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ヴァイオリンの名曲を奏でる音楽会

投稿日:2017年01月22日 09:30

今週は「ヴァイオリンの名曲を奏でる音楽会」。五嶋龍さんと名演奏家たちによる共演で、多彩な名曲をお聴きいただきました。世界最高峰のヴァイオリニスト、マキシム・ヴェンゲーロフ、2000年のショパン国際ピアノ・コンクールを最年少で制したユンディ・リ、実は龍さんが幼かった頃からの仲だった葉加瀬太郎さん、そして今世界が注目する若きマエストロ、アンドレア・バッティストーニとのフレッシュな共演。いずれ劣らぬ名場面がそろっていました。
 本日の4曲中、最初の3曲はいずれもヴァイオリニストが生んだ名曲だといえるかと思います。ヴィエニャフスキは19世紀を代表するヴィルトゥオーゾ。作曲家である以上に、演奏家として名声を獲得していました。その演奏は完璧な技巧と温かく豊かな音色を持ち、燃えるような熱情を兼ね備えていたと伝えられます。奏者の技巧を際立たせる「2台のヴァイオリンのための奇想曲」は、そんな名演奏家ならではの発想で書かれた作品といえるかもしれません。
 ショパンのノクターン第20番遺作は、本来はピアノ・ソロで演奏される曲ですが、往年の大ヴァイオリニスト、ナタン・ミルシテインがこの曲をヴァイオリンとピアノのために編曲しました。ショパンはヴァイオリンのために曲を書いていません。しかしヴァイオリニストもショパンの曲を弾きたい、ということなのでしょう。やはり、これもヴァイオリニストが生んだ作品です。
 「名演奏家が自作を演奏し、新たな名曲を世に広める」という点では、葉加瀬太郎さんもヴィエニャフスキと同じ。「情熱大陸」は、現代に誕生した新たな名曲です。
 最後に演奏されたのはプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番。プロコフィエフはヴァイオリニストではなく、卓越したピアニストでした。龍さんが「ヴァイオリンのアクセントがスムーズでなく打楽器的」と述べた箇所がありましたが、そういえばプロコフィエフのピアノ作品には楽器を打楽器的に扱う場面が数多く見られます。ピアニスト的な発想がヴァイオリン協奏曲にも活かされているのかもしれませんね。

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難しいピアノ曲を弾く音楽家たち

投稿日:2017年01月15日 09:30

福間洸太朗さんと森下唯さん、おふたりとも唖然とするようなテクニックを披露してくれました。今週は「難しいピアノ曲を弾く音楽家たち」。高度な技術を持つ名人演奏家のことを「ヴィルトゥオーソ」と呼びますが、まさにふたりは若きヴィルトゥオーソ。番組内ではカジュアルな装いで登場して、バリバリと難曲を弾いてくれました。ステージ上とはまた違ったカッコよさがありましたよね。
 福間さんが弾いたストラヴィンスキー作曲、アゴスティ編曲の「火の鳥」より「凶悪の踊り」では、オーケストラのために書かれた原曲の持つ色彩感をどうピアノで表現するのかが難しいという話がありました。ピアニストはそこまで考えて演奏しているんですね。鍵盤上で広い音域を手が高速移動するところも鮮やかです。超絶技巧なのですが、あまりに当たり前にできていて簡単そうに錯覚してしまうというか……。それにしてもこの曲、演奏効果が抜群です。リサイタルで演奏すれば、客席がもりあがることは確実でしょう。
 森下唯さんはアルカンの「鉄道」を演奏してくれました。アルカンは決して一般になじみ深い作曲家とはいえないでしょうが、森下さんはアルカン作品の紹介に力を入れており、リサイタルやレコーディングに加え、アルカンの楽譜の校訂・解説なども行っています。
 この「鉄道」からは、とてつもないスピード感が伝わってきます。19世紀の曲ですので、鉄道といっても蒸気機関車なのでしょうが、今のわたしたちにとっては新幹線、いや、リニアモーターカーくらいの強烈さです。見知らぬ土地へと連れて行ってくれるようなワクワク感を感じませんでしたか。窓の外を風景が流れていったり、汽笛が鳴ったり。技巧は技巧そのものを目的としているのではなく、表現のためにあるだということも納得できます。この速度で演奏するからこそ、最新テクノロジーを目の当たりにした人々の驚きが表現できるのでしょう。

