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ポーランド編 撮影日記

ザモシチの広場
理想都市ザモシチ
南東部の小さな街ザモシチにやって来た。曇りがちのこの時期に珍しく晴れ渡った空。今までの寒さが嘘の様な暖かな陽気。街を歩き回って汗だくになった僕らは、広場で休憩する事にした。アイスを買って来てベンチに座る。言葉が通じず、一つはコーンを持つ手が震えるほど盛られてしまった。こんなに誰が食べるんだと思いつつ、しれっと築館カメラマンに渡すと、目を輝かせて食べ始めた。この人は出された物は必ず食べ切る。しかも美味しそうに。撮影の腕はもちろんだが、そんな人間性が好きで良く仕事をお願いする。ちなみにもう一人、平林聡一郎カメラマンを加えた3人が今回のチーム。聡ちゃんはテレコムスタッフ所属の若手カメラマン。車窓ロケは気心知れたチームで行うのがベストだ。
広場ではたくさんの人が昼下がりの時間を楽しんでいた。本を片手にうたた寝しているおじいさん、井戸端会議しているおばさん達、鳩を追いかける子供…。そこには何とも平和で穏やかな空気が流れている。それが整然とした美しい街並に溶け込んでいてとても雰囲気が良い。
この街は1600年、ヤン・ザモイスキという一人の貴族の構想により建設された。イタリア・パドヴァの街並に感銘を受け、それを模した彼の理想の街を作り上げたのだ。さらにザモシチは優れた要塞都市だった事でも知られている。街を守る為もあるが、何よりその街が作り出す空気、雰囲気を守りたかったのだろう。彼がパドヴァで心打たれたのも、そんな街の空気だったのではないか。この街を見ていると、それが見事に実現されているのを感じる。建設から400年以上経った今でもだ。
ふと横を見ると、特大アイスをほおばる築館さんの周りに、コーンの粉を狙ってものすごい数の鳩が集まっている。かなり異質な光景のはずだが、それすらも何だか画になっている。ザモシチが生み出す力には本当に感服する。きっとザモイスキもその様子を見たら、大いに満足するに違いない。
ディレクター 廣澤 鉄馬
ヤン・ザモイスキの銅像
車窓 ポーランド編 撮影隊