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オランダ・ベルギー・ルクセンブルク 春のベネルクス3カ国の旅編 撮影日記

ホールン・メーデンブリック蒸気鉄道
機関車ベロとチューリップ
オランダの旅では、2つの蒸気機関車に乗車する。そのひとつがホールン・メーデンブリック蒸気鉄道のストームトラムだ。ストームはオランダ語で「蒸気」、トラムは「路面電車」のこと。ミニSLとも呼ばれる小型蒸気機関車だ。乗り込むのは金色の蒸気溜めが特徴の機関車。愛称はベロ。由来を聞くと、地元の人が蒸気溜めがベル(鐘)に似ているからだと教えてくれたが、公式ホームページでは蒸気の力で鳴らすベルが付いているのが理由だとされている。路面を走る際、周囲に機関車が近づいていることを知らせるベルで、チンチンチンという音が何とも心地良い。
プシューっと水蒸気を吐き出し、ベロがゆっくりと走り出す。車体は小さいが、線路幅はオランダ鉄道と同じ1435ミリ。実際に一部の線路を共有しているが、踏切とは連動していないため、その都度停車して人力で遮断機を上げ下げしなくてはならない。停車中、公園で遊んでいた子どもたちが歓声をあげながら駆け寄ってきた。笑顔で手を振る私には目もくれず、夢中で機関車を見ている。ベロはこの街の人気者。みんなベロが大好きだ。持て余した手を背伸びに変え、車内に目を移す。客車は満席状態。この鉄道は春から秋にかけてほぼ毎日運行しているが、4月下旬は特に観光客で賑わう。お目当ては車窓に広がるチューリップ畑。20キロ程の走行区間の内、わずか2、3キロの間ではあるが、それでも見応え十分。畑の周りにある牧場の牛が、よりオランダらしい風景を演出している。
こうなってくると我々としても欲が出てくる。チューリップ畑がある区間で、車窓も、盛り上がる乗客も、列車の走りも撮りたい。そこで、復路は二手に分かれて撮影することに。私が列車に乗り、カメラマンと撮影助手の二人は車で先回りして走りを狙う。しかしこれは賭けでもあった。もし間に合わなかったら元も子もない。車窓ロケでは良くやる手段だが、このドキドキがたまらなく楽しい。私の手持ちカメラはガタガタで使い物にならなかったが、走りはばっちり撮れた。チューリップの花と可愛らしいミニSLのコラボ。この時期しか見る事の出来ない貴重な光景に、これから先への期待も膨らむ。
ディレクター 廣澤鉄馬
人気のベロ号
車窓からもチューリップ畑が楽しめる