世界の車窓から

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オーストリア編 撮影日記

列車は山と湖の風景の中へ
オーストリアの魅力について
最初に乗った列車にイギリス人がいた。25年間毎年オーストリアを夫婦で訪れているという。オーストリアの魅力をきいてみると山の景色と、温厚な人々だと答えてくれた。
撮影6日目。オーストリア有数の景勝地ザルツカンマーグート地方を走るローカル列車に乗り込むと、ウィーン~ザルツブルク間の農地風景とは車窓が大きく変貌する。湖が視界に飛び込んできたと思えば2000メートル級の山肌が迫り、川に沿って走っていたかと思えば四方を山に囲まれた風景に変化する。窓を全開にして(初めて窓が開く列車だった)風を受けながら夢中でシャッターを切った。これぞオーストリアの列車旅の醍醐味だと思った。
さらに、今回の旅のハイライトの一つ、シャーフベルク登山鉄道の車窓も想像していた以上に素晴らしかった。頂上からは真っ青の湖が地上に見え、遠く地平線を見ればアルプスの稜線が何重にも続く。こういった美しい山と湖を見せつけられ、イギリス人観光客にも共感できた。
もう一つの魅力であるオーストリアの人々。
これは初日から私も感じていた。これまで列車の中での撮影を断られたことはなかったし、撮影隊に嫌な顔をするお客さんはいなかった。駅の警備員は我々に気付くと5秒でやってきては説明を求めた。そんな彼らも撮影許可証とコーディネーターの笑顔につられ次第に頬をゆるめ、カメラに手を振ってくれる人もいた。
極めつけはバート・イシュルでの出来事。撮影中に偶然通りかかったスタジアムでサッカーの試合が行われていた。アマチュアのリーグだったが、ホームチームのバート・イシュルSVの代表者に撮影をお願いすると快諾してくれた。さらに、試合中にもかかわらず「日本からはるばる取材がきて我々のクラブを応援してくれます!」と場内アナウンスが入り、会場は盛り上がりをみせた。我々が一気に公認の存在になりその後の撮影がスムーズにいったのは言うまでもない。オーストリア人のおおらかさに感謝した瞬間だった。
ディレクター 小林祥大
シャーフベルク登山鉄道の車窓
サッカー場の観客も歓迎してくれた