれていいはずなのですが、番組内でもご紹介したように第14番には「月光」の愛称が定着しました。ベートーヴェンは「月光」のイメージなど一切持っていなかったでしょうが、みんなが「なるほど、これは月光だ」と納得したわけです。ちなみに愛称の付かなかった第13番のほうは、今でもよく「幻想曲風ソナタ」の名で呼ばれています。
 辻井さんが「月光」に与えた愛称は「かなしみ」。たしかに第1楽章には一貫して静かな「かなしみ」の感情が流れているように思います。そこから軽やかな第2楽章を経て、最後の第3楽章で感情を爆発させ、荒々しい波が押し寄せるというストーリー性は、ベートーヴェンにふさわしいものでしょう。最後はとても盛り上がって情熱的に曲を閉じるのですが、それでもどこか満たされない思いが残っているようにも感じます。
 辻井さんの演奏は端正で力強く、説得力に満ちていました。「かなしみ」とは題したものの、過度に感情に溺れることなく、格調高い本格派のベートーヴェンを披露してくれました。これぞ名曲、名演だったと思います。
(※辻井伸行さんの姓の「辻」は正式には、点がひとつの「辻」です)

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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辻井伸行がベートーヴェンの三大ソナタを弾く音楽会

投稿日:2020年09月05日 10:30

今年はベートーヴェン生誕250年ということもあって、一段とベートーヴェンに注目が集まっています。今週は辻井伸行さんにベートーヴェンの大傑作ソナタ、「悲愴」と「熱情」を演奏していただきました。ベートーヴェンのピアノ・ソナタのなかでも、「悲愴」「熱情」「月光」の「三大ソナタ」はとりわけ高い人気を誇っています。
 ベートーヴェンのピアノ・ソナタはぜんぶで32曲ありますが、「悲愴」「熱情」「月光」といったようにタイトルの付いた曲は決して多くありません。当時の楽曲はピアノ・ソナタであれ、交響曲であれ、このようにタイトルが付いていないほうが一般的だったのです。たとえば、ベートーヴェンが最初に書いたピアノ・ソナタは、ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調作品2-1。番号や調、作品番号などが記されているだけで、具体的な曲のイメージを伝えるタイトルはありません。それが普通だったんですね。
 でも、それでは不便だということで、人気の高い曲は愛称で呼ばれるようになりました。現代的な価値観からすると「他人が曲の名前を付けるなんておかしい」と思われるかもしれませんが、愛称とはもともと本人ではなく他人が付けるものだと考えれば、不思議なことではないでしょう。
 辻井さん独自の解釈で愛称を付けるとすれば、「悲愴」ソナタは「怒りと慰め」。第1楽章に怒りや苛立ちがあって、第2楽章では慰めがあり、第3楽章で両方の感情が重なり合うという解説がありました。こんなふうにストーリー性があると、作品がいっそう身近に感じられますよね。「熱情」ソナタは「幻想曲、嵐」。「熱情」という言葉は人間の感情にのみ焦点を当てていますが、「嵐」という言葉からは感情も自然現象も含めたさまざまなイメージが湧いてきます。辻井さんの真摯な演奏から、力強く雄大な音のドラマが伝わってきました。次週の「月光」も楽しみです。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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意外と大変!指揮者の仕事を知る休日

投稿日:2020年08月29日 10:30

指揮者は謎めいた存在です。オーケストラの中心人物のようでいて、実際に指揮台でなにをしているのかはわかりづらいところ。今回は日本の若い世代を代表する3人の指揮者のみなさんに、指揮者の仕事についてお話をうかがいました。とても率直なお話が聞けて、おもしろかったですよね。
 鈴木優人さん、原田慶太楼さん、川瀬賢太郎さんはいずれも30代。指揮者の世界では若手です。かつて指揮者といえば、40代でもまだ駆け出し、50代でも若手、60代でようやく一人前などと言われたものですが、実は近年は若い世代の指揮者が抜擢される傾向にあります。30代でオーケストラの音楽監督や首席指揮者といった責任あるポジションを担う例も増えてきました。優秀な若い才能が次々と現れてきたことに加えて、オーケストラの側でも新しい才能にチャンスを与えようという意識が強まっているのだと思います。
 3人のお話をうかがうと、想像以上に指揮者は演奏中に細かな指示を出していることがわかります。リハーサル中なら言葉で説明することも可能ですが、本番は体を使った指示がすべて。指揮のジェスチャーについての解説がありましたが、あれがちゃんとオーケストラ側に伝わっているのがすごい! 阿吽の呼吸というほかありません。
 原田さんの「朝食2回、昼食2回、夕食2回」というお話にもびっくりしました。特にアメリカのオーケストラの場合、ヨーロッパとは違って自治体等からの公的な支援がないため、お金持ちからの寄付は必須。音楽監督を務める指揮者にとって、支援者たちとの社交は不可欠です。「70%はビジネスマン」とおっしゃるのも納得です。
 どんなに偉い指揮者であっても、雇っているのはオーケストラの側。この点で、野球やサッカーの監督と少し似ています。百戦錬磨の楽員たちから日々評価され続ける立場なのですから、タフな仕事であることはまちがいありません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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意外と難しいハミングの音楽会

