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変幻自在な作曲家サン=サーンスの音楽会

投稿日:2018年08月11日 10:30

今週はフランスの作曲家サン=サーンスのバラエティに富んだ名曲をお楽しみいただきました。のびやかなメロディが心地よい「白鳥」から、エキゾチックな「バッカナール」まで、サン=サーンスの多面的な魅力が伝わったのではないでしょうか。
 たいていの大作曲家は幼少時から並外れた楽才を示すものですが、3歳で作曲したというサン=サーンスの神童ぶりは際立っています。わずか10歳でピアノ協奏曲を演奏してデビューを果たし、アンコールには「ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲のうちからどれでも一曲を暗譜で演奏しましょう」と申し出たといいます。少しイヤミなくらいの才能ですよね。
 これだけ才能に恵まれていたのですから、サン=サーンスがフランスの音楽界をリードする存在になったのは必然です。当時、フランスで交響曲や協奏曲といえば、もっぱらベートーヴェンなどドイツ音楽が演奏されていたのに対し、サン=サーンスは自ら交響曲や協奏曲を書いて、この分野にフランスの伝統を築きあげました。交響曲第3番「オルガン付き」を聴いた作曲家グノーは、サン=サーンスを「フランスのベートーヴェン」と呼びました。
 幼い頃から神童と騒がれたのはモーツァルトと同じですが、サン=サーンスとモーツァルトには一点、大きな違いがあります。モーツァルトは35歳で人生を終えたのに対して、サン=サーンスは86歳まで長生きをしました。
 おかげで、若い頃は時代をリードする存在だったサン=サーンスも、晩年には保守派の代表とみなされるようになります。サン=サーンス自身、若い世代の音楽には共感できなかったようで、新時代の旗手ドビュッシーを敵視したり、ストラヴィンスキーの「春の祭典」の初演に立ち会って作品を酷評したり。天才の割に神格化されなかったのは、そんな晩年のふるまいが影響したのかもしれません。

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指揮者が愛する「新世界より」の音楽会

投稿日:2018年08月04日 10:30

今週は気鋭の若手指揮者、川瀬賢太郎さんの大切な一曲、ドヴォルザークの「新世界より」をお届けいたしました。
 新世界、すなわちアメリカへとドヴォルザークが旅立ったのは1892年のこと。アメリカにも本格的な音楽院が必要だと考えた富豪の夫人ジャネット・サーバーが、ニューヨークに音楽院を設立し、その院長にドヴォルザークを招いたのです。当初、ドヴォルザークはこの話には乗り気ではなかったようです。しかし、サーバー夫人が破格の報酬を申し出たこともあり、交渉を重ねた末にドヴォルザークはアメリカ行きを決意しました。
 なにしろ19世紀のことですので、現代のようにジェット機で飛んでいくことはできません。ヨーロッパからアメリカへ、船で12日間を要する船旅でした。
 アメリカに渡ったドヴォルザークは、黒人霊歌や先住民の音楽に出会い、大きな関心を寄せました。そんな音楽的な刺激から誕生したのが「新世界より」。第2楽章のノスタルジックなメロディはよく知られています。まるで民謡のように自然で滑らかなメロディですよね。これがアメリカ風と言われればそんな気もしますし、一方でドヴォルザークの故郷であるチェコ風と言われればそうなのかなとも思えます。日本では「遠き山に日は落ちて」(家路)といった歌詞で唱歌として愛唱されているように、日本語ともよくなじみます。アメリカでもGoin’ Homeの題で歌詞付きで出版されています。望郷の音楽というものは全世界共通なのかも?
 ドヴォルザークは鉄道マニアとしても知られていました。蒸気機関車に魅せられて、駅を訪ねてはその様子を何時間も眺めたり、列車の時刻表や運転手の名前まで暗記していたといいます。川瀬さんが第4楽章冒頭を蒸気機関車が発進する音楽とおっしゃっていましたが、これには納得。徐々にスピード感を増していく様子が実にスリリングです。当時の最新テクノロジーへの憧れが反映されているのでしょうか。

