世界の車窓から

トップページ > 撮影日記

ローマ発 真夏のイタリア縦断1500キロの旅 撮影日記

丘の上の街オルヴィエート
花の都・フィレンツェへの旅路
ローマから、フィレンツェに向かう鉄道旅。ノンストップの高速列車ではなく、停車駅の多いインターシティに乗った理由の一つが、立ち寄りたい街があったからだ。ローマを出発して1時間15分程で到着するオルヴィエート。断崖絶壁の丘の上にある、美しい天空の街だ。駅前にはケーブルカー乗場があり、3分程で市街地へ行くことが出来る。わずかだが、ケーブルカーに揺られる時間が、どこか特別な場所へと誘うワクワク感を演出してくれる。
オルヴィエートは、日本ではあまり知られていないが、中世の面影を残した古い街並み、そして丘の上から見渡す大パノラマなど、魅力あふれる街だ。中でも、大聖堂の美しさはひときわ目を引く。内部には、ミケランジェロにも影響を与えたと言われる美しいフレスコ画が描かれ、礼拝堂を極彩色に彩っている。ローマから日帰りでも気軽に行けるオルヴィエートは、穴場の観光名所だと思った。
私たちが乗ったインターシティは、フィレンツェの中央駅”サンタ・マリア・ノヴェッラ駅”には寄らずに北上していく。そのため、手前のアレッツォ駅でローカル列車に乗り換えた。実はこのアレッツォは、イタリア映画の名作「ライフ・イズ・ビューティフル」の舞台となった街。すごく訪ねてみたかったのだが、今回は時間が足りず断念。後ろ髪を引かれる思いで、フィレンツェへと急いだ。
フィレンツェの街で最初に向かったのは、街を一望できるスポット、ミケランジェロ広場。ドゥオーモの丸屋根にアルノ川に架かるヴェッキオ橋。眺めはまさに「This is Firenze」。写真で何度目にしていても、訪れる価値のある場所だ。実際に街に降り立てば、どこを切り取っても絵になる、本当に美しい街だった。フィレンツェの美しさは、街並みや建築だけではない。この街で生み出された工芸品も素晴らしかった。取材に訪れたのは、1786年創業の絹織物の工房。貴族たちが愛用してきた生地が、今も当時の織り機を使って紡がれている。色彩や光沢、絵柄、どれも素晴らしくうっとりする。少しだけでもお土産に、と思って値札をみたのだが、1mが1万円以上もした。この価値が伝わるように撮影しなければ、と身が引き締まった。
ディレクター 福良 美佳
ケーブルカーでオルヴィエートの街へ
フィレンツェの絹織物