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オーストリア編 撮影日記

山並み迫るザルツブルク中央駅
山の国 音楽の街
旅の序盤はウィーンから工業都市リンツを経てオーストリア中央部のザルツブルクへ進んでいく。アルプスが国土の3分の2を占めるオーストリアだが、この区間は平らな農地が続き山岳国ということを感じさせない車窓が続いた。しかし、ザルツブルク中央駅に降りたってみるとそんな思いは吹き飛んでしまった。ドイツとの国境、南の方角に雪を冠した山が迫っている。列車と駅と山という構図に、この旅で初めてオーストリアに来たんだなと実感した。
モーツァルトが生まれた音楽の街として有名なザルツブルク。映画『サウンド・オブ・ミュージック』の舞台としても知られ、主人公と子どもたちがドレミの歌を歌いながら飛び回っていた街は、ちょっとしたストリートミュージシャンも絵になる。映画のカットを意識したものを織り交ぜたりして、実景の撮影は順調に進んだ。
しかし実はザルツブルクには不安な取材先があった。それはモーツァルテウム大学。モーツァルトの死後50年を記念して1841年に創設された音楽大学で、指揮者のカラヤン(ザルツブルク出身)など著名な卒業生も多く輩出している。取材許可が下りた時は、偉大な音楽家と関連ある施設を取材し、且つこれから有名になるかもしれない学生の演奏を聴けると思うと胸が高鳴っていたのだが、訪れたのは9月上旬。あいにく夏休み中で学生はいないという。何が撮影できるか分からないが、それでも熱心に練習をしている学生がいるかもしれないと向かった。
前回の日記でも一期一会の出会いが大切と書いたが、ここでもいい出会いに恵まれた。大学の教授が指揮者を務める市民オーケストラが偶然ホールで練習をしていて、担当者が交渉してくれたおかげで、演奏の様子を撮影できることになったのだ。真剣な表情で楽器を奏でる楽団員を間近に見て、音楽が根ざしている街ザルツブルクを少し感じることができた。次は、いつか夏に再訪してザルツブルグ音楽祭を体験したい。
ディレクター 小林祥大
モーツァルトの生家
モーツァルテウム大学で出会った市民オーケストラ