• mixiチェック

滑稽なクラシック?スケルツォを探る音楽会

投稿日:2022年12月10日 10:30

 わかるようなわからないような音楽用語ってありますよね。今週とりあげた「スケルツォ」もそのひとつではないでしょうか。ショパンの「スケルツォ」のように単体で作品名として用いられることもあれば、ベートーヴェンの交響曲のように特定の楽章にこの名が添えられることもあります。
 もともと「スケルツォ」とはイタリア語で「冗談」「滑稽」の意。今回はベートーヴェン、クライスラー、プロコフィエフ、フランセの作品を例に、「スケルツォ」のおかしさについて音楽家のみなさんといっしょに掘り下げてみました。
 ベートーヴェンはすぐれたスケルツォをたくさん書いた作曲家だと思います。ピアノ・ソナタ第2番に登場するスケルツォで表現されるのは、「ひょうきん」と「まじめ」の対比の妙。言われてみると、なるほどと思いますよね。こういった表現のコントラストの鮮やかさは、ベートーヴェンの音楽の特徴と言ってもよいでしょう。
 クライスラーの「レチタティーヴォとスケルツォ・カプリス」では、服部百音さんがそのイメージを言語化してくれたように、曲調がめまぐるしく変化します。「カプリス」は奇想曲ともいい、気まぐれな性格の作品を指しています。「スケルツォ」と「カプリス」を組み合わせているところがユニークだと思いました。
 プロコフィエフのフルート・ソナタのスケルツォは、多久潤一朗さんの「コメディ風のサイコスリラー」という表現がまさにぴったり。プロコフィエフの音楽にはしばしば毒のある笑いの要素が見受けられます。不気味さや執拗さが笑いと結びつくのがプロコフィエフならでは。
 最後のフランセはあえて擬古典的なスタイルで書かれた曲で、作品自体に宮廷風舞曲のパロディのような要素があります。この「スケルツォ」には演劇的な要素も感じられました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

世界に誇る国産楽器を知る音楽会

投稿日:2022年12月03日 10:30

楽器製作の世界では意外なところで国産品が活躍しています。日本の職人技が国際的に高く評価されていることもしばしば。今週はそんな世界に誇る国産楽器をご紹介いたしました。
 多久潤一朗さんがおすすめしてくれたのは、村松フルート製作所のゴールド製フルート。清澄な音はもちろんのこと、造形の美しさにも魅了されてしまいます。フルートの世界で「ムラマツ」はだれもが知る有名な存在です。所在地は埼玉県所沢市。創業は大正12年で来年100周年を迎えます。ずいぶんと長い歴史があるんですね。陸軍の軍楽隊に所属していた創業者の村松孝一さんが、当時日本では入手困難なフルートを作りたいと考えたのがはじまりといいますから、隔世の感があります。今や世界各国の一流オーケストラの奏者たちがムラマツのフルートを愛用しています。
 最上峰行さんのおすすめは美ら音工房ヨーゼフのオーボエ。モリコーネの「ガブリエルのオーボエ」で、その美音を堪能させてくれました。愁いを含んだ甘美な音色がたまりません。こちらも世界的なプレーヤーに愛用される楽器です。所在地は沖縄県南城市。創業者の仲村幸夫さんはドイツでオーボエ奏者としてキャリアを積んだ後、帰国してオーボエの製作をはじめました。そんなヨーゼフの楽器を「神の楽器」と称えたのがドイツの名奏者マンフレート・クレメント。クレメントはドイツのトップ・オーケストラのひとつ、バイエルン放送交響楽団の首席オーボエ奏者を務めた世界的な名手です。
 真矢さんのおすすめは世界的ドラムメーカーのPearl。所在地は千葉県八千代市。てっきり海外のメーカーだと思い込んでいましたが、それだけ世界の一流プレーヤーが使っている場面を目にする機会が多いということなのでしょう。最初は譜面台のメーカーだったというお話にもびっくり。奏者が楽器製作者になったわけではないんですね。「真円度がものすごく高い」というお話にメーカーの職人魂を感じました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