投稿日:2020年08月22日 10:30

新型コロナウイルス感染拡大の影響でいったんはあらゆる演奏会がなくなってしまった音楽界ですが、今ではオーケストラの公演が開かれるなど、緩やかに再始動が始まっています。しかし、そんな中でも苦心しているのが合唱団。合唱でいかに飛沫を防ぐのか、さまざまな試みが続いています。
 そこで山田和樹さんが考えたのが、ハミングの活用。唇を閉じて歌うハミングの曲なら歌えるのではないか、というアイディアです。山田和樹さんは数々の名門オーケストラを指揮してきた世界的な指揮者ですが、実は東京混声合唱団の音楽監督も務めています。そんな山田さんならではの発想でした。
 ハミングが部分的に使われる曲はたくさんありますが、ハミングだけでできた曲となると、とても珍しいのではないでしょうか。3人の作曲家に新作が依頼されましたが、それぞれにハミングならではの趣向が凝らされていて、新鮮な味わいがありました。
 上田真樹さんの「Humming Hug」は、鼻歌から発想したというハミング曲。ハミングでは高い音を出すのが難しいと言いますが、そんな制約を感じさせない、自然体の安らぎに満ちた音楽でした。包み込むような柔らかい音が素敵でしたね。
 信長貴富さんの「ハミングのためのエチュード」では、だれもが知る「故郷」のメロディを取り入れることで、情景を思い浮かべやすくなるように工夫されていました。冒頭の信長さんのオリジナル部分からすでにノスタルジックな雰囲気があふれていましたが、「故郷」と重なり合うことで一段とニュアンスの豊かな音楽が生まれていました。
 池辺晋一郎さんは日本を代表する重鎮作曲家。弦楽器で音から音へ滑らかに連続的に移る奏法をポルタメントと言いますが、「ハミングの消息―混声合唱のために」ではそんなポルタメントのような効果が活用されていました。歌詞はありませんが、まるで会話をしているような音のドラマを想起させます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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世界が認めた若き才能の音楽会2020

投稿日:2020年08月15日 10:30

今週は第30回出光音楽賞の受賞者である藤田真央さん、服部百音さん、佐藤晴真さんの演奏をお届けいたしました。出光音楽賞は若手音楽家の登竜門として知られています。例年、東京オペラシティコンサートホールで開催される受賞者ガラコンサートの模様をお届けしていますが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大のため公演を開くことができておりません。そこで3人の受賞者のみなさんをスタジオにお招きして、室内楽を共演していただきました。
 藤田さんが選曲したのは、ラヴェルのピアノ三重奏曲の第4楽章。フランス音楽を選んだのは少し意外な感もありましたが、これは名手3人がそろって弾くにふさわしい傑作でしょう。巧みなオーケストレーションで知られるラヴェルですが、ピアノ、ヴァイオリン、チェロの3人の編成であっても、やはり洗練された色彩感は際立っています。高揚感にあふれた見事な演奏を披露してくれました。
 服部さんが選んだのは、プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第1番の第2楽章。「喜怒哀楽」の「怒」と「哀」が表現された曲にシンパシーを感じるという服部さんにぴったりの選曲でしょう。プロコフィエフは人間のダークサイドに切り込んだ作曲家という印象がありますが、特にこの曲には彼一流の刺々しいユーモアやアイロニーが込められていると思います。服部さんの演奏はニュアンスが豊か。作品の奥行きを一段と感じさせる演奏で、曲が進むにつれて次第に白熱してゆく様子は圧倒的でした。
 佐藤さんは難関として知られるミュンヘン国際音楽コンクールチェロ部門の優勝者。ミュンヘンゆかりの大作曲家、リヒャルト・シュトラウスの「万霊節」を演奏してくれました。万霊節とはキリスト教における死者の霊を祀る記念日。原曲の歌曲では今は亡き愛する人への想いが切々と歌われています。過去を懐かしんでさまざまな思いが交錯する様子が、情感豊かに表現されていました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ピアノ界のスーパースターが20年かけて挑んだ曲を聴く音楽会

