世界の車窓から

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ローマ発 真夏のイタリア縦断1500キロの旅 撮影日記

トスカーナを走るローカル列車
トスカーナと聞いて思い浮かべるもの
トスカーナと聞いて思い浮かべるのは・・・、緑鮮やかな丘陵地帯・・・連なる糸杉・・・まるで絵本の世界に飛び込んだかのような、のどかな田園風景。
フィレンツェからシエナへ向かうローカル列車で、私はそういった美しい景色を撮影したいと意気込んでいた。それがいざ車窓を撮ろうとすると、人の目ではきれいに見えていても、カメラを通すと思った以上に線路沿いの木々に阻まれて、撮影にはなかなか苦労した。しかし今回は、この路線のドローン撮影も予定していた。撮影当日の天気は晴天。現地のドローン撮影専門のクルーチームが、トスカーナの美しい景色の中を走る列車を見事に撮影してくれた。
もう一つ、トスカーナと聞いて思い浮かべるのは、豊かな自然に人々が寄り添う、ゆったりとした暮らしだ。実際トスカーナではそうした暮らしの体験を求めて、“アグリツーリズモ”という、農業と観光を掛け合わせた農園滞在型の旅のスタイルが人気を集めている。そこでトスカーナ地方のシエナ原産のチンタ・セネーゼという豚を育てている農園を取材させてもらった。起源は古代ローマ時代に遡る古い品種の豚だ。飼育には自由に動き回れる広い土地や、木の実やキノコなど自然の餌が必要で、手間と時間がかかるそうだ。そのため飼育農家が減り、一時は絶滅の危機にあったのだが、近年、食の伝統を守ろうと、地元の人々の手によって守り育てられている。
チンタ・セネーゼを撮影するにあたって、1つハプニングがあった。オーナーの車の後について、丘の上の敷地に向かったのだが、いつもと様子が違うことに気づいたのだろうか?豚たちが一斉に遠くの方へ逃げてしまった。カメラの望遠レンズで探しても逃げた豚は1匹も見つけられない。本当に広大な土地の中で自由に動き回って育っていることを目の当たりにする羽目になってしまった。撮影的には苦い思い出なのだが、オーナーがランチにふるまってくれたチンタ・セネーゼの生ハムやベーコンのパスタは絶品で、何だか美味しい記憶だけが今も残っている。
ディレクター 福良 美佳
背中の白い帯がトレードマーク
チンタ・セネーゼを使ったパスタ