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60周年記念企画②夢の対談が実現した音楽会〜前編

投稿日:2024年05月11日 10:30

 今週は番組60周年記念企画の第2弾といたしまして、ボーダーレスをテーマにピアニストの藤田真央さんと宇宙飛行士の野口聡一さんによる対談をお送りいたしました。国境を超えて世界中で活躍する藤田さんと、地球を飛び出し、日本人として宇宙でもっとも長い滞在時間を過ごした野口さん。まさにボーダーレスなおふたりです。
 5年前、モスクワで開催されたチャイコフスキー国際コンクールで藤田さんが第2位を獲得した際に、プライベートで会場を訪れていたという野口さん。本当に音楽が大好きな様子が対談から伝わってきました。宇宙飛行士から見たホルストの組曲「惑星」のお話がおもしろかったですよね。ホルストの作品では「火星」が激しく闘争的な曲調で、「木星」が穏やかで優しい曲調で描かれていますが、実際の惑星の姿はむしろ逆だと言います。たしかに火星の地表の写真を思い出してみると、砂漠のような荒れ地が広がるばかりで、静かな印象がありました。なにしろホルストがこの曲を書いたのは1916年のことですから、惑星が現実の姿よりも占星術的なイメージにもとづいて描かれるのは自然なことでしょう。
 藤田さんが演奏してくれた一曲目は、野平一郎作曲による「音の旅」より「舞踏会にて」。野平一郎さんは現在の日本を代表する作曲家のひとりです。パリ国立高等音楽院に学び、現代音楽の世界で国際的な活動をくりひろげています。そんな野平さんが、こどものためのピアノ曲集として作曲したのが「音の旅」。藤田さんが楽しそうに演奏している姿が印象的でした。
 二曲目はシューマンの大傑作、「クライスレリアーナ」の第5曲。曲名はE.T.A.ホフマンの著作に登場する「楽長クライスラー」に由来し、シューマンはこの架空の人物に結婚問題で苦しむ自分自身の姿を重ね合わせていました。
 最後の曲は藤田さん得意のモーツアルト。隅々まで生気にあふれた演奏で、ずっと聴いていたくなります。まさに「天衣無縫」という言葉がぴったりですね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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