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  reported by
宮嶋泰子

世界水泳ローマ二日目、チームのテクニカル・ルーティン決勝が行われました。
ローマは今日も快晴、日差しが強く、じりじりと言う言葉はこういう時に使うのだなあと1人納得しています。


さて、皆さんにお伝えするのも気が重いのですが、伝えることはきちんと伝えなくてはならないと自分に言い聞かせながらこの文章を書いています。


この世界水泳ローマ大会は日本のシンクロの歴史にとって大きなターニングポイントになることが二日目にしてはっきりしてきました。
オリンピックと世界水泳でメダルを取り続けてきた栄光の歴史にピリオドが打たれ、ずるずると泥沼にはまっていく、そんな大会になりそうな気配なのです。
北京五輪のときからその兆候はあったとはいえ、世界水泳ローマ大会二日目にして、ちょっと嫌なムードです。


シンクロ会場の前で立花さんと原田さん

実際、競技が終わって控え室に戻ってくると、放送席解説を担当してくださる北京五輪銅メダリストの原田早穂さんと2001年世界水泳福岡大会で世界チャンピオンになった立花美哉さんの二人は沈痛な表情です。

このままでは次のロンドン五輪への出場すら危うくなりそうな気配なのです。
一体何がおこって、どうなっているのか、立花さんに各国情報から分析していただきましょう。






元世界チャンピオン立花美哉の眼 その3 
7月19日「チーム・テクニカル決勝」


立花美哉さん  

総評:
勢いに乗っている国が眼で見て明らかにわかりました。
選手自身にも、勝ちたいと言う気持ちが全身にあふれているのが感じ取れるのです。
たとえば、カナダ。北京五輪と同じ演目を出している国がいくつかありますが、その中でもカナダは北京五輪よりもよかったです。
最初の脚が出たときにそれはすぐわかりました。
選手だけでなく、コーチも含め、チーム全員のパワーとして伝わってくるものでした。


そして、今日の試合のあとに、表彰式の様子を眼に焼きつけ、日本が表彰台に載っていない悔しさを心に焼き付けました。


★ 米国


米国選手の表情は抜群ですが…

残念ながら一度もピシッと会うところがなかった。誰かがふらふらしていたり、タイミングをずらしていました。
それが結果のスコアーに現れています。
ピリッとするところが全くありませんでした。
構成の問題ではなく、演じ方の問題。
一時期黄金時代を築いたあの米国が決勝で前半6チームに入ってしまうのは残念のひとこと。


クラブと大学のシステムが連結しておらず、選手が育たないのが大きな原因と聞いています。



★ ロシア

 
10代が多いロシアチーム               ミスを最小限に抑えるロシア

メンバーが8人中7人新しくなったことから、こまかな同調性の乱れが北京五輪の時に比べるとありますが、それを補うものを彼女たちは持っています。
たとえばスピード感とプールの使い方。
推進力が速い分、プール領域を存分に使っているので、常に見ているものの眼を動かすことができるのです。


最後に、点数を出させるポイントとなる最後のフィギュアはピシッと決めていて、それまでの乱れを忘れさせるほど見事でした。



★ 中国 

 
     中国の脚                     リフトは双子で決めました  

その他のチームと比べて、彼女たちが持っている特長は「すっきりとした演技」。
逆に言うと、イタリアがもっているようなプールからあふれるようなパワー、暑苦しさは全くありません。
演技は全般的に予選よりもまとまりがありました。



★ イタリア


イタリア

中国の次に出てきたこともあり、対比して見てしまいましたが、ものすごくエネルギッシュ。
後半までその爆発力は衰えませんでした。
プールが小さく感じてしまったほど、よい意味で暑苦しい演技だった。
観客の声援に飲まれることなく、それに答えていたエネルギッシュな演技。


要求される要素をどれだけこなしたかを採点されるエクスキューションが日本よりよかったということは、構成が良いものになりさえすれば、さらに上位に入っていくことが可能です。
芸術面ではまだまだ成長の可能性があるので、日本にとってもなあどれない相手となるでしょう。



★ 日本

 

リフトのタイミングがちょっとずれてしまいました

振り付けでは魅力的な部分もあります。曲のとり方でも興味深いところがあります。
にもかかわらず、列の並びが甘かったり、同調性が崩れていたりするので、全体がすっきりとした印象のものに見えませんでした。
簡単に言うと、静止画のようにきれいに印象に残って見えるパートが欲しかったということです。
エクスキューションで、二人の審判が、先に出たイタリアよりも低い得点を出してきました。
その原因はそのあたりにあるのではないでしょうか。