オーケストラで聴くサッカー応援曲の音楽会

投稿日:2022年11月26日 10:30

FIFAワールドカップカタール2022のグループステージ第1戦では、日本代表がドイツ代表に逆転勝利をあげました。本当に見ごたえのあるすばらしい試合でしたよね。第2戦のコスタリカ戦に向けてますます期待の高まる中、今週は元日本代表の内田篤人さんをお招きして、オーケストラでサッカーの応援曲をお楽しみいただきました。
 サッカー名曲としてまっさきに思い浮かぶのが、日本代表の応援歌にも使われるヴェルディ作曲のオペラ「アイーダ」の「凱旋行進曲」でしょう。「アイーダ」は古代エジプトを舞台とした人気作。エジプトの将軍ラダメスと敵国エチオピア王の娘アイーダとの禁じられた恋が描かれます。第2幕でラダメスが軍勢とともに凱旋する場面で、「凱旋行進曲」が高らかに奏でられます。勝利を祝う勇ましい音楽ですから、スタジアムにもよく似合いますよね。
 テレビ朝日のサッカー中継でおなじみ、サラ・ブライトマンの「クエスチョン・オブ・オナー」も、オペラに由来する名曲です。カタラーニのオペラ「ラ・ワリー」の有名なアリア「さようなら、故郷の家よ」が曲の冒頭とおしまいで登場します。オペラ「ラ・ワリー」は「アイーダ」と違ってめったに上演されない演目ですが、このアリアだけはとても人気が高く、単独で歌われる機会の多い楽曲です。ジャン=ジャック・ベネックス監督の映画「ディーバ」で効果的に使用されていましたので、映画で曲を知った方もいるかもしれません。
 最後に演奏されたエルガーの行進曲「威風堂々」もサッカー・シーンでよく耳にします。エルガーはイギリスを代表する作曲家。大英帝国の栄華を象徴するような勇壮な行進曲で、中間部のメロディは「希望と栄光の国」の題で親しまれています。聴くと思わず背筋が伸びるような格調高い曲想がいかにもエルガー。イギリスをはじめ、日本を含む世界各国のサッカー・クラブの応援歌として愛唱されています。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

実は自由だったクラシック!バロックの音楽会

投稿日:2022年11月19日 10:30

今週は鈴木優人さんとバッハ・コレギウム・ジャパンのみなさんをお招きして、バロック音楽の自由な世界をお楽しみいただきました。クラシック音楽といえば、楽譜通りの正確な演奏が求められるものと思われがちですが、バロック音楽の時代には奏者による装飾や即興がごく自然なことだったんですね。鈴木優人さんのお話にあった「同じ演奏を2回するな」というバロック音楽の時代のスピリットは、のちの時代の音楽にも通じるところがあるのではないでしょうか。
 コレッリのヴァイオリン・ソナタについて装飾の実例がありましたが、それぞれの演奏がぜんぜん違っていることに驚かされます。原曲の楽譜に書かれている音符はとてもシンプル。これはこれで美しいメロディですが、ルーマン版ではぐっと音符の数が増えて、華やかで技巧的な音楽になっています。カッコよかったですよね。今回の演奏者、若松夏美さん版もやはり音符の数が増えて華やかでしたが、曲のメランコリックな性格がより強調され、しっとりとした味わいがありました。ひとつの楽曲から無数の表現が生み出されるところがおもしろいところです。
 ヴィヴァルディのチェロ協奏曲では、独奏者が即興をする「カデンツァ」に注目していただきました。こういった自由度の高い部分が用意されていると、聴衆も「今回はどんな演奏になるのだろう」とワクワクします。協奏曲におけるカデンツァの伝統は、その後、モーツァルトやベートーヴェンといった古典派の音楽にも受け継がれています。ただ、時代が進むにつれて、だんだんと作曲と演奏の分業化が進み、協奏曲から即興の要素が薄まってゆきました。現代では即興のおもしろさはジャズの世界に受け継がれているのかもしれません。
 通奏低音の自在さもバロック音楽の大きな特徴のひとつ。最後のメールラ「チャッコーナ」では総勢8人もの通奏低音部隊が結成されました。こんなリッチな通奏低音は聴いたことがありません!

