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知らないことだらけのハープを楽しむ休日

投稿日:2020年07月25日 10:30

知っているようで知らないことだらけの楽器がハープ。一口にハープといっても20種類以上もの楽器があるというのですから驚きます。
 オーケストラで使用されるのはグランドハープ。足のペダルは7本もあります。このペダルのおかげで、半音を自由に出すことができるんですね。優雅なイメージの楽器ですが、足元は大忙し。景山さんがおっしゃっていたように、ハープ奏者はまるで白鳥のよう。優雅に泳ぐ白鳥も水面下では必死に足を動かしている、というわけです。
 現在のグランドハープの原型を開発したのは、19世紀の楽器製作者エラールです。エラールはピアノ製作者として知られていますが、創業者セバスチャン・エラールの甥のピエール・エラールがペダル付きのハープを考案しました。
 19世紀末、もうひとつのピアノ製作者プレイエルが、エラールに対抗して新方式のハープを売り出します。こちらはペダルを活用するのではなく、弦の数を増やして半音を出す方式。プレイエルは新方式の楽器のデモンストレーション用に、ドビュッシーにハープ曲「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」を書いてもらいます。ところがプレイエルの新方式は普及せず、エラールのペダル式ハープが生き残ることになりました。現在ではドビュッシーの曲もペダル式のハープで演奏されています。7本ものペダルを操るのは大変そうですが、これを上回る方式を編み出すのも難しい、ということなのでしょう。
 ケルティックハープではペダルの代わりに手でレバーを操作して半音を出します。松岡さんの演奏を見ていると、右手で曲を奏でながらサッと左手でレバーを操作していて、とてもスムーズ。上松さんのアルパでは、ジャベを弦に押し当てて、半音を出していました。なるほど、楽器に仕組みがなくても、奏者が弦の長さを短くすれば音は高くなるんですね。
 ハープの種類によって、まったく違った工夫が凝らされていることに感心させられます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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高嶋ちさ子のわがまま音楽会~ディズニーのファンタジア編

投稿日:2020年07月18日 10:30

今週はディズニー映画「ファンタジア」の名曲を、高嶋ちさ子さん流のエンタテインメントに仕立ててお届けいたしました。
 1940年、クラシック音楽の名曲にアニメーションが添えられた8つの物語からなる映画「ファンタジア」が公開されました。演奏は往年の大指揮者レオポルド・ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団。芸術性の高い映画を志したウォルト・ディズニーが莫大な製作費と時間をかけて作り上げた伝説的な名作です。
 なかでも有名なのはミッキーマウスが主役を演じる「魔法使いの弟子」。フランスの作曲家デュカスが、ゲーテの原作に触発されて書いた交響詩です。見習いの魔法使いが師の留守の間に、箒に魔法をかけて自分の代わりに水くみの仕事をさせるのですが、水くみを止めさせる呪文がわからずに大騒動になる……といったストーリーが音楽で表現されています。ディズニーはこの見習いの魔法使い役をミッキーマウスに演じさせました。ミッキーのマジシャンぶりに負けじと、本日は音楽家たちがマジックを披露。最後の鳩にはびっくりしましたよね。
 「時の踊り」はポンキエッリ作曲のオペラ「ジョコンダ」に登場するバレエ音楽です。優雅なバレエをあえてカバやゾウのような大型動物に踊らせるところにディズニーの創意があります。アニメーションでなければ表現できない、ユーモアとエレガンスが一体となった動物たちのバレエがくり広げられていました。そのユーモアとエレガンスを高嶋流に再現したのが本日の演奏。またしても江口心一さんによる電動立ち乗り二輪車上でチェロを弾く秘技が炸裂。なめらかな移動とチェロ演奏の合体は、新時代のバレエと呼んでもいいのかも!?
 「ラプソディ・イン・ブルー」や「威風堂々」は2000年に公開された続編「ファンタジア / 2000」で使用されました。「威風堂々」で題材となったのはノアの方舟の物語。石丸さんと武内さんも加わった全員参加のフィナーレで幕を閉じました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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高嶋ちさ子のわがまま音楽会~ディズニーのキャラクターソング編

