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ポーランド編 撮影日記

湖水地方を走る列車
膨らむ、旅への期待
9月末、日本では30度を超える残暑に見舞われている中、僕らはフリースの上にダウンを羽織って歩いていた。ここはポーランド北部、バルト海沿岸の港町グダンスク。街も人もすっかり秋の装い。ただ紅葉にはまだ早いようで、樹々が色づくのはもう少し先になりそうだ。
ポーランドはどんな国か。歴史は調べれば分かるが、他の面ではそんなに情報が多い国ではない。最近ではサッカーの松井大輔選手が、グダンスクのチームに移籍した事で興味を持った人もいるだろう。現地では結構盛り上がっていて、よく「マツイ、マツイ」と声をかけられる。僕を松井と勘違いする人までいる。そもそもポーランドの日本への関心は高い。実際、子供たちがいたかと思うと「コンニチハ!」と挨拶をされたりする。美人がいたのでつい「おー、かわいい」なんて心の声を漏らしていると「何ノ撮影デスカ」と聞かれて、思わず英語で応える焦りぶり。実は日本への関心は今に始まった事ではなく、1900年代初頭から日本文化が研究されていて、中でもワルシャワ大学の日本語学科はヨーロッパにおける日本研究の中心的存在。今回ロケに同行した通訳もそこの学生。僕なんかよりずっと難しい和書を読んでいるし、アニメに関しては日本の“オタク”たちにもヒケを取らない。
グダンスクからまず目指したのは、北東部の湖水地方。あまりイメージがないかもしれないが、ポーランドは手つかずの自然が多く残る国。なかでも傑出しているのが湖水地方で、実に2000以上もの湖が点在している。湖は、氷河期に削り取られた堆積物によってできたくぼみに、水が溜まって形成されたのだそうだ。車窓に流れる湖の風景はとても素晴らしく、ついつい見入ってしまった。ただ、個人的にはポーランドの空も好きだ。山がないので空がとにかく広い。秋は常に雲に覆われているが、隙間に見える青空と差し込む陽の光、時間ごとに空の色が変わって行く様は、本当に美しい。
早くもポーランドのファンになりつつある自分がいた。
ディレクター 廣澤 鉄馬
港湾都市グダンスク
車窓に流れる、遮るもののない空と平原