日本の技術は長い間、世界から大変高い評価を得てきていました。
箱に詰め込んだように演技は小さいけれど、ルールブックに忠実であり、指先の最後が水の中に消えるまで合わせるような繊細な同調性が高く世界で評価されてきました。
しかし、それらの日本が長い間培ってきた技術面の素晴らしさが、残念ながら今回は見られませんでした。



★ スペイン


スペインの脚

今日は正直、かなり乱れていた。出来としては予選のほうがよかったのではないでしょうか。
ただ、後半になって持ち直し、脚の力強さを感じるものでした。



★ カナダ

 
マッチョポーズをとるカナダのリフト         力強いカナダのカデンスアクション

北京オリンピックと同じ演目で出てきている中で、カナダは唯一オリンピックのときよりよい出来でした。出だしのカデンスアクションでの早い動きは「カナダの選手でもこんなにできるんだ」と驚くほど見事な出来だった。
スピード感や勢いを感じる理由は、水面に当たるときの動作が最後まで力を抜かずにいることが原因ではないかと思います。
力を最後まで抜いていないので、強く水面に当たるのです。
後半のエレメンツでは同調性に関して乱れが感じられました、今回出場したチームの中ではもっとも気迫を感じる出来でした。






<宮嶋 泰子>
立花さんはクールに分析してくださいましたが、シンクロファンの私としては心中穏やかではありません。


まずはじっくり結果をごらんください。


ジャッジ構成
EX: 1.RUS  2.DOM  3.FRA  4.KOR  5.GBR
OI:  1.CAN  2.SUI  3.CZE  4.KAZ  5.ITA


結果
1位 ロシア
EX: 9.9 9.8 9.9 9.9 9.9
OI: 9.9 9.8 9.9 9.9 9.9


2位 スペイン
EX: 9.7 9.9 9.8 9.8 9.7
OI: 9.8 9.9 9.8 9.8 9.8


3位 中国
EX: 9.6 9.6 9.7 9.7 9.6
OI: 9.8 9.7 9.7 9.7 9.7


4位 カナダ
EX: 9.5 9.7 9.6 9.6 9.5
OI: 9.7 9.5 9.7 9.6 9.5


5位 日本
EX: 9.4 9.6 9.4 9.5 9.3
OI: 9.6 9.6 9.6 9.5 9.6


6位 イタリア
EX: 9.3 9.5 9.5 9.4 9.5
OI: 9.5 9.3 9.5 9.4 9.6


7位 米国
EX: 9.3 9.4 9.3 9.3 9.2
OI: 9.4 9.4 9.5 9.2 9.3


8位 ウクライナ
9位 フランス
10位 北朝鮮
11位 ブラジル
12位 オランダ



何より今回ショックだったのは、これまで格下と思われてきたイタリアにエクスキューションの合計点で、予選でも決勝でも負けてしまったことです。


これまで技術の日本を標榜してきたのに、一体これはどうしたということでしょうか。
シンクロをこれまで応援してきたものとしても残念でなりません。


このまま行くと、2012年のロンドン五輪への出場も危ぶまれます。
オリンピックに出場できるチームは8カ国です。
まず5つの大陸の代表が一カ国選ばれます。
欧州からは地元英国、アジアからは中国、アメリカ大陸からはカナダ、そしてオセアニアからは豪州、アフリカからはエジプトが予想されます。


残り3つの枠を、その他の国で争うのです。
ロシア、スペイン、米国、イタリア、ギリシャ、そして日本などが競い合います。
米国もやるときはやってきます。
今回エクスキューションで日本が負けてしまったイタリアなどは、魅力的な構成をしてくればあっという間に日本を追い抜いてしまうでしょう。


ああ…考えただけで恐ろしい。
五輪と世界水泳でメダルを取り続けてきた国、日本が、ロンドンオリンピックに出場できないない可能性も出てきたのです。
何とか手を打たなければいけないことだけは確かです。


2009年世界水泳ローマ大会が日本シンクロ転落への序章となってしまわないことだけを祈っています。
踏ん張って欲しい!
新生マーメイドジャパン!


世界水泳ローマ2009公式HPはこちら >>
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