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黄金色の秋 ドイツ東部をめぐる旅 撮影日記

街を駆け抜けるトラム
花の都エアフルトを彩る人々
2022年のドイツ統一記念日の祝典が開かれた、テューリンゲン州の州都エアフルト。都として1200年以上の歴史があり、街にはゴシック様式の美しい大聖堂など古い建物が多く残っている。この街は、暮らしやすい街づくりや環境保全に力を入れるエコシティでもあり、市街地は車の乗り入れが禁止。その代わりにトラムが活躍している。市民の足であり、観光客の名所への移動手段でもあるトラムに乗って、私たちも車窓から街を撮影する計画だった。トラムは次から次にやってくるのだが...、停車時間が短くて窓ふきが出来ず、綺麗な景色が思うように撮れない。細い路地を縫うように走るので、建物との距離が近く、風景は一瞬で過ぎ去ってしまう...。
事前の下見をしないこのロケでは、「実際に来たら思っていたのと違う!」は、よくあること。切り替えが肝心だ。トラムを降りて街を歩くと、植物をデザインに取り入れたアール・ヌーヴォー建築や、街角を彩る花や木々が目に留まる。旧東ドイツ時代の1970年代から古い建物を修復して、美しい街並みを守ってきたエアフルト。花を飾る人々の思いを感じて、「花の都を駆け抜けるトラム」は一際、印象的に映った。
街の歴史を物語る名所「クレーマー橋」も撮影した。橋の上に家が建てられたものは、イタリアのフィレンツェにあるヴェッキオ橋が有名だが、こちらはヨーロッパ最長で、長さは120メートルに及ぶ。橋に足を踏み入れると、タイムスリップしたかのような中世の雰囲気に包まれた。石畳の通りの両側にはずらりと木組みの家。川が見えないので、知らずに通れば橋とは気づかないかもしれない。かつて交易で栄えてきたこの街では、橋に職人や商人が住んで取引がされていたそうだ。今でも職人たちが暮らしていて、工房や店内を撮影することが出来た。花をあしらった陶器を作る花瓶職人や、橋に建つ家をモチーフにした木製玩具の職人。それぞれの商品から、街への愛が感じられた。思わぬ出会いが、旅にも、番組にも、彩りを加えてくれるのだ。
ディレクター 小峰 康平
クレーマー橋の商店街
花々をあしらった陶器