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雨季のカンボジア〜青く輝く田園を走る 撮影日記

カニ漁の船着場
雨季の洗礼
渡航して数日。事前に聞いていたような大雨がなかなか降らないと思っていたら、南線のケップあたりでの撮影時、待ちに待った雨がやってきました。線路脇にある岩山、コンポントラッチ山の前を通る列車を撮ろうと構えて待っていたときのこと。列車の訪れとほぼ同時に雨雲到来。かなり激しい雨と風で、まさに"雨季のカンボジア"らしい情景。撮影でなければ途方に暮れるところですが、ほくそ笑む私たちなのでした。
列車の通過後は、近くの小屋を拠点にさせてもらって、ぬかるんだ田んぼをここぞとばかりにトラクターで耕す人や、民家に置かれた水瓶に樋を使って雨水を貯める人を撮影。豪雨ですべての音がかき消されるという妙な静けさの中、人々の営みを観察しました。しっとりとしながら、でもうっとりとはしていられない、美しい風景でした。数時間降り続き、水瓶の男性に聞けば、空だった瓶の水が満杯になったといいます。これほどの量は数か月ぶりなのだそう。本格的な雨季の訪れを告げる雨で、以後、たびたび土砂降りに遭遇しました。
しかし、雨の撮影は大変です。レンズは曇ってくるし、三脚はなんだかネジの調子がおかしい気がする。撮影をする飯岡さん・安倍さんは苦労していました。足元も地味に悩ましく、出発前は防水の靴一足で行こうとしていましたが、急に不安に思って、前日に足をガードしてくれるスニーカータイプのサンダルを購入。これがなかったら、毎日ずぶ濡れの靴を履くことになっていたと思うと、ナイス判断でした。
一番印象に残る雨は、ケップのカニ漁船を撮った朝。岸に戻った船からカニを運び出す市場の女性たち。いつも決まった漁師から仕入れるそうで、漁師に差し入れするお弁当を片手に、ツルツルに滑る岩場で船を待っていました。彼女たちの足元はクロックス(スリッパ状のサンダル)でした。カニの網は重たく、水の中に服のまま(パステルカラーのレインコートを着たまま、というのもまた乙です)入って、ギリギリまで浮力を使って運び、最後は4人がかりで持ち上げてバイクの後部座席に設置。大雨の中、岩場をバイクで走っていく女性。たくましさに圧倒されました。
ディレクター 中村 仁美
列車と共にやってきた雨雲
水瓶に水を貯める男性