黄金色の秋 ドイツ東部をめぐる旅 撮影日記

- レスニッツグルント鉄道
- 毎⽇⾛り続ける!ザクセン州の蒸気機関⾞
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ザクセン州を旅する中で、どうしても蒸気機関車を撮影したかった。東西冷戦時代まで、ドイツ東部では移動や輸送手段として蒸気機関車が現役で走り続けてきて、いまでも数多くの機関車が残っているからだ。中でも、ザクセン州には有名な路線がいくつもある。私たちが訪れたのは、ドレスデン近郊にある1884年開業の「レスニッツグルント鉄道」。平日も休日も運行し、生活路線として全ての列車に蒸気機関車を使用する珍しい鉄道だ。
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週末の撮影を予定する私たちは、前日の夜に撮影ポイントなどの情報を仕入れようと始発駅ラーデボイル・オストを訪れた。その日の撮影が遅くなり暗くなり過ぎたので徒労に終わると思ったが…、ホームに蒸気が上がっているのが見えてくる。サラリーマンや学生など平日の利用客を送り届けた機関車のメンテナンスの時間だったのだ。カメラマンはすかさず、カメラを手に取って撮影を始める。毎日運行する蒸気機関車だからこそ出会えた思わぬ収穫だった。幸先の良いスタートにワクワクしたが、一抹の不安もあった。どんな人たちが乗車して、どんな雰囲気を作るのかで内容は大きく変わる。週末、特別運行でもないのに、そもそも客はいるのだろうか…。
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土曜日の朝。観光客がやって来るところを撮影しようと、出発の1時間以上前に駅へ。ふと客車に目をやると、「RESERVIERT(予約)」の張り紙を見つけて心が躍った。車内はみるみる観光客の団体でいっぱいに。親睦を深めにきたマーチングバンド部やハイキングに来たワンダーフォーゲル部。さらに、ドイツ鉄道に勤務していた元運転手の仲間たち。みんな片手にザクセン州のビールやワインを持って大騒ぎだ。1920年代に作られた蒸気機関車は、時速25キロでゆっくりと住宅街から森の中へ。平原や池、動物たち、次から次に変わる風景が堪能できる1時間程の旅だった。実は、平日の取材にするか迷っていたが、週末に来て良かったと思う。歴史も、自然も、文化も、思いっきり楽しむ人々が最高の雰囲気を作ってくれた。
- ディレクター 小峰 康平

- メンテナンス中の蒸気機関車

- マーチングバンドの団体客