原色の風景・光り輝く島スリランカの旅 撮影日記

- 殻は干してタワシに
- ココナッツ探訪記
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スリランカは、完熟のマンゴーやパパイヤが気軽に楽しめるフルーツ天国。日本ではあまり目にしない南国のフルーツが売られているのも目を引く。そんな中で今回特に私を虜にしたものは、ココナッツだった。スリランカ人の生活と切っても切り離せない果物だ。
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出会いは、南部の都市ゴールへ向かう列車の走りを撮影する時だった。線路沿いに民家が並び、室内からはスリランカの音楽が漏れ聞こえ、外では巻きスカート風の男性用伝統衣装「サロン」を着たおじさんたちがのんびりしている。賑やかな街中とは少し違った、肩肘張らない人々の日常風景を垣間見ることができ、嬉しくなる。ふと目に入ったのが、カンカン照りの中、線路脇に置かれていたココナッツの殻。ゴミかと思ったら、干してタワシにするのだとおじさんたち。そういえば道中で花壇のブロック替わりに殻を使っている家も見かけたし、ネゴンボで見た干物用の敷物もヤシの木からできていると言っていた。ヤシの木は捨てるところがないのだと、教えてもらった。
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その線路沿いには、2種類のココナッツがなっていた。緑色のココナッツは、若いうちはジュースも飲めて、茶色く熟れたら各家庭で料理に使う。一方オレンジ色の実は、「キングココナッツ」というスリランカ原産種で、料理にはほぼ使わず、ジュースが甘くておいしい。栄養満点で「天然の点滴」とも言われていて、昔は病気の人へのお見舞いに持っていくこともあったそうだ。この出会いをきっかけにヤシの木に対して俄然興味が湧いた。それ以降私たちは予期せずして、道すがらココナッツシーンを見つけては撮影する人々となった。
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ココナッツを撮り始めて数日経った頃、忘れられない出来事があった。親切にも家の敷地から列車を撮影させてくれたご主人が、クルー全員にキングココナッツをふるまってくれた。猛暑の中を歩き回って喉がカラカラで、水分は、このとき私が最も欲していたものだった。ストローなしの現地流でワイルドに喉を潤す。この時のココナッツジュースは本当に滋味深い美味しさだった。飲み終わって、白い実もガジガジ食べた。瓜みたいで美味しかった。
- ディレクター 中村仁美

- 線路沿いの風景

- キングココナッツ