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チュニジア~地中海と歴史都市をめぐる旅~ 撮影日記

チュニス湖を突っ切る近郊列車TGM
カルタゴ遺跡、ときどき猫
チュニス近郊を走る電車TGM。全部で18駅、終点まで1時間ほどの短い区間だが、チュニジアの一大観光地、世界遺産のカルタゴ遺跡や青と白に統一された美しい街、シディ・ブ・サイドを巡るにはもってこいの路線だ。
朝9時過ぎの列車に乗車し撮影開始。観光客も多いだろうと思っていたが、オフシーズンなのもあって、ほとんどが地元の人。新聞をひろげる男性、眠そうにスマホをながめる若者、朝のなんともいえない気だるい空気は、異国にいながら親近感がわく。カメラは自然と、通学途中の華やかな女子大生や、友人と談笑する老人たちに向いていく。こうした何気ない日常に触れることができるのも、鉄道の旅の醍醐味だろう。
チュニス湖を爽快に走り抜けた後、列車は出発から30分ほどでカルタゴに到着。カルタージュ(仏語でカルタゴのこと)と名前がつく駅が6つ続くので分かりやすい。かの名将の名を冠した、カルタージュ・ハンニバル駅で降りる予定が、駅が工事中で停車しないことが当日分かり、顔見知りになった女子大生につられるように手前で下車。カルタゴ周辺は、大統領官邸もある高級住宅街で、家々の間に古代のカルタゴ遺跡群が点在している。中でも楽しみにしていたのが、ローマ帝国の植民都市時代につくられた「アントニヌスの共同浴場」、 “テルマエ”だ。紺碧の地中海をバックに建つ広大な遺跡は壮観。2世紀によくこんな建築物を…と大きさに圧倒されながら撮影していたところ、実はそこは地下部分。天井のように見えていたのが1階の床にあたると知り、そのスケール感に2度驚いた。後で調べたところ、1階に38、地下に25、その他に13、合計76の部屋があったという。
カルタゴの撮影を終え、シディ・ブ・サイドまで乗車。チュニジアンブルーがひと際目をひく駅のホームに期待が高まる。あと、これは個人的な楽しみだが、チュニジアは猫天国だ。街中だけでなく、妙に猫たちが駅に馴染んでいて画になる。
どんどんチュニジアのファンになっていく自分がいた。
ディレクター 太田 健亮
地中海に臨むシディ・ブ・サイド
広大なアントニヌスの共同浴場