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北欧の夏! 白夜のフィンランド周遊の旅 撮影日記

白樺の向こうに沈まぬ太陽が
白夜のラップランド
フィンランド周遊の旅が後半に入る頃、長距離移動をする日があった。中部の街・クオピオを15時半頃に出発し、北部最大の街・ロヴァニエミまで、580kmの路線を一気に北上する。車内には、読書や編み物をする人、トランプで真剣勝負をする家族、食堂車でワインを片手にお喋りが止まらない女性たち…など、長距離列車ならではの穏やかな空気が漂っている。撮影にも少しゆとりができ、外の景色をぼーっと眺める時間が増えた。ラップランドと呼ばれる北の大地に差し掛かると、車窓には深い緑の森が広がり始めた。
オウルで列車を乗り継いでロヴァニエミに到着したのは、夜11時半近く。「白夜の季節、北半球では北へ行くほど日が長くなる」と、頭ではわかっているつもりだったが、いざその明るさを体感すると、あっけに取られてしまった。それもそのはず。この日の「日の出日の入りカレンダー」には、Up All Dayの文字が。なんと、太陽が沈まない日だった。パブやクラブが賑わうメインストリートを抜けた先では、斜陽が空と湖をオレンジ色に染め上げていた。夜中でも太陽が煌々としているだなんて、可笑しな夢を見ているようだ。地球の壮観さをありありと見せつけられ、畏れ多さすら感じる風景だった。
翌日はさらに北を目指し、ついに北極圏へ。「夏の北極圏のさわやかな森」のイメージからはほど遠く、どんよりとした空から雨がパラパラと降っている。一年を通じて一番暖かいとされる7月だが、気温は14度前後。目的地の国立公園では、アップダウンのある歩道を三脚を担いで歩き回ったが、それでも長袖が必須だった。旅を始めた頃は、天気の移り変わりに一喜一憂していたが、もうここまで来てしまえば、あるがままでいいじゃないか。
…しかし、そう思えたのも束の間。撮影を終えて夜9時頃にホテルへ戻り、ふと窓を開けると…なんと、青空が広がっているではないか!あの曇天はどこへやら。どんな時でも屋外の撮影は空とにらめっこ状態だが、ラップランドでは特に、太陽に翻弄され続けたのだった。
ディレクター 富浦花野
ピュハ・ルオスト国立公園での撮影
のんびり道を歩くトナカイ