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高嶋ちさ子と7人のチェリストの音楽会

投稿日:2018年07月28日 10:30

今週はヴァイオリニストの高嶋ちさ子さんとスーパーチェロ7のみなさんにご登場いただきました。独奏ヴァイオリンとチェロ・アンサンブルという組合せは珍しいですよね。
 高嶋さんがチェロを「万能楽器」を呼んでいたように、チェロは一人で何役もできてしまう楽器です。あるときはソリストとして主役になり、あるときは低音楽器として縁の下の力持ちにもなれます。幅広い音域を生かして朗々とメロディを歌い上げるのもチェロの魅力なら、オーケストラでコントラバスとともにブン!と唸るような重低音を聴かせるのもチェロの魅力。
 チェロ・アンサンブルという演奏形態が成立するのも、万能楽器だからこそ。普通は同じ楽器のみでアンサンブルを組むことはめったにありませんが、チェロであれば無理なく同種楽器で役割分担ができてしまいます。「ベルリン・フィルの12人のチェリストたち」のようにチェロだけで多彩な音楽を演奏する人気アンサンブルも存在します。
 スーパーチェロ7は、東京都交響楽団首席チェロ奏者古川展生さんを中心に、日本のトップレベルで活躍するチェロ奏者たちによるアンサンブルです。名手ぞろいとあって、超絶技巧もお手のもの。小林幸太郎さんがワンボウ・スタッカートを披露してくれましたが、実に鮮やかでした。あまりに軽々と弾いてしまうので、なにが難しいのかわからないほど。でも音楽のテクニックとは本来そうあるべきですよね。江口心一さんはリムスキー=コルサコフの「熊蜂の飛行」を速弾きしてくれました。この曲、もともとはオペラのなかの一場面で登場する曲で、速弾きのための曲というわけではないのですが、熊蜂の羽音の描写がコミカルなこともあって、よくヴァイオリンの速弾きなどで用いられるようになりました。しかし、この曲をチェロで速弾きする人がいるとは! まるで熊蜂がヒュンヒュンと超高速で飛び回っているかのようでした。

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クラシックの音楽祭を知る休日

投稿日:2018年07月21日 10:30

クラシック音楽の世界にもスポーツ界などと同じように「シーズン」という考え方があります。ヨーロッパの伝統に従って、秋から春までがレギュラー・シーズンで、夏はシーズンオフという区切り方が一般的。では、夏はコンサートがないのかといえばそうではなく、この期間に各地で音楽祭が盛んに開かれます。夏は都会の喧騒を離れて、豊かな自然に囲まれた土地で開放的な気分で音楽に浸ろうという発想です。
 ただし、近年は大都市で開くタイプの音楽祭もたくさんありますし、「ラ・フォル・ジュルネ」のようにあえて夏以外の季節に開催する音楽祭も増えています。日本でも番組内でご紹介したように、実に多彩な音楽祭が開かれるようになりました。
 音楽祭での公演はコンサートホールで開かれるとは限りません。ときには野外だったり、お寺だったり、日本家屋だったり、美術館だったりと、さまざまな場所が活用されています。大都市以外でも集中的にコンサートを開くとなれば、いろいろな会場が使われることになります。そんないつもとは違った環境も音楽祭の魅力のひとつといえるでしょう。
 また、音楽祭では普段のシーズンではなかなか聴けないような珍しいレパートリー、貴重なアーティストの共演、意欲的な企画に出会うことができます。吉野直子さんが武生国際音楽祭で即興演奏と生け花のコラボレーションに挑んだといったお話がありましたが、音楽と他のアートを組み合わせるような試みも盛んに行われています。
 夏の音楽祭は旅行と組み合わせて楽しむこともできます。たとえばセイジ・オザワ松本フェスティバルだったら、コンサートのついでに評判のお蕎麦屋さんに立ち寄ったり、松本市美術館に行ったり。日程が合えばサッカーの松本山雅FCの試合を観戦するのも一手。大人の夏休みを存分に満喫することができるでしょう。