投稿日:2020年08月08日 10:30

今週はピアノ界のスーパースター、ラン・ランをお迎えしました。今、ラン・ランが取り組んでいるのは、バッハの難曲「ゴルトベルク変奏曲」。これは演奏家にとって特別な作品です。プロのピアニストでもこの曲をレパートリーに入れている人は決して多くはありません。鈴木優人さんが説明してくださってように、この曲は本来、2段鍵盤のチェンバロのために書かれた作品。バッハの時代にはまだ現代の私たちが知るようなピアノはありませんでしたので、バッハの作品はどれもピアノ用には書かれていません。「ゴルトベルク変奏曲」を現代のピアノでバッハを弾くためには、さまざまな工夫が必要になってきます。
 しかも「ゴルトベルク変奏曲」は大作です。曲は簡潔な「アリア」でスタートします。その後、30曲もの多彩な変奏が続き、最後にまた冒頭の「アリア」が帰ってきます。全曲の演奏時間は50分から100分程度(楽譜上の反復を忠実にするか、省略するかで大幅に長さが違ってきます)。かなり長い曲ですので、リサイタルでは「ゴルトベルク変奏曲」一曲のみでプログラムが組まれていることも珍しくありません。お客さんもこの曲を聴きに来るときは「今日は特別な大作を聴くのだ!」という相当な期待と覚悟をもって集まってきます。最後に「アリア」が戻ってくるときには、まるで旅から帰ってきたかのようなしみじみとした感慨がわき起こります。機会があればぜひ全曲を聴いてみてください。
 バッハはとても古い時代の作品ですが、ヤン・ティルセン作曲の「アメリのワルツ」は現代の名曲です。2001年に大ブームとなったジャン=ピエール・ジュネ監督のフランス映画「アメリ」で用いられました。その後、「アメリのワルツ」はピアノピースとして広く人気を獲得しています。今ではもとの映画は知らないけれど、曲は知っているという方も少なくないのではないでしょうか。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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この音色が欲しかった!ひねりすぎた楽器を楽しむ音楽会

投稿日:2020年08月01日 10:30

今週はひねりすぎた楽器を楽しむ音楽会。次々と珍しい楽器が登場しましたが、どれも予想外の音色が出てくるのがおもしろかったですよね。ミュージカルソー、スプリングドラム、ウォーターフォン、テスラコイル、いずれも不思議な音色がする楽器でした。
 見た目とのギャップが激しいのがミュージカルソー。一見したところは普通のノコギリにしか見えません。いかにも日曜大工風の雰囲気があるのですが、出てくる音は未来的。映画「パラサイト 半地下の家族」でも使われるなど、実は意外なところで耳にしている楽器でもあります。藤田真央さんがチャレンジしてくれましたが、ビブラートを全身でかける姿が楽しそうでした。
 神田佳子さんは現代音楽を中心に活躍する、この分野では知らぬ人のいない打楽器奏者。スプリングドラムといい、ウォーターフォンといい、本当に風変わりな楽器で、いったいどんなきっかけでこのような楽器が発明されたのかと思ってしまいます。スプリングドラムの音は風や嵐を連想させます。宇宙的でもあり、大自然を思わせるところもあって、予想外にドラマティック。ウォーターフォンは形状からして謎めいていますが、出てくる音もミステリアスです。どこか聴く人の気持ちを落ち着かなくするところがあって、なるほど、ホラー映画に使われるのは納得です。
 一方、テスラコイルはもともと楽器として作られたものではありません。発明者のニコラ・テスラはエジソンのライバルともいえる科学者で、磁束密度の単位T(テスラ)にその名を残しています。電気自動車メーカーのテスラも彼の名にちなんだもの。今回のデモンストレーションでは鍵盤と連動させて、稲妻で音程を作れるようにセッティングされていました。こんな活用法があるんですね。
 最後は川島さんがご自身の口で水滴を受ける「滴下の音楽」。これも音楽です。おもしろいと思いませんか。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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知らないことだらけのハープを楽しむ休日

