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ベトナム編 撮影日記

少数民族が行き交うバックハーの日曜市
旅の終わり
ハノイから北へと列車の旅を続ける。中国との国境の街ラオカイへは寝台車。北部はベトナム最高峰を擁する山岳地帯で、外国人観光客に人気が高い。ここまで味わうことのなかった、高原の光と空気が新鮮で心地よい。周辺ではモン族(生活圏は中越国境を跨いでおり中国側ではミャオ族と呼ばれる)など少数民族の人々の姿も大勢見ることができた。独特の民族衣装は魅力的だし、急斜面に拓かれた棚田は美しく、郷愁を誘う。
でも、少数民族の暮らしぶりは大変そう。旅行者は車やバイクで移動するのだが、モン族たちの多くは遠い道のりを徒歩で行き来しているようだ。山道の脇で親子が休憩している姿など、微笑ましく、痛々しい。観光地では、土産物を売ろうと外国人観光客にまとわりつく光景も見かけるが(これはベトナムの他の観光地でも経験したけど)、その土産物は自分たちが作っているものとは限らず、中国の工場で大量生産されているものもあるという。元締めに体よく使われてしまっているのか。中国もベトナムも目覚ましい経済発展を続けているけど、山奥で自給自足のような生活を営む人々に、その恩恵は少ないのだろう。伝統的な生活を捨てて、街に出て働くしかなくなっていくとしたら残念なことだ。
ベトナムの旅、最後はハイフォンの街を経由して、ハロン湾。生憎の小雨と霧だが、これも雰囲気があって悪くない。白い世界の中から、石灰岩の断崖が浮び上がり、重なり合って、消えていく。水面は、すべるように滑らかでとても海だとは思えない。南のホーチミンから、首都ハノイを経て北のラオカイまで。鉄道の旅は、ベトナムの人々の自信や希望、国土の持つ様々な魅力や自然の恵み、この国の歴史や文化について、多くのことを教えてくれた。撮影を支えてくれたスタッフに感謝。名残惜しい。Xin chào!
ディレクター 中村博郎
ラオカイ近郊の棚田
霧がかったハロン湾