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王道のピアノ協奏曲に熱くなる音楽会

投稿日:2018年07月14日 10:30

今週は1990年モスクワ生まれの気鋭のピアニスト、ルーカス・ゲニューシャスの独奏で、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番をお聴きいただきました。
 ゲニューシャスはこれまでにたびたび来日公演を行なっておりますので、日本の聴衆にとってはなじみのあるピアニストです。今年開催されたラ・フォル・ジュルネTOKYO2018では、ショパンのピアノ協奏曲第1番やピアノ・ソナタ第3番、ヒンデミットの「ルードゥス・トナリス」といった曲を披露してくれました。
 ゲニューシャスの魅力は、なんといっても磨き抜かれたテクニック。ショパン・コンクールとチャイコフスキー・コンクールという二大コンクールで2位入賞を果たしただけあって、技巧を技巧と感じさせないような洗練された技術の持ち主だと思います。パワーも十分でオーケストラと共演しても聴き映えがしますが、決して自己顕示欲の強い演奏ではなく、作品の本質に迫ろうとする姿勢が伝わってきます。今回のチャイコフスキーも、改めて作品の雄大さや情感の豊かさに気づかせてくれるような秀演だったのではないでしょうか。
 ゲニューシャスのおもしろいところは、チャイコフスキーやショパン、ベートーヴェンといった中心的なレパートリーに取り組む一方で、ヒンデミットの「ルードゥス・トナリス」を十八番にしていたり、現代作曲家のデシャトニコフの作品を広めることに尽力したりといったように、レパートリーに対して強い探求心を持っている点です。お祖母さんが名教師ヴェーラ・ゴルノスターエワということで、音楽一家出身のサラブレッドという印象が強いのですが、活動ぶりは決して保守的ではありません。
 ちなみにラ・フォル・ジュルネでヒンデミットを演奏した際、ゲニューシャスは譜面台にタブレットPCを置いて、フットスイッチで楽譜をめくりながら演奏していました。このあたりは若い世代ならではですね。

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世界を魅了するイル・ディーヴォの音楽会

投稿日:2018年07月07日 10:30

今週は世界的なスーパースター、イル・ディーヴォのみなさんをお招きしました。イル・ディーヴォは2004年のデビュー以来、全世界で3000万枚以上のアルバムセールスを記録した男声ヴォーカル・グループ。日本での人気もすさまじく、客席には歓声が盛んに飛び交い、普段の収録とは会場の雰囲気がずいぶん違っていました。格調高い東京オペラシティ・コンサートホールの空間に、いっそうの華やかさが加わったように感じます。
 イル・ディーヴォの4人の声が調和して生み出す輝かしさ、情感の豊かさは他に類を見ないものだと思います。そして、4人それぞれが異なる声のキャラクターを持っているところも大きな特徴といえるでしょう。デイヴィッドの軽やかで伸びのある高音、カルロスの深みのある力強いバリトン、セバスチャンの表現力豊かで甘い声質、ウルスのリリカルで端整な歌唱スタイル。それぞれのソロの部分も大変聴きごたえがあります。
 イル・ディーヴォのようなオペラ的な歌唱をベースとした男声ヴォーカル・グループの先駆けとなったのは、1990年のワールドカップ・イタリア大会を機に結成された三大テノールだと思います。プラシド・ドミンゴ、ルチアーノ・パヴァロッティ、ホセ・カレーラスというオペラ界のビッグスターが一堂に会してコンサートを開くという革新的なアイディアは、音楽界に大きな驚きをもたらしました。本来オペラにはテノールの三重唱などという場面はめったにありませんが、彼らは男声ソリストによる重唱がどれほどゴージャスでリッチな響きを生み出すかを教えてくれました。イル・ディーヴォはそんな三大テノールを、よりポップな傾向に発展させたアンサンブル重視のヴォーカル・グループだと言えるでしょう。
 それにしても、石丸さんとイル・ディーヴォの共演が実現するとは! あまりにも違和感がなさすぎてびっくりしました。

