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旅の思い出の音楽会

投稿日:2016年08月07日 09:30

音楽家と旅は切っても切れない関係にあります。モーツァルトはその生涯の約3分の1を旅先で過ごしたといいます。旅先で人と出会ったり、見聞を広めることが、新たな創作意欲の源泉となっていたことはまちがいありません。
 現代の音楽家にとっても旅は欠かすことのできないもの。人気演奏家ともなれば各地を転々としながら、そこで演奏会に出演することが日常となっています。本日の「旅の思い出の音楽会」では、そんな旅する音楽家たちが、それぞれの思い出の一曲を披露してくれました。
 とりわけ興味深かったのがピアニストの金子三勇士さんのお話です。日本人のお父さんとハンガリー人のお母さんの間に生まれ、6歳から単身でハンガリーに渡り、おばあさんの家に住んだという金子さんは、日本語とハンガリー語、そして英語を使い分けることができます。その金子さんはフランスで聴いたドビュッシーの「月の光」の演奏に、「フランス語の発音のような解釈」を感じたといいます。音楽は言葉の壁を超えて伝わる芸術ではありますが、それでもフランス語を話すから表現できるフランス音楽、ドイツ語を話すから表現できるドイツ音楽、日本語を話すから表現できる日本音楽といった領域が、たしかにあるのでしょう。
 三浦文彰さん本人の演奏で「真田丸」メインテーマを聴けたのも嬉しかったですね。作曲は服部隆之さん。これは名曲だと思います。大河ドラマにヴァイオリン協奏曲スタイルの作品は意外な感もありましたが、ヴァイオリンの鋭く切れ込むような音色は、どこか凛然とたたずむ武士を連想させるようにも感じます。ピアノ伴奏版で聴くと、原曲のオーケストラ版とはまた一味違ったクールな雰囲気があって、新鮮な感動がありました。

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リズム歌謡の音楽会

投稿日:2016年06月26日 09:30

「東京ブギウギ」が発表されたのは昭和22年のこと。自分が生まれるよりもはるかに昔の流行歌です。でも、聴くと知っているんですよね。本日の「リズム歌謡の音楽会」では、エリック・ミヤシロさんの編曲したバージョンでお聴きいただきましたが、古いのに古びていないといいましょうか、とてもカッコいい曲だと感じました。いま昭和歌謡に注目する動きがあるというのもわかるような気がします。
 それにしても「リズム歌謡」の変遷をたどった輪島裕介さんの解説には目からウロコが落ちっぱなしでした。日本でブームを作ったマンボ、カリプソ、ツイスト、ドドンパに、そんな背景があったとは。昭和31年のマンボブームは、ペレス・プラード楽団の来日がきっかけだったといいますから、本場のマンボに触れたおかげだったわけですね。たまたまですが、同じ昭和31年に第1回のイタリア歌劇団来日があり、日本にオペラ文化を定着させる契機となったと言われます。やはり本物との出会いが、新たな文化を生み出すものなのでしょう。
 もうひとつおもしろかったのは、ドドンパが日本で生まれたリズムだという点。マンボはキューバ、カリプソはカリブ、ツイストはアメリカ由来のダンスですが、ドドンパはなんと日本製なんですね。「ドドン、パッ! ドドン、パッ!」というコンガのリズムが、盆踊りに通じているという解説がありましたが、言われてみるとすごく納得できます。マンボとかカリプソはどんなに練習してもサマになりそうにないですが、ドドンパだったらカッコよく踊れるかも! 一瞬、そんな気の迷いを起こしました。
 ところで「マンボNo.5」で知られるペレス・プラードは1916年12月11日に生まれています。つまり、今年生誕100年。もしかすると世界的にマンボ・イヤーになるのではと期待しているのですが、どうなんでしょうね。

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ニュースタンダードの音楽会

投稿日:2016年06月19日 09:30

ポピュラー音楽の世界で使われる用語に「スタンダード」という言葉があります。辞書をひくと「恒久的なレパートリーとして広く親しまれる名曲のこと、特にポピュラー・ソングで使われる」といった説明が乗っています。ジャズでいえば「A列車で行こう」とか「枯葉」「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」といった曲名がまっさきに挙がるでしょうか。
 本日の「ニュースタンダードの音楽会」では、新しいスタンダード、つまり70年代から80年代の洋楽ヒットナンバーを最新のアレンジでお聴きいただきました。マイケル・ジャクソンやプリンスのヒットナンバーもすでに30年の時を経ているのですから、もはや「スタンダード」になっているんですね。
 時代を代表するヒット・ナンバーがスタンダードになるということは、いいかえれば本人以外のアーティストたちによって演奏され続けているということ。だれかが楽曲に新しい命を吹き込まなければ、「スタンダード」は誕生しません。今回は時代の最先端を行くアレンジャーたちが、「今のマイケル・ジャクソン」や「今のプリンス」を聴かせてくれました。「ビート・イット」がゴージャスに生まれ変わっていたり、「パープル・レイン」に繊細で抒情的な彩りが添えられていたり……。懐かしくて、しかも新鮮であるというのが、「ニュースタンダード」を聴く楽しさでしょうか。
 エリック・ミヤシロ EMバンドの演奏もカッコよかったですね。あのスカッと抜けるようなトランペットの高音はどうやったら出せるんでしょう。サックスやトロンボーン、ハーモニカなど、ソロの聴きどころも満載でした。
 同じ曲をいろんなアーティストがくりかえし演奏して、スタンダードになる。このプロセスはクラシック音楽が生まれるプロセスとまったく同じです。今スタンダードと呼ばれる名曲が、さらにあと100年演奏され続けると、クラシックと呼ばれるようになるのかもしれません。

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