黄金色の秋 ドイツ東部をめぐる旅 撮影日記

- ベルリンの壁
- 黄金色に染まるベルリンの街
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日本から海外に渡航してロケが出来なくなって3年。ようやくリモートではなく現地に行っての撮影が再開された。その第1回目が「秋のドイツ」だ。まずは、ディレクターが単身で乗り込み、現地の撮影スタッフ(日本人とドイツ人)で取材を行うこととなった。いつもと勝手が違うため不安もあったが、過去に訪れたことがあったのが幸い。責任感溢れるドイツの人々の仕事ぶりを思い出すとそれも和らいだ。スタート地点のベルリンは初めてだった。この街でイメージするのは、学生時代に観た1987年製作の映画『ベルリン・天使の詩』。天使が見た世界をモノクロ、人間が見た世界をカラーで描いているが、1989年11月のベルリンの壁崩壊より前の作品なので、旧東ベルリン側はほぼ描かれない。「東も西もない」色づいたベルリンを見ることが出来るのが感慨深かった。
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ベルリンに降り立ったのは、10月初旬。この季節はドイツで「ゴールデン・オクトーバー」と呼ばれ、木々の葉っぱが美しい黄色に色づく時期だという。実際、街は黄金色に染まっているようだった。この色は、ドイツでは国旗の色にも使われている特別なもので、国旗の黒・赤・金は「自由と統一」を意味している。(実は、黄色ではなく、金色なのだそう)。ブランデンブルク門を正面から見ると、柱の間には黄金色のイチョウ並木。ドイツは日本よりも緯度が高いため1か月ほど早く秋が進み、すでに鮮やかに色づいている。そして、黄色いトラムも街に彩りを加えていた。ベルリン出身のスタッフによると、「トラムの路線は、社会主義政権下にあった旧東ベルリン側に張り巡らされている」という。街を歩くと、東と西に分かれていたことを意識せざるを得なかった。
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街を撮影した日は、東西ドイツ統一の32回目の記念日だった。例年はブランデンブルク門に続く大通りでイベントが開かれて賑わうが、残念ながら今年の開催はなかった。他に、何か特別な催しをやっていないか…と、ベルリンの壁の一部が残るイーストサイドギャラリーを訪れる。出会ったのは、壁画の写真を撮ってはしゃぐスペイン出身の女の子3人組や、壁の傍で絵を描くのに夢中な子どもたち。そこには祝日を楽しむ人々の姿しかなかったが、歴史の上に成り立った何気ない日常こそ特別なもののように思えた。これからの旅では、撮影スタッフとの心の壁も取り払ってドイツの秋の風景と共に人々の今を捉えていきたい。
- ディレクター 小峰 康平

- ブランデンブルク門

- ベルリンの街中を走るトラム