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オランダ・ベルギー・ルクセンブルク 春のベネルクス3カ国の旅編 撮影日記

ハーレムからライデンの沿線にはチューリップ畑が広がる
オランダの旅、始まる。
「春の陽気」というには強すぎる日差しが、空港に到着した我々の顔を照りつける。
ヨーロッパ北西部に位置するオランダは、北と西を海に面し、吹き付ける強い風で天候が変わりやすく、比較的曇りの日が多い。だが予報によると、ここ数日は晴天が続くようだ。まだ4月半ばで、少し肌寒いだろうと上着を着込んでいた背中に汗が滲む。
今回のロケ最大のテーマは、ずばり「花」。オランダは世界が認める花大国。九州ほどの小さな国ながら、花きの生産額はアメリカに次いで第2位。中でも世界一のシェアを誇るのがチューリップだ。16世紀にトルコから伝わり瞬く間に人気を呼んだ。17世紀にはヨーロッパ中の人々が球根を買い求めるようになり「チューリップマニア」と呼ばれるバブル経済を引き起こした。当時、球根1個で大豪邸が建つ程だったというから驚きだ。そうした歴史からオランダで生産されるチューリップは観賞用の花より球根販売用が主流。これが我々撮影する側としては大きな問題となっていた。なぜならチューリップの開花時期は4月半ば〜5月上旬なのだが、高品質で大きい球根を育てるために花が咲くとすぐに刈り取ってしまうのだ。おまけに畑ごとに開花時期は微妙に異なり、車窓一面のチューリップ畑を撮影する為には場所も限られてくる。
ホテルに荷物を置き、早速チューリップ畑の下見に出かける。沿線にチューリップ畑が広がるのは、主にオランダ西部の北海沿いを走る路線。実はロケ出発直前まで、この路線の撮影は1週間後に予定していたのだが、晴天続きで開花が早まりそうだということで、急遽スケジュールを大きく変更していた。オランダは鉄道が発達し列車の本数も多め。とはいえ常に移動して回る車窓ロケでは、そう簡単に予定を組み替える事は出来ない。咲いていなかったら…とばかり考えていた私は、あまりの光景に一瞬それが何だか分からなかった。まさに文字通りの“花の絨毯”。赤、白、黄…様々な色のチューリップが綺麗に列をなして咲いている。予想を遥かに超える見事さ、美しさ。しかも花は陽が当たっているかどうかで映え方が全然違う。舞台は整った。花の国オランダは、我々を快く迎えてくれたようだ。
ディレクター 廣澤鉄馬
満開のチューリップの花が刈り取られていく
駅のホームにも花屋がある