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

いま注目すべきアーティストを知る音楽会

投稿日:2022年11月12日 10:30

今週はこれからの躍進が期待される番組注目の若手アーティスト2名をご紹介いたしました。
 ピアニストの北村明日人さんは、今年8月に開催された第46回ピティナ・ピアノコンペティションの特級グランプリに輝いた新星です。このコンペティションでは、2019年の亀井聖矢さん、2018年の角野隼斗さん、2011年の阪田知樹さんなど、現在大活躍中のピアニストたちが特級グランプリを受賞しています。
 北村さんが最初に演奏したのはバッハのフランス組曲第5番より第7曲「ジーグ」。ジーグとはバロック音楽時代の組曲を構成する基本の舞曲ですが、まさに北村さんの演奏は踊るかのよう。まるで指揮をしているような身振り手振りが印象的でしたね。
 続いて演奏されたのはブラームスの幻想曲集作品116より第4番「間奏曲」。晩年のブラームスが書いたピアノのための小品です。この時期のブラームスの小品には孤独感や諦念を感じさせる作品が多く、どちらかといえばベテラン・ピアニストが好むレパートリーだと思いますが、若い北村さんは真正面から作品に向き合って、味わい深いブラームスを奏でてくれました。
 トランペット奏者の松井秀太郎さんはクラシックとジャズを学び、作曲もできる多才の持ち主。小曽根真さんによる次世代を担う才能を発掘するプロジェクト”From OZONE till Dawn”のメンバーに選出されるなど、注目を集めています。自作の”Trust Me”を演奏してくれましたが、とても詩情豊かで、ポジティブなエネルギーにあふれていました。
 小曽根さんとの共演では、チャイコフスキーの「白鳥の湖」より「ナポリの踊り」を演奏。トランペットが活躍する名曲として原曲も有名ですが、松井さんと小曽根さんの手にかかると、優雅なバレエ音楽が自由自在のジャズに変身。チャイコフスキーに聴かせてあげたくなるような楽しい演奏でしたね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

黄金のアンサンブル!弦楽四重奏の音楽会

投稿日:2022年11月05日 10:30

今週は弦楽四重奏の魅力をたっぷりとお楽しみいただきました。一昔前は弦楽四重奏というと玄人好みの渋いジャンルのような印象があったと思います。パッと人目を引くような派手さはないけれども、通にとってはたまらない、というわけです。しかし、昨今ではフレッシュな才能がこの分野に集まって意欲的な活動をくりひろげており、ずいぶんと「カッコいい」イメージが定着してきたように思います。
 弦楽四重奏は室内楽のなかでももっとも傑作に恵まれた分野かもしれません。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンといった古典派時代の作曲家たちはみな弦楽四重奏曲の傑作を残しています。弦楽四重奏の伝統はシューベルト、シューマン、ブラームスといったロマン派の作曲家たちに受け継がれ、20世紀に一段と活況を呈します。特に20世紀の作曲家で弦楽四重奏の傑作を残した作曲家と言えば、ショスタコーヴィチとバルトークが挙げられるでしょう。
 ショスタコーヴィチは15曲の弦楽四重奏を書いています。特に人気の高いのが、本日演奏された第8番です。作曲は1960年。ショスタコーヴィチは共産党の独裁体制下にあるソ連の作曲家でしたので、自由な創作活動を認められていませんでした。この年、ショスタコーヴィチは共産党に入党させられることになり、精神的な危機を迎えます。そして、表向きは「ファシズムと戦争の犠牲者」に捧げるとしながら、自らへのレクイエム的な作品としてこの曲を書きました。作品中に自身のイニシャルに由来するD-S(Es)-C-H(レ-ミ♭-ド-シ)がなんども出てくるのは、これが本当は自分自身を扱った作品であることを示唆しています。
 バルトークは6曲の弦楽四重奏曲を残しました。弦楽四重奏曲第4番は1928年の作品。とてもアグレッシブな音楽で、手に汗握るスリリングな緊張感があります。理知的でありながらも、荒々しい。そんなバルトークならではの魅力が伝わってきました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

