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ベトナム編 撮影日記

ホン川に架かるロンビエン橋を渡る列車
ハノイ
南北線の旅の終点、ハノイの空はどんよりと曇り、今にも雨が降り出しそうだ。人々は、まるで東京の冬を思わせる厚着姿。そういえばハノイはかつて東京(読み方はトンキン)と呼ばれていた時代があったということを何となく思い出す。
ベトナムの首都、そして第二の都市であるハノイの発展には、北に接する大国・中国の影響が大きかったという。中国の地図を見ると今の雲南省から海に出るルートは、ホン川を使ってハノイを通って行くのが最短。是非押さえておきたい場所だと分る。交易の中継地としてハノイは重要な拠点となっていった。
ベトナムにとって中国とは、漢の時代から唐が滅亡した頃まで1000年以上に渡って支配されていたというただならぬ関係。最近でも1979年に中国軍が侵攻している。言い換えれば、ベトナムにおける中国の影響は大きい。例えば言葉。今はローマ字表記だが、1950年代頃までは漢字も普通に使われていたという。ハノイにある文廟は孔子を祀ったものだが、これは宋の影響によるもの。さらにフエにあるグエン朝の王宮は、北京にある紫禁城を模して建造されたという具合に。
とは言いつつ、中国の漢字をそのまま使うばかりではなく、必要に応じて新しい漢字を創作したりもしているところは、日本とも共通していて興味深い。便利なところだけいただいてしまう、したたかな精神を感じる。現在のベトナム語表記だって、フランス人が考えたものが元となっているのだが、憎い植民地支配者のものでも便利なものは貰ってしまう。実用性重視。
ディレクター 中村博郎
ハノイへと向かう乗客
到着したハノイ駅