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ポーランド編 撮影日記

スモークチーズを作る山小屋
ザコパネの魅力
旅も中盤に差し掛かった。ここまで雨に降られることもなく、撮影は順調そのもの。これは現地の人に言わせると大変珍しい事らしく、我々はポーランドのお天道様に歓迎されているようだ。この日向かったのは、山岳リゾート地ザコパネ。到着後メインストリートへ行くと、平日にも関わらず多くの人で賑わっている。ほとんどが登山やトレッキングにきた観光客で、聞くと半分以上がリピーターだそうだ。山はとかく人を魅了する力を持っているが、山の少ないポーランドにおいてザコパネは特に人を惹き付けるのだろう。国を代表する音楽家カロル・シマノフスキや建築家スタニスワフ・ヴィトキエヴィッチなど多くの芸術家達もこの地で数々の作品を生み出してきた。特にヴィトキエヴィッチはザコパネ・スタイルと呼ばれる建築様式を確立させ、今ではザコパネ周辺に広く普及している。
郊外では、所々で白い煙が立ち上っている。名産のスモークチーズを作っているのだ。訪ねてみると主人が色々説明してくれた。曰く、ザコパネのスモークチーズは一説によると17紀頃から作られていたそうだ。中でもオスツィペックという種類は最も伝統があり、製法をマスターしたごく限られた人にしか作れないという。スモークチーズを愛するが故か、おしゃべり好きなのか、主人の話はいつまでも続いた。撮影後、ふと景色に目を移すと、青い空、色づき始めた樹々、牛や羊が草を食み、鶏がいて犬がいて、三角屋根の家に洗濯物がはためいている。牧歌的という言葉では足りない程の何とも心和む風景が旅の疲れを癒してくれた。
夕飯時にスモークチーズを食べてみた。濃厚でこってりした味の中に、羊乳独特の風味があり、少し癖が強い。ポーランド人の運転手も、何でも残さず食べる築館カメラマンもあまり手をつけていなかった所を見ると、苦手な人は多いかもしれない。個人的にはスモークの風味がザコパネの風景を思い出させ心和ませてくれるので、食してみることを是非オススメしたい。
ディレクター 廣澤 鉄馬
山小屋でスモークされるチーズ
ザコパネ駅のホームにて