投稿日:2020年07月11日 10:30

今週は高嶋ちさ子さんがお気に入りという、ディズニー映画に登場するさまざまなキャラクターたちの音楽をお届けしました。ディズニー映画は名曲の宝庫だと改めて感じます。
 おなじみの「ミッキーマウス・マーチ」も弦楽器中心のアンサンブルで聴くとまた違ったテイストに。楽しく陽気なだけではなく、ミッキーマウスに少しエレガントさが加わったようです。
 「ミッキーマウス・マーチ」はだれもが知る曲ですが、作曲者の名前を答えられる人はあまりいないでしょう。作曲者はジミー・ドッド。実はこの人、1955年からアメリカで放送された子供向けテレビ番組「ミッキーマウス・クラブ」の初代司会者です。ミッキーマウスの耳を頭に付けて、子供たちと一緒に歌をうたったりギターを弾いたりしていて、日本風に言えば「歌のお兄さん」のイメージに近いかもしれません。まさか自分が作った「ミッキーマウス・マーチ」が半世紀以上経っても世界中で演奏され続けるとは思ってもみなかったことでしょう。
 「ライオン・キング」ではチェロの西方正輝さんが、なんとトランペットを演奏してくれました。西方さんはチェリストでもありトランぺッターでもあるという稀有な存在。まったく性格の異なる両方の楽器で活躍されています。
 「塔の上のラプンツェル」より「誰にでも夢はある」、「アラジン」より「ホール・ニュー・ワールド」、「リトル・マーメイド」より「アンダー・ザ・シー」の3曲は、いずれもアラン・メンケンの作曲。もともとブロードウェイのミュージカルで活動していたアラン・メンケンを抜擢したことで、ディズニーの音楽は新時代を迎えました。どの曲も音楽の流れが自然で、しかも耳に残る名曲ばかり。「ホール・ニュー・ワールド」では、石丸さんが歌ではなくアルト・サックスで参加するという意外な場面も。サックスのアラジンとヴァイオリンのジャスミンという組合せが新鮮でした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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アンコールのお約束を明かす音楽会

投稿日:2020年07月04日 10:30

知っているようで知らないのがアンコールのお約束。今週は高木綾子さん、宮田大さん、木嶋真優さん、反田恭平さんからアンコールの秘密をうかがいつつ、得意のアンコール曲を披露していただきました。
 宮田さんがおっしゃっていたようにアンコールでは主に「聴きなじみのある曲」が演奏されます。あるいは有名な曲ではなくても、聴きやすい曲が選ばれることがほとんどでしょう。一般に本編のプログラムは、芸術性の観点から挑戦的な曲が選ばれたり、あるテーマに基づいた統一感のある選曲が好まれる傾向にあります。しかし、アンコールは自由です。たとえ本編にお堅い曲が並んでいたとしても、アンコールは気軽に楽しめる曲が優先。それまで緊張感のある集中した雰囲気だった客席が、アンコールになった途端にリラックスした雰囲気に変わることも珍しくありません。
 アンコールで弾く曲数は人によって、あるいは演奏会の性格によってずいぶんちがってきます。木嶋さんは「3曲くらい」。あまりアンコールを弾かないアーティストもいます。本編のおしまいの曲がしみじみした雰囲気で終わる大曲だと、たっぷり余韻を味わってもうらためにあえてアンコールは弾かない、ということもあります。
 一方で、とにかくたくさん弾いてくれる人もいます。ピアニストだとアンドラーシュ・シフやエフゲニー・キーシンなどは、次から次へとたくさん弾いてくれるので、ファンはアンコールを通称で「第3部」などと呼んだりします。つまり前半が第1部、休憩をはさんだ後半が第2部、そしてその後に隠された第3部が待っている……というわけです。
 ちなみにカーテンコールで客席が拍手を続けるのは、なにもアンコールを求めているからとはかぎりません。もうアンコールは必要ない、お腹いっぱいです、でもあなたをもっと拍手で讃えたい。そんな意味の拍手もあります。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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