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オランダ・ベルギー・ルクセンブルク 春のベネルクス3カ国の旅編 撮影日記

教会をリノベーションした書店「ワーンダース・イン・デ・ブルーレン」
中世都市ズウォレの新たな魅力
ロケ開始から1週間。快晴続きだった天気がここにきてぐずつき始めた。風が強いので雲の流れが早く、雨雲がきたなと思うと土砂降りになり、雨雲が去ると一気に晴れ間が広がる。雲が雨を降らせるという当たり前のことに妙な納得感を覚えつつ、雨雲レーダーとスケジュールに葛藤していた。
ただ、そんな天気とは裏腹に心は晴れ晴れとしていた。というのも、この1週間アムステルダムを拠点にオランダ西部のごく一部を回っていただけだったので、”旅感”に少し物足りなさがあったからだ。でもここからはオランダ北東部を巡る。決して情報の多い地域ではないが、そういう場所こそ発見があり面白い。
北東部の中心都市フローニンゲンを目指し、まずは中継地点のズウォレという街に向かう。ズウォレは中世の時代にハンザ同盟都市として栄えた街。ハンザ同盟とは、13世紀ごろから北ドイツの諸都市を中心に結成された都市同盟で、北海とバルト海周辺の貿易を独占し、当時の経済に大きな影響を与えたという。
掘に囲まれた街の中心部には、城壁や教会など古い建物が今も多く残り、中世の面影を色濃く感じさせてくれる。だが、それだけだと歴史深い街のひとつにすぎない。この街に立ち寄った理由は他にある。それは、500年以上前の古い教会をリノベーションして作られた本屋「ワーンダース・イン・デ・ブルーレン」だ。中に入ると柱や天井などは教会の趣そのままに、壁一面にぎっしりと本が並び、カフェも併設されたオシャレ空間が広がっている。
じつは近年、オランダはリノベーション建築が大人気。この本屋は2013年に作られたのだが、2006年には既にオランダ南部の街マーストリヒトで同じく教会をリノベーションした本屋が開店しており、そちらはイギリスの新聞で「世界で最も美しい本屋」10選に選ばれるほど、注目を集めている。
時代と共に街の歴史が薄れていく中、ただ建物を残すのではなく、そこに人が集まる仕掛けを作ることで、改めて歴史に関心を持ってもらう素晴らしいアイデア。今後またどんどんとこうしたユニークな建物が増えていくことだろう。とても楽しみである。
ディレクター 廣澤 鉄馬
外観は15世紀の教会の佇まい
中世の面影のこるズウォレ