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テーマ曲の秘密を知る音楽会

投稿日:2017年01月08日 09:30

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 新年第1回目の放送は「テーマ曲の秘密を知る音楽会」。映画「君の名は。」の新海誠監督、ドラマ「ドクターX」の作曲家・沢田完さんから、ヒット作のテーマ曲にある背景について、お話をうかがうことができました。
 「ドクターX」といえば口笛が印象的ですが、沢田さんによればこのテーマ曲は「西部劇やマカロニウエスタンの雰囲気」。これには納得。本来かけ離れたものである医療ドラマと西部劇を結び付けたところが斬新です。「ロッキーのテーマのように、同じテーマを反復することでチャレンジする気持ちを表現できる」というお話も、おもしろかったですよね。クラシック音楽の名曲でいえば、ラヴェルの「ボレロ」でもやはり反復が高揚感をもたらしていると思います。シンプルであるがゆえの力強さといえるでしょうか。
 新海誠監督のお話で驚いたのは、映画「君の名は。」における音楽の重要性。できあがったストーリーに音楽が添えられるのではなく、監督とRADWIMPSの野田洋次郎さんとの対話を通じて音楽が作られ、ときには音楽が物語やセリフにも影響を与えたといいますから、いかに監督が音楽の持つ力を重視しているかがうかがえます。
 最後は同じ物語から日米で異なる種類の音楽が生まれてきた例として、「七人の侍」と「荒野の七人」のテーマ曲が演奏されました。前者は登場人物の心理を、後者は情景を音楽で表現したものということでしたが、心理と情景のどちらに焦点を当てるかというのは、広くテーマ曲一般について語りうる話題だと思います。たとえばオペラの序曲だったらどうでしょう。モーツァルトの「フィガロの結婚」では登場人物のハッピーな気分が反映されているけど、ロッシーニの「ウィリアム・テル」は情景描写がベースになっているな……などと、ついあれこれ考えてしまいます。

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くるみ割り人形の音楽会

投稿日:2016年12月25日 09:30

「くるみ割り人形」の「花のワルツ」って、本当にすばらしい名曲ですよね。これほど高揚感にあふれたワルツはほかにありません。
 チャイコフスキーはこのバレエのために、惜しみなく名曲を注ぎこみました。一作のなかに信じられないほどの密度で名曲が詰め込まれているという点で、バレエの「くるみ割り人形」はオペラの「カルメン」と双璧をなしているのではないでしょうか。
 この「くるみ割り人形」、曲が有名な割には、意外とストーリーは知られていないような気がします。りりしい王子様に姿を変えたくるみ割り人形が、少女クララをお菓子の国へと招きます。お菓子の精たちに歓待されるクララ。で、この話はどう終わるのでしょうか?
 結末はあいまいです。バレエにはセリフがありませんので、振付によっていろいろな解釈が可能です。クララが夢から覚めるという「夢オチ」がひとつの基本形となっているでしょうか。素敵な王子様もお菓子の国もみんな少女の夢だった。夢から覚めたら、ベッドのそばにいたのは元通りのくるみ割り人形……。
 「くるみ割り人形」の物語の元となっているのはE.T.A.ホフマンのメルヘン「くるみ割り人形とねずみの王様」です。原作の結末は単なる「夢オチ」では終わりません。主人公(バレエではクララですが、原作ではマリーといいます)が目を覚まして、お菓子の国から現実に戻るのですが、そこからまだ話が続くのです。ドロッセルマイヤーさんが甥の青年を連れてきます。この青年は主人公とふたりきりになると、自分が助けてもらったくるみ割り人形だと告げて、少女を花嫁にして旅立っていくのです。
 この原作でもやはり結末はあいまいです。少女が本当に結婚したとも解せますし、夢の続きを見ていたとも読めます。いずれにせよ解釈のひとつとして、「少女が育ってやがて親元を離れていく」という含意を読み取ることは可能でしょう。なかなか味わい深い物語だと思います。

