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春の台湾 潮風・新緑・恋の香りを辿る旅編 撮影日記

台東から花蓮へは原住民族の名を冠するプユマ号で向かった
原住民料理と出会った花蓮の夜
台湾一周の旅、列車はいよいよ太平洋に面する台湾東側に入った。
台中や高雄といった都市の風景が続いた西側とは違い、険しい山々が海沿いまで迫り、手つかずの自然や山間に湧き出る温泉、どこか懐かしさを感じさせる田園風景が延々と広がる。
そんな台湾東側のちょうど真ん中に位置するのが、花蓮。およそ10万の人々が暮らす、海と山に囲まれた自然豊かな都市だ。今年2月に大きな地震に見舞われ被害が心配された地域だが、街は少しずつ元の活気を取り戻しているという。この地域には美しい自然の他に、魅力的なものがある。それは「台湾原住民族文化」。花蓮周辺は、古くからこの島に住んでいる少数民族が多いことで知られている。台湾ではこの少数民族は公式に「原住民族」と呼ばれ、現在、政府が16の民族を「原住民族」として認定している。そのうち花蓮周辺には、最大の人口を誇るアミ族ほか、5つの少数民族が暮らしているのである。
花蓮の街を歩いていると、原住民料理の店をよく見かけた。撮影に向かった東大門夜市には、原住民料理の屋台が何十店舗も集まった区画があり、様々な料理を一気に楽しむことができる。この原住民料理が本当に美味しかった。味付けや使う食材が少しずつ違うため、飽きることがなく、その素朴な味わいが体に染み渡ったのである。
特に撮影隊の心をグッと鷲づかみしたのは、タロコ族という花蓮県北部に住む民族の料理だった。山菜を使った炒め物がメインで、味つけは塩などのシンプルなものだが、素材のうまみが凝縮され抜群に美味しかった。特に食材が凄かった。卓球の球ほどの大きさのカボチャや細長いタケノコ、タロコ族ではよく食べられているという貴重な山菜をふんだんに使用しているのである。山菜の独特な食感が本当に味わい深く、まさにここ花蓮でしか味わえない土地の味覚といった感じ。店の中には、タロコ族の観光客もいて、いつしか我々と一緒に宴会となった。タロコ族の皆さんは凄くフレンドリーで、「次はいつ来る?今度はもっと美味しい料理を振舞うよ」といってくれた。
僕にとっては花蓮という街は、様々な文化と人々の優しさが混ざり合った本当に魅力的で素敵な街だった。
※今回番組では、台湾の先住民族について、現地の公式な呼称として使用されている「原住民族」と紹介しています。
ディレクター 小野田治矢
山菜をふんだんに使った炒め物
花蓮の屋台で出会った人々