世界の車窓から

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チュニジア~地中海と歴史都市をめぐる旅~ 撮影日記

オリーブ畑、塩湖、その先に地中海
男達のカフェ文化
いよいよ、チュニジアの旅も後半へ。地中海に沿って南下する縦断ルートを走る。古くから沿岸部には港が整備され、地中海交易や軍事拠点として都市が繁栄してきた。そんな歴史都市をたどりながら、最南端の鉄道駅ガベスを目指す。
チュニスを出てなだらかな山々を過ぎると、車窓には枯草が目立ちはじめ、乾燥した土地へと変化していく。海岸に近づくと、この地特有の塩原“サブカ”や、塩湖が多く見えてくる。中部を代表する都市スースがあるサヘル地方は、オリーブの主産地。地図を片手に、線路が海岸に近づく度に、オリーブ畑の隙間から見える地中海を車窓に捉えようと、粘り強く撮影した。
古都スースをはじめ、チュニジアの街の多くは、アラブ時代に形づくられた“メディナ”と呼ばれる旧市街と、その後に開発された新市街に区分される。メディナは、モスクなど貴重な歴史的建造物があり見所満載だが、一番の魅力は積み重なる時代の混在具合だ。中世の城壁にへばりついて活気づくのは、ネオンきらめく衣料品店や携帯電話ショップ。その新旧のコントラストが心地いい。まるで生きた歴史遺産だ。
そして、チュニジアのどの街でもよく見かける不思議な光景が、男だらけのカフェだ。これは、アラブの国独特の喫茶文化で、“カフワ”と呼ばれるカフェは、単にコーヒーやお茶を飲むだけの店ではない。地元の人と話したり、ぼーっと佇んでいたり、特に用がなくても、カフェに集う。水煙草(シーシャ)もあるので、ちょっと煙をくゆらせながらくつろいだりもできる。
もともとカフワは男性の社交場で、情報交換や商談をする場として、文化的に重要な役割を担ってきた。最近チュニスなどの都会では、女性も入れる店が増えてきているという。伝統的には、トルココーヒーに似たアラブ式コーヒーを飲むそうだが、近頃はエスプレッソを注文する客が圧倒的に多いのだとか。早朝、撮影の合間と、撮影隊も事あるごとにエスプレッソでリフレッシュするのが習慣になっていた。
ディレクター 太田 健亮
世界遺産スースのメディナ
昼夜、カフワにたむろする男性たち