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バッハの時代の楽器で聴く音楽会

投稿日:2016年12月18日 09:30

今週は「バッハの時代の楽器で聴く音楽会」。バッハが生きていた頃の楽器と奏法を用いた演奏はいかがでしたか。バッハの作品は本当はこんな響きで演奏されていたんですね。
 こういった作曲当時の演奏スタイルを現代によみがえらせようというアプローチは、決して特殊なものでも珍しいものでもありません。1980年代から90年代頃にかけてぐっと注目度が高まり、さまざまな演奏団体が結成されたり、活発なレコーディングが行なわれるようになりました。
 そんな古楽の演奏団体で日本を代表するのがバッハ・コレギウム・ジャパン。鈴木雅明さん(本日出演した鈴木優人さんのお父さんです)によって設立され、スウェーデンのレーベルから何十枚ものCDをリリースして多くの賞を受賞するなど、国際的に高い評価を獲得しています。海外公演も盛んに行っています。日本の演奏団体がバッハの演奏でヨーロッパで評判を呼ぶなんて、本当にすごいことですよね。
 楽器の違いについてさまざまな説明がありましたが、現代の楽器といちばん違うのはチェンバロでしょうか。よく「ピアノの前身」と説明されるのですが、その音色はピアノとは似ても似つきません。なにしろ発音原理からして違います。弦をハンマーで叩いて発音するピアノに対し、チェンバロは弦をはじく撥弦鍵盤楽器。「ゴルトベルク変奏曲」や「インヴェンションとシンフォニア」「イタリア協奏曲」等々、バッハの名曲は現在ピアノで広く演奏されていますが、モダンピアノのサウンドはバッハが抱いていた音のイメージとはずいぶん違っていることになります。
 バロック時代に盛んに用いられたチェンバロは、18世紀末にピアノに取って代わられ、いったん歴史の表舞台からは消え去ります。しかしチェンバロにはチェンバロだけが持つ美質があります。20世紀後半からチェンバロの復興が始まり、古楽演奏に欠かせない楽器となりました。その意味では、チェンバロは古くて新しい楽器ともいえるでしょう。

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女性指揮者の音楽会

投稿日:2016年12月11日 09:30

三ツ橋敬子さんの指揮ぶり、すてきでしたよね。オーケストラの指揮者といえば、かつては男性だけの職業のように思われていたかもしれませんが、それも今や過去の話になりつつあります。三ツ橋さんをはじめ、オーケストラの指揮台に女性が立つことはそれほど珍しいことではなくなってきました。世界を見渡してみても、ベルリン・フィルにたびたび客演するエマニュエル・アイムをはじめ、スザンナ・マルッキ、シモーネ・ヤング、アロンドラ・デ・ラ・パーラなど、数多くの女性指揮者が活躍しています。
 歴史的にいえば、クラシック音楽の世界は長らく男性中心の社会でした。たとえば、教科書に載るような大作曲家は男性ばかり。女性作曲家はどこにいるのでしょう?
 その先駆けとしてしばしば名前が挙げられるのがクララ・シューマンです。大作曲家ロベルト・シューマンの奥さんですね。クララは少女時代より、天才ピアニストとしてヨーロッパで名声を獲得していました。ロベルトと交際している時点では、クララのほうがずっと有名人でしたので、父フリードリヒ・ヴィークはふたりの結婚に猛反対しました。「そんなどこの馬の骨ともわからん男に娘はやれん!」ということなんでしょう。激しい法廷闘争まで経た末に、ようやくクララとロベルトは結婚にたどり着きました。
 しかし、そんなクララも作曲家として大成することはできませんでした。作品を書いてはみたものの、まだまだ社会に女性作曲家を受け入れる土壌がなかったといえるでしょうか。
 クララ・シューマンのほかにも、本日ご紹介したリリ・ブーランジェなど、歴史に名を残した女性作曲家は少ないながらも存在します。今後、彼女たちの埋もれた作品に光が当たることもあるかも……。
 もちろん、現代では女性作曲家はまったく珍しくはありません。いまクララ・シューマンが生きていたら、思う存分、作曲の才を発揮していたことでしょう。