角野隼斗が挑む!ポストクラシカルを知る音楽会

投稿日:2022年10月29日 10:30

今週は角野隼斗さんをお招きして、近年のクラシック音楽界に訪れた新たな潮流「ポストクラシカル」について教えていただきました。
 「ポストクラシカル」という言葉はご存じでしたでしょうか。クラシック音楽(クラシカル・ミュージック)に「ポスト」という言葉が付いていますから、最初にこの言葉を耳にしたときは古いのか新しいのかどっちなの?と微妙に違和感を感じたものですが、今や新たな音楽ジャンルを示す言葉としてすっかり定着しています。角野さんが語っていたように「クラシック音楽のサウンド感をベースに電子音楽の要素を足す」「生音を大事にしながらデジタルでできることを追求する」ことが、「ポストクラシカル」の特徴として挙げられると思います。
 この分野の先駆者はドイツ生まれのイギリスの作曲家マックス・リヒター。2012年にリリースしたヴィヴァルディの「四季」を「リコンポーズ」したアルバムは英米独のiTunesクラシックチャートで第1位になるなど、世界的に大きな話題を呼びました。クラシックの名曲にエレクトロ、アンビエントの要素を巧みに融合させた名盤です。
 今回番組で演奏された角野隼斗さんの「追憶」と「胎動」も、それぞれショパンのバラード第2番、練習曲作品10-1という名曲を「リコンポーズ」した作品で、まさしく「ポストクラシカル」の発想で書かれたもの。とても自由で新鮮な音楽だと感じます。
 もともとクラシック音楽の世界には、作曲家の意図を尊重して楽譜を正確に再現しようという原典主義の考え方が定着しているのですが、ポストクラシカルの方向性はまったく違います。原典にインスパイアされることによる創造性が大切にされていると言えるでしょうか。
 番組内で角野さんと話していたヴィキングル・オラフソンは、アイスランド出身の注目のピアニスト。オラフソンはコンサートで伝統的なレパートリーを弾く一方、ポストクラシカル的な発想を取り入れたアルバムを発表しています。角野さんに少し近いスタイルのアーティストと言ってもいいかもしれませんね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

5拍子で楽しくなる音楽会

投稿日:2022年10月22日 10:30

今週は5拍子の音楽の魅力をお伝えいたしました。ふだん私たちが耳にする音楽のほとんどは2拍子、3拍子、4拍子。5拍子は圧倒的に少数派です。
 もっとも有名な5拍子の曲といえば、一曲目に演奏された「テイク・ファイヴ」、そして「ミッション・インポッシブル」(スパイ大作戦)のテーマでしょう。この2曲を聴くと、5拍子はぜんぜん不自然に聞こえませんよね。5拍子ってカッコいいんだなと感じます。でも、いざ音楽に合わせて5拍子に乗ってみようと思うと、やっぱり難しい……。ユザーンさんが5拍子を身体になじませる技を教えてくれましたが、いかがでしたか。「裏拍で手拍子を打つ」はなかなかの高難度でしたけど、5拍子って楽しいですよね。
 「ミッション・インポッシブル」の作曲者ラロ・シフリンは、ある記者会見で「どうして5拍子でこの曲を書いたのか」と質問されて、「今、惑星間飛行の影響で宇宙から電波が届いているのは知ってますよね? 宇宙人は5本足で、私たちの音楽では踊れないんです。だから5拍子の曲を書いたのです」と答えたそうです。もちろんジョークなのですが、記者はこれを真に受けて記事にしてしまい、シフリンはエージェントに叱られてしまったのだとか。
 そういえばホルスト作曲の組曲「惑星」の第1曲「火星」は5拍子で書かれています。やはりホルストも火星人のために5拍子を書いた……のではありません。この曲では「火星」のシンボルとして「戦いの神」を表現するために、5拍子が独特の緊迫感を生み出しています。クラシックではほかにもチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」の第2楽章が5拍子で書かれています。こちらは流麗なワルツ。5拍子でも踊れるかも?
 最後にユザーンさんが演奏してくれた北インド古典音楽「アヒル・バイラヴ」は、なんと「5拍子×2」による10拍子。ゆったりした音楽の流れが不思議な心地よさを生み出していました。音楽の世界は本当に広いですね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

