北欧の夏! 白夜のフィンランド周遊の旅 撮影日記

- 鏡のような湖
- 湖水地方で出会った風景
-
フィンランドの魅力といえば、風光明媚な湖。湖水地方での撮影は、今回の旅の肝といっても過言ではない。スタート地点・タンペレ駅からは一両編成の列車に乗車。沿線にいくつもの湖が点在するローカル線を進んでいく。青空と、美しい湖と…。そんな風景に胸を膨らませていたが、外は雨。空は分厚い雲に覆われ、湖もどんよりとしている。ちょっと残念な気持ちと相反し、満席の車内はとても賑やか。釣りやサウナを目当てに、サマーコテージへ向かう乗客たちのワクワク感に満ちている。その様子を見ているうちに、車窓についた雨粒が転がっていくのでさえ面白く感じてしまうほど、なんだか楽しくなってしまった。
-
翌日の夕刻、沿線の撮影後にハーパマキ駅から旅を続ける。この日は朝から雨が降ったり止んだり、忙しない空模様だったが、夕方頃には雲の割れ目から光が漏れ始めた。車窓には雄大な湖が広がり、水面がきらめいている。小さな湖は、底が浅いからだろうか、鏡のように周囲の木々をぴたりと映し出す。風の吹き方、太陽の位置、空の色など、その時々のあらゆる条件が重なって生まれた、一期一会の景色。表情豊かな湖に見惚れているうちに、目的地のユヴァスキュラ駅に到着した。
-
湖水地方の中心部にある街・ユヴァスキュラは、20世紀を代表するフィンランドの建築家、アルヴァ・アアルトゆかりの地。駅から車で30分ほどの湖畔には、彼自身が夏の余暇を過ごすために設計した家が現存しており、夏季限定で一般公開されている。静かな湖のほとりに違和感なく存在する “おしゃれな廃墟” といった佇まい。生涯、建築とそれを取り巻く環境との調和を追究し続けたアアルトは、この家に50種類ものレンガやタイルを用いて、それぞれの耐久性を実験したそうだ。理に適う建築とは、人間にとっての便宜を優先するのではなく、自然と馴染む術を体現すること。そう教えられた気がした。湖の風景が堪能できる大きな窓をリビングに設置したのは、彼がこの地の自然を愛した証だと感じた。
- ディレクター 富浦花野

- 風景を楽しむ乗客

- 大きな窓からの眺め