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若い民謡の音楽会

投稿日:2018年06月30日 10:30

いつの間にか子供たちの間ですっかりポピュラーな存在になっているのがソーラン節。ご存知でしたか。小中学校の体育祭や保育園や幼稚園の発表会で、子供たちがそろってソーラン節を踊る姿を見かけるようになりました。
 自分が子供の頃にはソーラン節というのは大人の世界の民謡で、まったくなじみのある曲ではなかったのですが、今やソーラン節は大人気。伊藤多喜雄さんが歌うロック調にアレンジされたソーラン節が、現代風の振付で踊られるようになりました。テレビドラマ「金八先生」をきっかけに全国の体育祭に広まったというのですが、そんな経緯があったんですね。
 番組中で伊藤多喜雄さんがオリジナルのソーラン節を少しだけ歌ってくれた場面がありました。「民謡は変化していくもの」という伊藤さんの言葉には納得。長く歌い継がれる曲って、時代に応じて変化してゆくからずっと古びないんでしょうね。クラシック音楽の世界でもそうですが、民謡をアレンジして時代を超越した新しい名曲が生まれることは決して珍しくはありません。たとえばブラームスの作曲として知られるハンガリー舞曲は、ロマ(ジプシー)の音楽を、編曲した作品です。バルトークやヤナーチェクをはじめ、多くの作曲家が民謡に題材を求めて、次代に残る名曲を書き上げています。
 伊藤多喜雄さんのソーラン節以外の民謡もとても新鮮でした。秋田音頭とラップがあんなに相性のよいものだったとは。なんの無理もなく民謡とラップが共存していました。
 山形県の民謡、最上川舟唄はクラシック調アレンジ。クラシックにもショパンやメンデルスゾーンのように舟歌を書いている作曲家はたくさんいますが、こちらは和風です。リズミカルに前へ進むというよりは、ゆったりとした広大な流れをたゆたうようなイメージがありました。

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一瞬で心をつかむ作曲家チャイコフスキーの音楽会

投稿日:2018年06月23日 10:30

チャイコフスキーの音楽には聴く人を一瞬でぐっと引き込む魅力があります。思わず口ずさみたくなるようなメロディにあふれていて、親しみやすい、でもなんど聴いても飽きない味わい深さがある。それがチャイコフスキーの魅力ではないでしょうか。
 「弦楽セレナード」はかつて人材派遣会社のCMで使用されたことがきっかけで、一躍広く知られることになりました。終生に渡ってモーツァルトのことを敬愛していたチャイコフスキーは、この「弦楽セレナード」でモーツァルトの精神に立ち帰ろうとしたといいます。「セレナード」とは、本来は夜に戸外で恋人のために演奏される曲のことを指していましたが、モーツァルト時代にはすでに本来の意味は薄れ、多楽章からなる小編成の器楽曲を指すようになりました。たとえば、モーツァルトが書いたもっとも有名な曲のひとつ、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」も弦楽器のためのセレナードです。チャイコフスキーの「弦楽セレナード」は、そんなモーツァルト的なスタイル、つまり曲の枠組みを借りてきて、その中にチャイコフスキー流の抒情的な楽想を注ぎ込んだ名曲です。
 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲も名曲です。辻彩奈さんのスケールの大きなソロがすばらしかったですよね。コンサートでよく演奏されるヴァイオリン協奏曲といえば、チャイコフスキー、ブラームス、メンデルスゾーン、ベートーヴェンが「四強」でしょう。
 偶然ですが、チャイコフスキーとブラームスのヴァイオリン協奏曲は同じ1878年に書かれています。わずか一年の間に歴史に残るヴァイオリン協奏曲が2曲も誕生しているとは。もっとも、チャイコフスキーはブラームスの作品を評価せず、「並の人間が天才として認められている」と手厳しい言葉を残しています。モーツァルトに対する絶対的な尊敬とは対照的。同時代の作曲家への評価とは難しいものなのでしょう。