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フィギュアスケートの音楽会

投稿日:2016年12月04日 09:30

フィギュアスケートの美しい演技に欠かせないのが音楽。今週は「フィギュアスケートの音楽会」をお届けいたしました。
 本来、フィギュアスケートでは録音された音楽に合わせて選手たちが演技をするわけですが、番組内ではその逆、つまり選手たちの演技に合わせてライブで音楽家たちが曲を演奏しました。これは新鮮ですよね。音楽の持つ力が一段と伝わってきました。
 フィギュアスケートで人気のある作曲家といえば、ピアソラやファリャ、プッチーニ、ラフマニノフ、チャイコフスキー等々。リズミカルで躍動感のある曲や、ロマンティックで抒情的な曲、民族的な色彩の豊かな曲が好まれるようです。演技用に原曲をカットしたり、複数の曲をつなぎ合わせることもしばしば。ときどき、どうしてそこをつなぐんだろう?と不思議に感じることもあったのですが、荒川静香さんのお話を聞いて、競技者の視点から見た滑りやすい編集がありうるのだなと思い至りました。
 トリノ・オリンピックで「トゥーランドット」を用いた荒川静香さんの演技を見ると、あのときの感動がよみがえってきます。プッチーニ作曲のオペラ「トゥーランドット」の名アリア「だれも寝てはならぬ」は、荒川さんの金メダルをきっかけに、あっという間にだれもが知る名曲の仲間入りを果たしました。もともとこの曲は、ワールドカップの前夜祭で三大テノールが歌うなど、スポーツシーンで親しまれていた名曲なのですが、日本で爆発的に広まったのは荒川さんのおかげです。
 余談ですが、この「だれも寝てはならぬ」は、意外な後日譚があります。オリンピックで使用された録音でヴァイオリンを弾いてたのは、ヴァネッサ・メイというシンガポール生まれの女流奏者。ジャンルを超えた幅広い活動で一世を風靡しました。驚いたのは2014年のソチ・オリンピックのこと。なんと、ヴァネッサ・メイはアルペンスキーのタイ代表選手として大会に出場したのです! 世界的に名の知られたヴァイオリニストがオリンピック選手になるなんて、もう二度とないことでしょうね。

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弦楽四重奏と音楽家たち

投稿日:2016年11月27日 09:30

今週のテーマは「弦楽四重奏と音楽家たち」。アンサンブルの基本ともいうべき弦楽四重奏の魅力をお伝えいたしました。小編成のアンサンブルが作り出す親密な雰囲気には格別の味わいがあります。
 弦楽四重奏という形態は古くからありますが、ジャンルとして確立されたのはウィーン古典派の作曲家、ハイドンから。ハイドンは弦楽四重奏の父とも呼ばれます。そのハイドンの弟子となったのがベートーヴェン。ベートーヴェンはハイドンの衣鉢を継いで、弦楽四重奏の分野に次々と革新的な作品を生み出しました。番組冒頭にお聴きいただいたハイドンの軽快な「ひばり」から、2曲目の激烈なベートーヴェンの「セリオーソ」までは、作曲年代にして約20年強の隔たりがあります。作風の変化の大きさを考えれば、わずか20年強でこんなにも音楽が発展したのだと見ることもできるでしょう。
 弦楽四重奏の演奏にはふたつのタイプがあります。ひとつは常設の弦楽四重奏団による演奏。たとえばジュリアード弦楽四重奏団とかスメタナ弦楽四重奏団といったように、決まったメンバーによって弦楽四重奏を専門に演奏する団体があります。
 もうひとつは、ソリストやオーケストラのメンバーなどが、4人集まって演奏するケース。普段はソロやオーケストラで活動している演奏家が、音楽祭や演奏会など特別な機会のために弦楽四重奏を組むこともよくあります。今回は徳永二男さん、五嶋龍さん、向山佳絵子さん、須田祥子さんという大変豪華な顔ぶれによる弦楽四重奏が実現しました。
 第1ヴァイオリンの徳永さんは元N響コンサートマスター。向山さんはN響の首席チェロ奏者、須田さんは東京フィルの首席ヴィオラ奏者です。一方、龍さんはソリスト。日頃ソリストとして活躍する龍さんが第2ヴァイオリンを務めるシーンは貴重なのでは。でも、みなさん本当に息がぴたりと合っていましたよね。まさに「心配り 気配り 目配り」のおかげでしょうか。

