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オランダ・ベルギー・ルクセンブルク 春のベネルクス3カ国の旅編 撮影日記

”鉄道の大聖堂”アントワープ中央駅
ベネルクスの旅2カ国目、ベルギー王国
オランダ南部の街ロッテルダムから国際列車でベルギーへと入る。
列車での国境越えは、中央アジア編で経験して以来2回目。EUなので出入国の手続きがいらないとはいえ、何かしら見どころがあるのではと気持ちを高ぶらせていたが、拍子抜けするほどあっけなく国境を越えた。線路沿いの道路にポツンと立てられた看板だけが、そこが国の境であることを示している。なんだか隣町に入ったぐらいの感覚だが、ベルギーは1830年に独立した国で、その前はオランダと共にネーデルラント連合王国だったことを考えると、実際そんなものなのかもしれない。
だが、アントワープの駅を降りると、すぐにここがベルギーであることを実感できる。「鉄道の大聖堂」と謳われる駅舎は息を飲むほどに壮麗で豪奢。美術館にでも来たかのような圧倒的な美しさに、早くも心を奪われた。街並みも素晴らしい。オランダで目にした、中世の面影を残す歴史的建造物や斬新なデザインの近代建築も良かったが、ここベルギーは19世紀末から20世紀初頭にかけて開花した“新しい芸術”を意味するアールヌーヴォー建築が多く、建物ひとつひとつが芸術的で見応えがある。
また、ベルギーの国土は九州と四国の間ぐらいの大きさしかないが、公用語が3つも存在する珍しい国。首都ブリュッセルを境に北部のフランダース地方ではオランダ語、南部のワロン地方はフランス語、そしてドイツに近い一部の地域ではドイツ語が話されている。ちなみに、首都ブリュッセルではオランダ語とフランス語の両方が公用語となっている。もともとオランダとフランスの領土でもあったことが背景にあるようだが、公式に言語境界線が設定され、教育システムや政治までもが言語別に分かれているというのだから驚きだ。
「美食の国」としても知られるベルギーは、美味しいものの宝庫。ビール、チョコレート、ワッフル・・・いろいろあるが、私のお気に入りは春の収穫時期にしか味わうことのできないホワイトアスパラガス。茹でたホワイトアスパラガスに細かくしたゆで卵とたっぷりのバターを混ぜたソースをかけて食べる「ホワイトアスパラガスのフランダース風」は絶品。緑色のアスパラガスは独特の強い味と香りがあるが、ホワイトアスパラガスはとってもマイルドで、甘い香りとやわらかな食感につい顔がほころぶ。
ベネルクスの旅、後半戦。まだまだ楽しみは尽きない。
ディレクター 廣澤 鉄馬
ブリュッセルのショッピングアーケード、
ギャルリ・サン・チュベール
ホワイトアスパラガスのフランダース風