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イージーリスニングをイージーに聴かない音楽会

投稿日:2022年10月01日 10:30

今週はかつて日本でも大ブームを巻き起こたイージーリスニングを特集いたしました。当時、きらびやかなストリングスの音色と心地よいビートがとても新鮮で、大人びた都会的な音楽のように感じたものです。
 この分野の名曲としてまっさきに挙がるのは、ポール・モーリアの「オリーブの首飾り」でしょう。おもしろいことにイージーリスニングのブームが去った後も、この曲は手品のBGMとして定着して、世代を超えて親しまれる名曲になりました。原曲はフランスのディスコグループ、ビンボー・ジェットによる「嘆きのビンボー」。ポール・モーリアがオリジナルだと思っていた方も少なくないのではないでしょうか。
 服部隆之さんの解説にもありましたが、この「オリーブの首飾り」でも、もうひとつの代表作「恋はみずいろ」でもチェンバロが効果的に使われています。本来、チェンバロはバロック音楽の時代に盛んに使われ、その後、いったん歴史の表舞台から姿を消した楽器なのですが、20世紀になって復興を果たします。今回の演奏では、正真正銘のバロック音楽のチェンバロ奏者、鈴木優人さんがチェンバロで参加してくれました。これは快挙ですね。オーケストラのサウンドも実につややかで、名曲がいっそうゴージャスな輝きを放っていました。
 ポール・モーリアと並ぶイージーリスニング・ブームの立役者がレイモン・ルフェーブル。クラシックの名曲をアレンジした「ポップ・クラシカル・シリーズ」でも人気を呼びました。「愛よ永遠に」では、モーツァルトの交響曲第40番の第1楽章がすっかりイージーリスニングのスタイルに変身しています。
 イージーリスニングの洗練されたサウンドをいち早く日本で取り入れたのが服部克久さんです。「5月の草原は愛に包まれて」の明るく澄んだサウンドはまさに5月の爽快な気候を思わせます。雄大な光景が目に浮かぶようでしたね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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