スペイン・ポルトガル 〜初夏のイベリア半島横断の旅〜 撮影日記

- ポルトガル国鉄の列車
- ポルトガル国鉄の撮影
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旅の行き先がスペインとポルトガルに決まったとき、はたして二つの国でどのくらい風景や人が変わるのか想像がつかなかった。同じイベリア半島の隣り合った国同士、映像でわかる程の差があるのか、その違いを大事にしたいと思い撮影を始めた。いざポルトガルに入ると、違いがはっきりとわかった。車窓は圧倒的に緑が増え、野菜畑や水田が広がる。建物は黄色や水色の優しいパステルカラーでとてもカラフルだ。湿度が高くなったせいか、空気の感触も柔らかく、乾いたスペインとは全く違う。そして、ポルトガルの人たちは少しシャイで笑顔も控えめ。撮影をお願いすると快くOKしてくれるところは、スペインの人たちと同じだ。
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乗車するポルトガル国鉄では、残念ながらストが始まった。列車の運行について駅に問い合わせると、「発車時刻までに運転手が出勤すれば運行します。」という大雑把な回答。これが普通らしいが、列車を利用するポルトガルの人たちはどう対応しているのか、とても不思議だ。
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列車の走行シーンの撮影では、通過時刻前に撮影ポイントに先回りして待っているのだが、列車が来るかわからず、とても苦労した。日本のように運行状況がリアルタイムでわかるシステムは無いうえ、遅れることも多いのでいつまで待てば良いかわからないのだ。時刻を過ぎ、もう来ないだろうと片付け始めたら列車が来てしまい、撮り逃がすこともあった。しかし、この状況を救ってくれたのは人の優しさだった。運行情報を聞くため駅に通ううちに、駅員さんと仲良くなり、情報を電話で知らせてもらえるようになったのだ。これにはとても助かった。
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ちなみに、撮影隊の一人が貴重品の入った鞄を撮影場所の線路脇に置き忘れたのだが、そっくりそのまま警察に届いたこともあった。散歩中の地元の人が届けてくれたそうなのだが、ポルトガルの人たちの優しさには驚くばかりだ。感謝の念を抱きつつ、この先の撮影もなんとかなりそうな気持ちが湧いてきた。
- ディレクター 中村有里沙

- 田園風景の車窓

- 見送ってくれた駅員さん