世界の車窓から

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チュニジア~地中海と歴史都市をめぐる旅~ 撮影日記

沿線ではよくヤギや羊に出会った
一期一会
南部へ差し掛かると、いつの間にかオリーブの緑がまばらになり、車窓に砂埃と石ころだらけの荒地が広がる。チュニジアの車窓の旅も終わりに近づいてきたと実感する。終着駅ガベスの街に到着すると、一帯にナツメヤシの木が生い茂っていた。この果実“デーツ”は南部の名産品で、枝ごと乾燥させたものが露店に並んでいる。街の雰囲気もこれまでとは印象が変わり、サハラ砂漠へのほんの入り口だが、アフリカらしい匂いがしてくる。
ガベスからは、少し南へ足を延ばした。周辺には、先住民ベルベル人の暮らしが息づく魅力あふれる町や村々が点在している。メドニンの街では、土で塗り固めた“クサール”と呼ばれる洞窟式倉庫が並ぶ、映画「スターウォーズ」のロケ地を訪れた。ファンにとってここは聖地で、スターウォーズの世界を彷彿とさせるマント状の民族衣装“バルヌース”をまとい、三角頭の風貌で街を行き交う男性たちに、個人的にも胸が踊った。
ホテルや店などに改装され、観光地として残されている場所はあるが、実際にベルベル人が住み続けている村は数少ない。もともと、1000年程前にアラブ勢力に追いやられるように、険しい山岳の奥地に村が築かれたため、現代ではその多くが廃村になっている。ベルベルの人たちの暮らしが見たいと、トゥジェンという村に向かった。南部出身の陽気なコーディネーターのラサドさんが交渉してくれて、その日出会った一家のご厚意もあり、家の中で伝統の機織りを撮影することができた。
今回の旅を振り返ってみると、下見がない車窓ロケは、当日出会う人たちの協力が何よりも大切だと感じる。列車の走り撮影では、ビルの解体工事中に屋上に上がらせてもらったし、線路脇で出会う羊飼いの方が、遅れがちな列車の日頃の通過時間を把握していて、何度も助けてくれた。悪路をものともせず安全運転でロケを支えてくれた、ドライバーのムハンマドさんの力も大きかったと思う。そして何より、日本の撮影隊を、いつも笑顔で迎え入れてくれた乗客のみなさんに感謝です。シュクラン!
ディレクター 太田 健亮
トゥジェンで出会ったベルベル人一家
異世界のような風景を作るクサール群