日本最高峰のチェリスト・堤剛の音楽会

投稿日:2022年10月15日 10:30

今週は日本のクラシック音楽界の重鎮、堤剛さんをお招きしました。80歳にしてチェリストとして第一線で活躍しながら、サントリーホール館長をはじめとする要職を務める堤剛さんは、まさにレジェンドと呼ぶにふさわしい存在です。
 最初に演奏されたのはバッハの管弦楽組曲第3番の第2曲「エール」、通称「G線上のアリア」。今回はチェロ四重奏に編曲しての演奏でした。チェロは音域が広いだけに、こうして同じ楽器でアンサンブルを組めるのが魅力ですね。
 2曲目に演奏されたハイドンのチェロ協奏曲第1番は、チェリストにとって欠くことのできないレパートリー。ハイドンの名曲のなかでも、とりわけ勢いがあり、はつらつとした生命力にあふれた傑作です。若手奏者たちによるオーケストラの潤いのあるサウンドに、堤さんの味わい豊かなソロが重なり合う様子は、まさに至福のひととき。
 最後に演奏されたカタロニア民謡「鳥の歌」は、よくアンコールなどでも耳にする名曲です。バルセロナに代表されるカタロニア地方は、スペインのなかでも独自の文化や言語を誇っています。フランコ政権による厳しい弾圧などの歴史的経緯もあって、今も民族意識の高い地域であり、しばしば独立運動がニュースで取り上げられています。そんなカタロニア出身の伝説的なチェリストがパブロ・カザルス。彼は故郷の民謡「鳥の歌」をチェロのために編曲し、各地でくりかえし演奏しました。
 カザルスが晩年に国連で演奏した際は、「私の故郷カタロニアの鳥はピース、ピース(平和)と鳴くのです」とメッセージを述べて、「鳥の歌」を演奏しました。このエピソードが広く知られているため、今でもカザルス編曲の「鳥の歌」を聴くと、そこに平和への祈りを感じ取らずにはいられません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

秋を感じる音楽会

投稿日:2022年10月08日 10:30

今週は秋を感じる名曲をお楽しみいただきました。最初に演奏されたのは学校の運動会でおなじみの「オクラホマミキサー」……と言いたいところですが、Cocomiさんによれば「フォークダンスを踊るのはアニメの世界でしか起こらないこと」。ええっ!と驚いた方も多いのでは。近年の学校ではフォークダンスがあまり踊られていないようです。昔の学校の風景がアニメを通して若い世代に伝わっているという現象は興味深いですね。
 Cocomiさんが選んだ秋を感じる曲は、アース・ウィンド&ファイアーの「セプテンバー」。フルートのソロにストリングス中心のアンサンブルが加わる「セプテンバー」はかなり新鮮。アース・ウィンド・アンド・ファイアーのオリジナルとはぜんぜん違った雰囲気で、とても爽やかでエレガントな曲に聞こえてきます。こんなに気品のある「セプテンバー」があり得たとは!
 アコーディオン奏者の田ノ岡三郎さんが選んだのはミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」より My Favorite Things。リチャード・ロジャースが作曲した名曲中の名曲です。この曲を用いた「そうだ 京都、行こう。」のCMは印象的でした。本来は季節感のない曲ですが、田ノ岡三郎さんにとっては秋バージョンのCMのレコーディングに参加した体験から、秋の音楽になったのだとか。実際、アコーディオンで聴くと秋らしい気分になるんですよね。アコーディオンの愁いを帯びた音色とストリングスの温かみのある音色が組み合わさって、とても味わい深いサウンドが生み出されていました。
 ヴァイオリニストの松田理奈さんが選んだのは、ヴィヴァルディの「四季」より「秋」第3楽章。この曲には作曲者が添えたソネット(十四行詩)があります。「秋」第3楽章の詩に描かれるのは狩の風景。猟犬が獲物を追いかけ、狩人が仕留めるまでが描写的に表現されています。生気あふれる演奏から、狩の成功の喜びが伝わってきました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

フォトギャラリー

フォトギャラリーを詳しく見る≫