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有名作曲家のひねりすぎた楽曲を楽しむ音楽会

投稿日:2020年03月14日 10:30

今週は好評の「有名作曲家のひねりすぎた楽曲を楽しむ休日」第2弾。大作曲家たちの発想力の豊かさには驚かされます。
 チャイコフスキーの大序曲「1812年」は、ナポレオン率いるフランス軍をロシア軍が撃退した史実を描いた人気曲。戦闘場面を描写するためにチャイコフスキーは楽譜に「大砲」の指示を書き込んだのですが、もちろん普通の演奏会では大砲など使えません。伝統的には大太鼓で代用されています。最近ではシンセサイザーで大砲の音を入れることも。自衛隊の音楽隊は、本物の大砲を使える日本で唯一の団体でしょう。
 ヘリコプター弦楽四重奏曲を作曲したのはドイツのシュトックハウゼン。20世紀の前衛音楽を語る上で外すことのできない作曲家です。ある晩、夢で4人の弦楽器奏者が4台のヘリコプターに乗って弦楽四重奏を演奏する光景を見たことから、この作品を着想しました。そんな途方もない夢の光景を現実化できるのはシュトックハウゼンくらいのもの。
 ハイドンによる音楽の回文もおもしろかったですよね。楽譜を前から読んでも後ろから読んでも同じ曲になるという、音楽の「タケヤブヤケタ」。これはいかにもハイドンらしい茶目っ気のあるアイディアです。原曲は交響曲第47番「パリンドローム(回文)」。今回はピアノ用に編曲したバージョンで反田恭平さんに弾いていただきました。録音を逆再生すると、音のアタックが頭ではなくお尻に来るので、音色はオルガンみたいに変化しますが、曲が同じであることはよくわかります。
 「ギロ」を作曲したドイツのラッヘンマンは、楽器の特殊奏法を駆使する作曲家として知られています。ピアノの鍵盤を打楽器のギロに見立てて、このような題が付いています。これも立派な音楽作品。ラッヘンマンは既存の演奏法では出てこない音を活用し、だれも聴いたことがない音を創出することで、音楽の可能性を広げているのです。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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