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オランダ・ベルギー・ルクセンブルク 春のベネルクス3カ国の旅編 撮影日記

フローニンゲン駅
自転車の街フローニンゲン
オランダ北部の中心都市、フローニンゲンに到着した。この辺りは紀元前3世紀頃には既に大きな集落が形成されていたそうで、13世紀頃になると商業都市として発展したという。
とにかく街を散策してみようと駅を出た途端、いきなりおかしな光景が目に飛び込んできた。駅前は広場になっているのだが、両端の地面がめくれ上がるようにスロープ状になっている。何かと思ったら、その地面の下には5400台もの自転車が収容できる巨大な半地下の駐輪場が。駐輪場というと何となく駅の脇に雑然と作られた風景をイメージするが、ここでは街の顔としてデザインされ、駅の正面に堂々と作られている。この発想の割り切り方に、驚かされた。
そもそもオランダは世界有数の自転車大国。交通整備や自然環境への配慮から国として自転車の推進に力を入れている。駅をはじめ街中にいくつも駐輪場が整備され、ほとんどが無料。平地が多く走りやすいこともあり、交通手段は自転車が基本で、荷物があったり遠距離移動の時に仕方なく自動車を使っているようにさえ思える。
フローニンゲンはオランダの中でも特に自転車保有率が高く、人口20万人に対し自転車は30万台以上。道路には広々とした自転車専用レーンが敷かれ、交差点には自転車用の信号機も設置されている。街の中心部は車の進入が禁止され、街から車を排除した完全なる自転車社会が成立している。でもそれも今でこそ。かつては車で溢れ返り排気ガスが充満し、事故も頻繁に起きていたそうだ。そんな車社会の限界をいち早く見抜き、40年近くかけて自転車中心の都市計画を進め「自転車の街」を作り上げたのだ。
何より感心したのは、小綺麗に着飾った女性が、信じられないぐらいボロボロの自転車に乗っていたりすること。古い自転車を使い続ける、そのことが誇りなのだ。いろんな価値観があると思うが、車でいうとクラシックカーに乗るような、ある種のステータスを感じているように思える。きっと私の知らない問題点もあるのだろうが、現代で叫ばれている“持続可能な街づくり”を成功させている希少な例であることは間違いない。
ディレクター 廣澤 鉄馬
駅前の駐輪場
自転車専用レーン