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世界水泳ローマのシンクロ会場にはイタリア旋風とカナダ旋風が吹き荒れています。
と言うよりは、日本ブランドが凋落してしまったと言ったほうがいいかもしれません。
日本シンクロ界史上最年少の18歳のデュエット乾友紀子さんと酒井麻里子さんも、練習の過程ではメダルを意識していたことはいうまでもないことです。
しかし、シンクロ日本ブランドは株価暴落状態です。一度欠点が目に付いてしまうと、ジャッジにとっては低い得点を出すのが当たり前になってしまうようです。
そしてカナダとイタリアが急上昇。
シンクロ界の勢力図が猛烈な勢いで変化している中、試合に出て行く選手たちの気持は複雑でしょう。
デュエット決勝が行われた7月24日も暑い一日でした。
観客はほとんどビーチにいる気分のようです。
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イタリアへの応援 |

ほとんどビーチサイド |
それでは今日も、元世界チャンピオン、立花美哉さんの解説で、デュエットの試合を振り返ってみましょう。
元世界チャンピオン立花美哉の眼 その8
7月22日「デュエット・フリー」 |
 立花美哉さん
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1位 ロシア:
ナタリア・イシェンコ(23歳)
スベトラーナ・ロマーシナ(19歳) |

ロシア |
このデュエットは非常にクオリティーが高いです。
二人とも技術がしっかりしていて、さらに同調してくるので、文句のつけようがありません。
テーマはシークレット・エージェンシー
私自身の個人の意見としては、前チャンピオンよりも構成にテーマ性があり、新しいことに挑戦しているなと言う印象を受けました。
よく練習をつんでいることが良くわかります。
ここまで選手を作り上げ、構成を作り上げたダンチェンココーチは素晴らしい。
<決勝>
改めて、敵なしだと思いました。
理由は、マイナス点をつけられないからです。
コーチが凄い。
ダンチェンココーチは五輪2連覇のエルマコワ&ダビドワのデュエットを作ってきましたが、今回の二人はそれを上回るデュエットと言えるかもしれません。 |

ロシアのダンチェンココーチ |
かつてイシェンコは大きすぎて速い動きができないと言われていましたが、今はきちんとできるようになっています。
ロマーシナは技術が非常に正確で、イシェンコよりも軸がぶれません。
パートナーとしてはあれ以上の素材はいないと思うくらいのものを持っている選手です。
2位 スペイン:
ジェマ・メングアル(32歳)
アンドレア・フェンテス(26歳) |

スペイン |
妖艶な雰囲気をかもし出しているのは本当に素晴らしいと思います。
手足の使い方の自由さ、思わぬところで手と足を使って演技をしているのでメングアルらしいなと思いました。
しかしあれだけ同調性に欠けてしまうと、ロシアと戦うことを考えると非常にもったいないですね。ショーではなく勝負なので。
インタビューゾーンにきたメングアルは「あまりにたくさん出場したので、振り付けを忘れそうになり、今日デュエットの練習前にアンドレアと確認をしなくちゃいけなかったほどよ」とおどけてみせていました。
<決勝>
予選よりもきっちり決めてきていました。
彼女たちの凄いところは複雑な角度で足技の振り付けをしていたり、自由さを失わずに手の動作を行われることに尽きますね。
3位 中国:
蒋 テイテイ(22歳)
ブンブン(22歳) |

中国 |
五輪のときの構成は数箇所残っているくらいで、ほとんど変わっていました。
これがコーチの好みなんだなと思いました。
私から見れば、彼女たちの手足の長さを生かした構成部分がなくなってしまったのがとても残念でした。
彼女たちが特をしているのは、恵まれた身体で、他の組とは違うさわやかさを演出すること。
<決勝>
予選よりも、勢いがあり、出来としては良かったと思います。
ただ、今回、技術の正確性の甘さや、弱さが、少し印象付けられてしまいました。 |

整形手術をしてより美人になりました |
4位 カナダ:
マリー・ピエール・ブドローガニオン(26歳)
クロエ・アイザック(18歳) |

カナダ |
オリンピックと同じ演技で、とてもカラーがはっきりしています。
テーマは「ドラゴン」
難しい技が入っているという印象はありませんが、カナダらしい独特の世界観を感じるものです。
出来としては、数箇所、同調性の乱れが目立ち、テクニカルメリットで点数が伸びませんでした。9.3が出ていましたね。
<決勝>
足技に関しては予選よりも切れが出ていて、全体的に予選よりもいい出来でした。
予選でイタリアに3位とリードされていたので、何とか挽回しようという心意気が感じられました。
デュエットの1人は乾と酒井と同じ年代のジュニア上がりの選手なので、「若さ」を理由に負けることはできないという証明になりますね。
5位 イタリア:
ベアトリッチェ・アデリッチィ(20歳)
ジュリア・ラビ(23歳) |

イタリア |
<予選>
最初の立ち姿や、1ラップめの立ち泳ぎになったときのスケールと存在感は凄いと思います。
今イタリアチームそのものがのりにのっているので、上位に食い込みたいと言う意気込みが凄く感じられます。ただ、正確な技の軸や切れは欠けていると思います。
<決勝>
予選よりも中盤からスピードも落ちて、出来としては予選のほうが良かったように思います。
テクニックの正確性や同調性には甘さが見られますが、スケールが非常に大きい二人。
今回カナダに順位をひっくり返されてしまったが、次回これにより大きく成長してくるでしょう。
6位 日本:
乾 友紀子(18歳)
酒井麻里子(18歳) |


