世界の車窓から

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黄金色の秋 ドイツ東部をめぐる旅 撮影日記

チェコ鉄道の列車
国際特急列車ユーロシティの旅
旅はベルリンから南へ。古都ドレスデンを目指し、最初に乗る列車はユーロシティ。始点のハンブルクから、チェコとスロヴァキアを経由してハンガリーのブダペストへと向かう国際特急列車だ。機関車と客車はチェコ鉄道のもの。私が初めて「世界の車窓から」の取材に行ったのはチェコで、同じ路線のユーロシティに乗ったことがあった。大きな荷物を抱えた乗客たちの姿に、当時の懐かしい記憶が蘇る。
街ではほとんどマスク姿を見かけなかったが、真面目でルールに厳しいドイツ人は皆、乗車すると同時にマスクを着ける。それでも、かわいい熊のキャラクターマスクの子どもや、一瞬だけマスクを外してビールを飲む夫婦を見ると、存分に旅を楽しもうという感情や意思が読み取れた。車両を渡り歩くと、台湾の旅行客、ハンガリーに帰省する家族など、国際色豊かな人々が目に留まる。4か国を巡るユーロシティは、旅人の風貌も、旅の目的もそれぞれ違うため、バラエティに富んだ話を聞けるのが興味深い。
コンパートメントでは女の子6人組がはしゃいでいた。ハンブルクのギムナジウム(10歳頃から高校までの一貫校)に通う大の仲良しで、チェコのプラハまで遠足に行くそうだ。この学校では、遠足は3年ぶりだという。秋に新年度を迎え、日本の高校2年生の学年になったばかりの彼女たちは「来年は大学受験で忙しくなるから、みんなで思い出を作れるのが嬉しいの!」と笑顔で応えてくれた。ハンブルクからプラハまでは7時間もある長旅だが、それでも元気いっぱいなのに納得した。列車の移動も、大切な宝物のような時間なのだ。
ドレスデンからチェコとの国境沿いまではエルベ川沿いを走る近郊列車に乗車。平日のはずが大勢の観光客と出会う。ドイツでは10月頃に2週間ほどの秋休みがあり、家族や友人と自然の中で過ごしているそうだ。秋休み、新学期、黄金色の紅葉、オクトーバーフェスト…、この国では秋は特別な季節なのだという思いが、旅をしながら日に日に強くなっていった。撮影が終わる頃には、冬の足音が聞こえてくる。一瞬で過ぎ去ってしまう貴重な秋を、ドイツの人々と一緒に満喫しようと思う。
ディレクター 小峰 康平
ハンブルクの女子学生
エルべ川