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  reported by
宮嶋泰子

心に残る選手 その3
立花美哉と武田美保(日本・デュエット)

 

1984年のロサンゼルス五輪からメダルを取り続けているシンクロナイズドスイミングですが、この中で世界一に輝いたのは、立花美哉と武田美保の二人しかいません。2001年の福岡で行われた世界水泳、ここで、パントマイムの演技で会場をわかせ、日本のシンクロ界に初の金メダルをもたらしたあのシーンを覚えていらっしゃる方も多いと思います。

 

二人は選手としてまったく違うタイプです。脚が反っていて細く、体も柔らかな立花選手。一方武田選手の脚はまっすぐで、体は硬く、シンクロ関係者が言うところの「四角い脚」です。四角い脚というのは、太ももが前後左右同じような太さでしっかりとしているということです。立花さんの柔らかな脚はカチッとした線を見せにくいのですが、武田さんの四角い脚が横にあると、補いあって二人の動きがクリアーに見えてくるのです。また、柔軟性に乏しい武田さんですが、横で立花さんがダイナミックな開脚をすると、それに助けられてしまうのです。脚の形が正反対な二人であるがゆえに、お互いの良いところが相手の欠点をカバーし、よりよい結果が得られるようになった訳です。


それにしても、「この脚の全く違う二人を合わせるのは至難の業だった。どうすれば同調しているように見えるか、角度まで計算して振り付けを考えた」と、後に井村コーチが言っていました。脚だけでなく、性格も正反対だった二人は、お互いに馴れ合うことなく常にライバルとして切磋琢磨しあっていました。アテネ五輪後に引退して、立花さんは今、井村雅代さんについてコーチ修行に明け暮れています。一方の武田さんは今年の夏は衆議院選挙に立候補する夫を支える妻として東奔西走の日々です。人生いろいろ、楽しみです。



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心に残る選手 その4
ヴィルジニー・デデュー(フランス・ソロ)


「シンクロナイズドスイミングには興味がないけれど、デデューは別だね」という男性によく会いました。あるときは「女神」、あるときは「娼婦」、さらには「少女」。女性が持つあらゆる表情を水の舞台で演じきることのできた女優でした。


中でも私が忘れることのできない演技が2003年世界水泳バルセロナで見せてくれた「カミーユ・クローデルの生涯」です。彫刻家ロダンの愛人であり、自らもすばらしい才能を開花させていた彫刻家カミーユ・クローデルが狂気の世界に入っていく様を演じていくものです。シンクロは水の中で行う身体表現ですが、そこに人間の心の内面を表す表現を加味していくことは容易ではありません。しかし彼女は、普通では予想もできないダイナミックなアクションや振り付けで心の葛藤や、喜びを表現していきます。


パリにあるフランス国立スポーツセンターでデデューの練習を取材したことがありますが、そのときに彼女がやっていたローイングマシーン系のトレーニングは圧巻でした。金髪を振り乱し、あの白い肌が真っ赤になり、呼吸も5メートル先にいても聞こえるほど荒くなっていきます。自分の中にある限界を少しでも広げようとトレーニングを続けるデデューの姿は圧巻でした。これまで数多くのシンクロ選手を取材してきましたが、あれほど追い込んだ練習をする選手を見たことがありません。あれだけのトレーニングに裏打ちされた体力と技術があって初めてあの見事な表現ができるものなのだと納得させられたのを覚えています。水面で美しい白鳥も水面下では激しく水をかいているのですね。


それにしても、普段は恥ずかしがり屋さんで、小さな声でぼそぼそっと話すチャーミングな女性のデデューが、2007年の世界水泳メルボルンで復活して再び優勝を手にしたあと、大胆にも会場を横切って一人走って彼の胸に飛び込んでいった姿が忘れられません。いつもそのときの自分の気持ちに素直な女性、ヴィルジニー・デデュー。私にとって生涯忘れることのできないスーパースターです。


この続きは次回、
「宮嶋泰子・シンクロ取材暦25年。心に残る6選手は… vol.3」で!

 

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