投稿日:2020年07月25日 10:30

知っているようで知らないことだらけの楽器がハープ。一口にハープといっても20種類以上もの楽器があるというのですから驚きます。
 オーケストラで使用されるのはグランドハープ。足のペダルは7本もあります。このペダルのおかげで、半音を自由に出すことができるんですね。優雅なイメージの楽器ですが、足元は大忙し。景山さんがおっしゃっていたように、ハープ奏者はまるで白鳥のよう。優雅に泳ぐ白鳥も水面下では必死に足を動かしている、というわけです。
 現在のグランドハープの原型を開発したのは、19世紀の楽器製作者エラールです。エラールはピアノ製作者として知られていますが、創業者セバスチャン・エラールの甥のピエール・エラールがペダル付きのハープを考案しました。
 19世紀末、もうひとつのピアノ製作者プレイエルが、エラールに対抗して新方式のハープを売り出します。こちらはペダルを活用するのではなく、弦の数を増やして半音を出す方式。プレイエルは新方式の楽器のデモンストレーション用に、ドビュッシーにハープ曲「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」を書いてもらいます。ところがプレイエルの新方式は普及せず、エラールのペダル式ハープが生き残ることになりました。現在ではドビュッシーの曲もペダル式のハープで演奏されています。7本ものペダルを操るのは大変そうですが、これを上回る方式を編み出すのも難しい、ということなのでしょう。
 ケルティックハープではペダルの代わりに手でレバーを操作して半音を出します。松岡さんの演奏を見ていると、右手で曲を奏でながらサッと左手でレバーを操作していて、とてもスムーズ。上松さんのアルパでは、ジャベを弦に押し当てて、半音を出していました。なるほど、楽器に仕組みがなくても、奏者が弦の長さを短くすれば音は高くなるんですね。
 ハープの種類によって、まったく違った工夫が凝らされていることに感心させられます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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高嶋ちさ子のわがまま音楽会~ディズニーのファンタジア編

投稿日:2020年07月18日 10:30

今週はディズニー映画「ファンタジア」の名曲を、高嶋ちさ子さん流のエンタテインメントに仕立ててお届けいたしました。
 1940年、クラシック音楽の名曲にアニメーションが添えられた8つの物語からなる映画「ファンタジア」が公開されました。演奏は往年の大指揮者レオポルド・ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団。芸術性の高い映画を志したウォルト・ディズニーが莫大な製作費と時間をかけて作り上げた伝説的な名作です。
 なかでも有名なのはミッキーマウスが主役を演じる「魔法使いの弟子」。フランスの作曲家デュカスが、ゲーテの原作に触発されて書いた交響詩です。見習いの魔法使いが師の留守の間に、箒に魔法をかけて自分の代わりに水くみの仕事をさせるのですが、水くみを止めさせる呪文がわからずに大騒動になる……といったストーリーが音楽で表現されています。ディズニーはこの見習いの魔法使い役をミッキーマウスに演じさせました。ミッキーのマジシャンぶりに負けじと、本日は音楽家たちがマジックを披露。最後の鳩にはびっくりしましたよね。
 「時の踊り」はポンキエッリ作曲のオペラ「ジョコンダ」に登場するバレエ音楽です。優雅なバレエをあえてカバやゾウのような大型動物に踊らせるところにディズニーの創意があります。アニメーションでなければ表現できない、ユーモアとエレガンスが一体となった動物たちのバレエがくり広げられていました。そのユーモアとエレガンスを高嶋流に再現したのが本日の演奏。またしても江口心一さんによる電動立ち乗り二輪車上でチェロを弾く秘技が炸裂。なめらかな移動とチェロ演奏の合体は、新時代のバレエと呼んでもいいのかも!?
 「ラプソディ・イン・ブルー」や「威風堂々」は2000年に公開された続編「ファンタジア / 2000」で使用されました。「威風堂々」で題材となったのはノアの方舟の物語。石丸さんと武内さんも加わった全員参加のフィナーレで幕を閉じました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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