世界の車窓から

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ポーランド編 撮影日記

重要な列車の走り撮影の様子
奇跡の連続
散々語り尽くされている事だが、車窓で欠かせない撮影の一つに列車の客観撮影がある。多くの国は、日本ほど時間が正確ではないし本数も少ない。車両の色、形も統一されていないので、狙い通りの列車が撮れる事は少ない。だから上手くいった時の感動は大きい。実は今回のロケで、僕と築館カメラマンが歓喜した、奇跡の1カットがある。それはポズナンからトルンへ向かう時の事。
その日は午前中ポズナンの街を撮影し、各駅停車でトルンに向かう予定だった。各駅停車は1日に何本も走っているので、客観撮影は翌日する事に。ところが、想定外の列車がホームに現れた。初めて見る2階建ての列車。聞くと、この区間は数種類の車両を使用していて、何時にどの列車が走るかは決まっていないという。とはいえ同じ列車が来るまで待つ程の時間の余裕はない。どうしたものか思案していると、途中駅で急にドタバタと大勢の乗客たちが降り始めた。この先の駅に先着する列車が停まっていて、そっちに乗り換えていたのだ。だとすると僕らも二手に分かれ、先回りして客観を撮る事が出来るはず。運良くドライバーも近くにいるとの事で、いざ作戦決行。先の駅で車に乗り換え、撮影出来そうな場所へ移動する。
しかし思ったよりアドバンテージが少なく、あっという間に列車に追い越されてしまった。必死で追いかけるも差は縮まらない。だめか。諦めかけたその時、電話が鳴った。「車が見える!」。見ると、なんと列車が近くを走っているではないか。すぐに車から飛び出し、草薮をかきわけ、水たまりを飛び越え、転びそうになりながら全力疾走で線路へ向かう。三脚を立てカメラを回した瞬間、前を列車が走り抜けていった。その間わずか1分。まさか撮れるとは思わず、あまりの嬉しさに顔の表情が固まらない。エヘラエヘラ笑いながら戻ってくる僕らを見てドライバーは大笑いしていた。車窓ロケはこうした小さな奇跡の連続だ。これだから車窓はやめられない。
ディレクター 廣澤 鉄馬
トルン駅のホームにて
旅の終着地グダンスク