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花とアルプス 初夏のスイス登山鉄道の旅編 撮影日記

中世の面影を残すルツェルン
スイスの町探訪
町から町へと列車で移動を続ける撮影隊。九州ほどの国土のスイスだが、たった1駅で雰囲気がガラリと変わることもしばしば。スイスは、フランス語やドイツ語、イタリア語など話す言葉が場所によって分かれている上、地方特有の訛りもあるため、チューリッヒ在住のコーディネーターさんでさえ時々コミュニケーションをとるのに必死になっていた。
言葉が変われば、不思議と町の見え方も違ってくる。個人的な印象だが、フランス語圏のモントルーはどこか優雅な雰囲気を感じたし、ドイツ語圏のルツェルンは格式高い荘厳な印象を受けた。
スイスに訪れる人もさまざまだ。列車の乗客にどこから来たのか聞いてみると、イタリア・ミラノからの日帰り旅行だったり、パリからハイキングに来ていたりする人もいて、まるでヨーロッパ中の人達がスイスに休暇を楽しもうと集まっているようだった。東京の人が軽井沢に行くような感覚に近いのかもしれない。
過去には有名人も大勢スイスに訪れている。その魅力にとりつかれ、チャップリンやオードリー・ヘップバーンのように余生をスイスで過ごした人も少なくない。
町の数だけ楽しみ方があるのが、スイスの魅力の一つだろう。
今回、私が一番気に入った町は、マイリンゲンという小さな田舎町。メレンゲ発祥の地とも言われている。駅から降りて数分歩くと公園があり、シャーロック・ホームズの銅像が建っている。ロンドンが舞台のホームズがなぜ?番組では紹介することができなかったが、実はこの町の郊外に、シャーロック・ホームズが宿敵モリアーティと格闘して落ちたとされる「ライヒェンバッハの滝」がある。
実際に滝の近くまで行ってみると、たしかに豪快な水しぶきだ。この滝を見て、「ここからホームズを落としてしまおう」と考えた作者コナン・ドイルの心境はどのようなものだったのだろうか。
大のシャーロキアンである私は、夕暮れに染まっていくマイリンゲンの町を見ながら、コナン・ドイルもこの風景を見たのだろうなあと物思いにふけった。
ディレクター 岩田有正
モントルーの案内標識はフランス語
物語の舞台となったライヒェンバッハの滝