原色の風景・光り輝く島スリランカの旅 撮影日記

- シーギリヤ・ロックをバックに
- シーギリヤ・ロック
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スリランカ最後の旅は、夜明け前の西海岸のコロンボから東海岸のトリンコマリーを目指し、島を横断する。田園地帯を抜け、野生動物たちの住む森を走る。スリランカで長らく続いたシンハラ王朝最後の都は中央部のキャンディ。それ以前の都、アヌラーダプラとポロンナルワの3都市を結ぶ三角形は、「文化三角地帯」と呼ばれている。古代遺跡が集中しているこのエリアを、トリンコマリー行きの路線が通る。おそらく最も有名なのはハバラナ駅から南へ11キロのところにある、世界遺産「シーギリヤ・ロック」だろう。
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地上から約200メートルのシーギリヤ・ロックの頂上には、5世紀後半にカッサパ王によって築かれた王宮跡が残る。「狂気の王」ともいわれるカッサパ王。父親を殺して王権を奪ってこんなところに王宮をつくりあげた後、腹違いの弟の侵略を恐れて、王宮完成からわずか十数年で自害したそう。数々の謎が残されており、岩を登る途中に描かれている「シーギリヤ・レディ」と呼ばれる美女のフレスコ画はとりわけ神秘的。残念ながら現在撮影はNG。撮影はできなくてもぜひこの目で見ておきたいと意気込んだが、これを見るには頂上までの最短ルートを一回外れなければならない。日中は3本しかないトリンコマリー行きの列車の走りを撮る時間が迫っており、泣く泣く断念した。パーニニさんには「ここまで来てシーギリヤ・レディを見なかった人は初めてです」と、帰国する日までに4、5回は言われた。
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列車の走りの時間に合わせて、早朝7時半ごろから登り始めた私たち。最後の絶壁は、往時に彫られたであろう溝を横目に鉄階段を登る。古代人の仕事に感動しながら、先を急ぎ、撮影しながらでもたった1時間で頂上へ着いた。シーギリヤ・レディを飛ばせば早いものだ。頂上の景色をしっかり目に焼き付けて急いで降りようとすると、先ほど登ってきた細い階段に、長蛇の列ができていた。壮観だった。私たちが登った日はちょうどスリランカの3連休にあたり、あと少し遅れていたら時間がかかって大変だった。なんとも慌ただしい登頂。また来ようと心に誓う。
- ディレクター 中村仁美

- トリンコマリー行き列車の車内

- 絶壁の鉄階段