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和楽器を知る音楽会

投稿日:2016年11月20日 15:05

和楽器でこんな曲が演奏できるんですね。今週は和楽器によるアンサンブル、AUN J クラシック・オーケストラの演奏をお聴きいただきました。
 和太鼓、三味線、箏、尺八、篠笛、鳴り物。これらは日本の伝統楽器であるにもかかわらず、私たちの多くにとって身近な楽器とはいえないのではないでしょうか。日本人なのにどうして自分の国の楽器のことをよく知らないのか……という根源的な疑問はさておき、もっと日常的にこれらの楽器のサウンドに触れる機会があってもよいはず。伝統楽器を用いながらも現代の私たちの感性に訴えかける音楽を作り出すAUN J クラシック・オーケストラには、大きな可能性が広がっていると思います。
 西洋楽器のオーケストラとの最大の違いは、これらの和楽器がもともと合奏用に作られていないという点。このメンバーによるアンサンブルは彼らならではのアイディアであり、そのサウンドには独自性があります。
 AUN J クラシック・オーケストラ版のドヴォルザークの「新世界より」第4楽章、カッコよかったですよね。リズムにメリハリがあって、原曲以上にノリノリの「新世界より」になっていました。
 「新世界より」は、チェコの作曲家ドヴォルザークが、アメリカに渡って書いた作品です。新世界とはアメリカのこと。ドヴォルザークはアメリカ固有の音楽を熱心に研究し、黒人霊歌やネイティブ・アメリカンの音楽がこの国の国民音楽の基礎をなすであろうと考えました。そして、あたかもそのお手本を示すかのように、黒人霊歌風のメロディを用いながら、「新世界より」を書きあげたのです。新しい音楽を書くために、その土地に古くからある音楽文化を活用する。この考え方は、AUN J クラシック・オーケストラの日本の伝統楽器を用いた活動と一脈通じるように感じました。

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陰と陽のベートーヴェンの音楽会

投稿日:2016年11月13日 09:30

今週は「陰と陽のベートーヴェンの音楽会」。日本の若い世代を代表するピアニスト、小菅優さんに得意のベートーヴェンを演奏していただきました。ベートーヴェンの音楽の魅力を「陰」と「陽」のふたつの視点から語ってくれたのがおもしろかったですよね。
 小菅優さんはすでにCDでベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集をリリースしています。5年間をかけて、水戸芸術館でセッション録音が行われました。「悲愴」や「月光」「熱情」といった人気曲を録音するピアニストはたくさんいますが、全32曲のピアノ・ソナタをこの若さで世に問うのは異例のこと。これは偉業といってもいいでしょう。
 そんな小菅さんが「陰」のベートーヴェンとして取り上げてくれたのが「テンペスト」第1楽章。小菅さんは、バスとソプラノの掛け合いを「父と娘の言い合い」と表現していました。最初は父親に押されていた娘が、だんだん威勢がよくなって「ナイン!」(ドイツ語のノー!)を連発するという解釈には、思わず膝を叩きました。ベートーヴェンには娘はいませんけど(生涯独身でしたので)、でも、あれはたしかに父と娘ですよね。もしかしたら、だれかモデルが身近にいたのかも……?
 「陽」のベートーヴェンは、ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」第1楽章。「幽霊」などという題名がついていますが、第1楽章は明るい曲です。小菅優さんと五嶋龍さん、さらにはウィーン・フィルのメンバーであるヘーデンボルク直樹さんによる豪華共演が実現しました。ヘーデンボルク直樹さんは、スウェーデン人と日本人の両親の音楽一家のもと、ザルツブルグに生まれ育った気鋭のチェリスト。日本語も流暢にお話しになるんですね。
 小菅さんがおっしゃっていたように、この曲は「仲の良い3人の対話」。音楽を通じた3人の対話が、温かい雰囲気を醸し出していました。

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