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北欧の夏! 白夜のフィンランド周遊の旅 撮影日記

正面から見ると“帽子”のよう
太っちょ列車の特別運行
首都ヘルシンキを起点に、フィンランドをぐるりと周遊する長旅に出る前に、ちょっと寄り道。ヘルシンキ近郊の街・ポルヴォーへの日帰り旅が楽しめる、古い列車の特別運行があると聞き、撮影することにした。1988年までフィンランド鉄道で活躍した、Dm7という型のディーゼル列車。黄色とコバルトブルーの車体が目を引く。横幅が広く、ぽってりとしたフォルムから、ニックネームは“lättähattu”(=平らな帽子)。実物を見るまでは、「帽子?」と思っていたが、正面から見ると、そんな風に見えなくもない。何より可愛い!フィンランドを代表する映画監督、アキ・カウリスマキの作品『枯れ葉』(2023)にも登場するなど、広く愛されている列車のようだ。
現役引退後も、国内各地の保存会や鉄道博物館などによって守られている。撮影に協力してくれたのは、ポルヴォーミュージアム鉄道協会。ヘルシンキとポルヴォーを結ぶ線路は、一部区間が廃線となっているが、保存鉄道として維持・管理され、特別運行の日にだけ復活する。老若男女で賑わう車内は、まるで遠足の貸し切り列車のよう。みんながウキウキしていて、撮っている私たちもつられてニコニコしてしまう。真剣な眼差しで車窓を撮影する男の子。ヨーロッパ中の鉄道を撮影しているというYouTuberの男性。孫とおじいさんだと勘違いしたほど歳が離れている(であろう)二人が意気投合する光景が微笑ましかった。
他にも、誕生日祝いでポルヴォーへ小旅行をするというカップル、遠路はるばるドバイから旅行中の家族など、背景も目的も様々な乗客たちが和気あいあいと、ひとつの列車に揺られている。車であれば1時間弱の道のりを、あえて列車で約2時間。このゆったり感こそが、列車旅の魅力なのかもしれない。この先の撮影では、三脚を担いで全力疾走することもあるだろう。でも、気持ちだけはのんびりと保ち、地図やスケジュール表にばかり夢中にならず、外の風景を眺める時間や乗客との会話を大切にしたい。そう心に決めた撮影となった。
ディレクター 富浦花野
ポルヴォーに到着
鉄道トークで意気投合