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先読みの天才・ヘンデルの音楽会

投稿日:2018年06月16日 10:30

今回は今年生誕333年を迎えたバロック音楽の大作曲家ヘンデルの音楽をお届けいたしました。
 ヘンデルが生まれたのは1685年。実は同じ年にバッハとスカルラッティが生まれています。3人そろって生誕333年ということになるのですが、同じ年にこれだけの才能が集中して誕生したことに驚きます。
 ヘンデルはバッハとは対照的な作風の作曲家です。鈴木優人さんが「バッハは教会の作曲家、ヘンデルは劇場の作曲家」とおっしゃっていたように、ヘンデルは劇場文化が花開いたロンドンで、大きな成功を収めました。1710年にロンドンに渡ると、オペラ「リナルド」で大好評を博し、以来約50年にもわたってオペラやオラトリオを中心とした作曲活動をくりひろげました。
 オラトリオという言葉にはあまりなじみがないかもしれません。オラトリオはオペラとよく似ています。ストーリーに沿って音楽が進み、歌手や合唱とオーケストラが共演します。ただし、オペラのように歌手が演技することはありません。舞台装置もありません。一見、オペラに比べると地味に見えるかもしれませんが、ヘンデルはオペラブームが下火になるとオラトリオを精力的に作曲して、ふたたび人気を獲得しました。オラトリオでは、聖書にもとづく物語など宗教的な題材が選ばれることが多く、また言葉もオペラのようなイタリア語ではなく英語で歌われたことから、ロンドンの中産階級の支持を得たと言われています。娯楽性に「教化」という要素が結び付いたのがよかったんでしょうね。
 ヘンデルはたくさんのオラトリオを書きましたが、いちばん有名なのは「メサイア」でしょう。聴きどころ「ハレルヤ」コーラスがもたらす高揚感は圧倒的。曲を聴いてジョージ1世が立ち上がったというエピソードが有名ですが、王ならずとも思わず立ち上がりたくなるような輝かしさでした。

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三浦文彰と辻井伸行の音楽会

投稿日:2018年06月09日 10:30

今週は三浦文彰さんと辻井伸行さんのおふたりにフランクの名曲、ヴァイオリン・ソナタを演奏していただきました。
 フランクはベルギー生まれのフランスの作曲家です。フランスの作曲家というと、多くの方はドビュッシーやラヴェル、あるいはサティといった作曲家を最初に思い出すかもしれません。繊細で洗練されていて、色彩感が豊かで、機知に富んだ音楽。フランス音楽にはそんなイメージがあるでしょうか。
 しかし、フランクの作風は違います。バッハやベートーヴェンなど、ドイツ音楽を敬愛したフランクの音楽には、力強い構築感や求道的な性格が感じられます。もともとオルガニストの出身で、パリ音楽院でオルガン科教授を務めていたという経歴も作風に反映されているかもしれません。
 今回のヴァイオリン・ソナタは、交響曲ニ短調と並ぶフランクの代表作。この曲ではヴァイオリンとピアノの間での掛け合いが聴きどころです。第1楽章について、辻井さんは「月を見ながら散歩している」、三浦さんは「恋人同士の会話」と表現していたのがおもしろかったですよね。三浦さんは、続く第2楽章で恋人たちはやがてケンカをして、でも終楽章では仲直りをするといったイメージを披露してくれました。こういったストーリーを思い浮かべると、曲に親しみがわきます。
 フランクは大作曲家たちのなかでは、例外的に遅咲きの作曲家です。存命中のフランクは作曲家というよりは、主にオルガニストとして名声を得ていました。ところが晩年の10年間に、ヴァイオリン・ソナタ、交響曲、交響的変奏曲、「前奏曲、コラールとフーガ」などの重要作品を次々と発表します。現在演奏される彼の主要作の多くは、60代になって生まれた作品なのです。ヴァイオリン・ソナタの濃密なロマンや官能性、輝かしい高揚感には、枯れた感じがまったくありません。作品の隅々まで気力がみなぎっています。

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