日本 |
<予選>
北京五輪で鈴木&原田の二人が使ったプログラムをベースにしています。構成内容は多少変わっていますが、展開の速さや、難度も高いものが入っています。
屋外プールと言うこともあるが、動きの中で、もっとスピード感、思い切りが欲しいです。
あわせるということは、凄く必要なこと。
予選の出番がトップだったこともとてもかわいそうなことですが、二人ならではの際だつものが感じられませんでした。
際立たせるものがない限り、勝てません。
イタリアに勝つためには、ものすごい切れ、ロシアのような切れで泳ぐことが求められます。
<決勝>
出だしのリフトまではスピードも勢いも切れもありました。リフトも良かったです。
そこから少しずつ、技一つ一つの切れやスピード感が感じ取れにくくなってきて、演じ方として「刺激が少ない」と感じてしまいました。
決勝の順番は12組のうちの8番めで、後ろに強豪が控える順番でした。
この順番であれば、ジャッジたちの眼を覚ますような刺激が必要でしたが、それがスピード感や切れがなかったため、この得点になってしまったと思われます。
二人ともきれいな選手です。身長はさほどないけれど、手足の長さなど世界に通じるものもっている二人です。ただそれをどう、仕上げていくかはコーチ次第だと思いました。
それはロマーシナやイシェンコをみて確信したことです。
7位 ウクライナ:
ダリア・ユシコ(24歳)
クセーニア・シドレンコ(23歳)
大柄な選手なので、脚を上げたときにスケール感を感じる。
構成として難易度も高い。
しかし、動きのスピード感がないため、一瞬映像になる「止まり」がない。したがって、全体的に甘い感じがする。
8位 フランス:
アポリーヌ・ドレフュス(22歳)
リラ・メスマンバキール(22歳)
オリンピックと同じ内容で、構成はとても面白いですね。
今日は同調性の部分で乱れがあったので、とても惜しかったです。
この二人の特徴は、身長差があるが、水に入るとそれをあまり感じさせないことで、
背の低いほうの選手の運動能力の高さを感じます。
9位 ギリシャ:
デスポアナ・ソロム(18歳)
ナタリア・アントプル(19歳)
水着がおしゃれ。色の前と後ろの色の使い方のバランスがおしゃれ。
構成では面白いところがたくさんあるが、演じ方にスピード感が感じられないので、弱い印象になってしまいました。
10位 イギリス:
ジェンナ・ランダル(20歳)
オリヴィア・アリソン(19歳)
よく練習をつんできたなと言う印象を与えられる演じ方だった。
丁寧に演じ、よくあわそうとしていました。
しかし、まだ動きにきれがなかったり、正確な技術が保てていないですが、この1年、試合ごとにスコアーを着実に上げてきています。
11位 ブラジル:
ナヤラ・フィゲイラ(21歳)
ララ・テイシェイラ(21歳)
全体的に良くあわせていたし、よく泳ぎこなしていました。
彼女たちのいいところは曲ののりかたが、体の芯からのれていると言うことでしょう。
12位 北朝鮮:
キム・ヨンミ(19歳)
ワン・オッキョン(19歳)
最初のリフトの高さには驚きました。一人で身体全部をあげるという高さは賞賛に値します。
とても泳ぎこなしているし、技にもスピードがあるし、彼女たちのレベルで非常にいい出来だと思います。
ただ、あの選曲は何とかして欲しいですね。
一つ上の段階に行くためには、曲が世界に流れに乗っているかどうかが重要になります。
13位 チェコ:
ソナ・フィゲイラ(33歳)
アルシュベタ・ドゥフコバ
決勝にのこるかどうかのぎりぎりのラインでは、とてもよくあわせてきました。
1ラップめの最初の立ち泳ぎになったときに、ボディーラインのクリアーさが印象に残りました。ただやっぱりスケール感には欠けいました。 |

表彰式 |
<宮嶋 泰子>
デュエット・フリーの結果はこちらからご覧ください。↓
世界水泳・公式結果掲載サイトです。
選手は自分が今何位にいるかとても知りたいものです。
採点競技では全員が競技を終了するまで何位になったかわからないので、その結果をコーチがいつ伝えるかはとても大切になってきます。
予選は7月23日の夕方に行われ、その後、組み合わせ抽選などがありました。
24日の決勝の朝、乾さんと酒井さんは、自分たちの順位が6位であることをコーチから知らされました。
「正直驚きました」
11歳のときからその才能を見出されて、英才教育を受けてきた乾さんは常々「世界一になりたい」と言ってきました。もちろんこの試合でもメダルを目指して練習をしてきました。
過去、日本のデュエットは2位、3位が定位置でした。しかし、日本ブランドが凋落の一途をたどり、今回新人が出てきたとあって、評価は二人にとっては厳しいものでした。
シンクロは演技のできもさることながら、その国が持つブランドイメージがとても物を言う競技だと、これまで25年間取材をしながら思ってきました。
そのブランド力がなくなってしまった今、18歳デュエットは「いばらの道」を歩んでいかなくてはならないでしょう。
落ちるときはガラガラと一気に落ちていきます。
一方、登るのは至難の業です。
成績が悪いと選手たちのモチベーションも下がってしまうかもしれません。
日本の振るわぬ結果を受けて、シンクロをやめたいと思うかもしれません。
ただ、今回立花さんが分析してくださったように、カナダもイタリアもまだまだ隙があります。日本がパーフェクトな演技を続けていけば、一つ一つ階段を上がっていくことは可能です。
しかし、しっかりとした指導者さえつけて、基本からやり直せば、絶対に日本は復活できると信じています。
才能ある若い選手たちの時間を無駄に使わないために、次の対策が早く取られる必要がありそうです。
いよいよ、世界水泳ローマはチーム演技が最後です。 |
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世界水泳ローマ2009公式HPはこちら >> |